その2 カエル。
気がつくと、窓からは朝日が差し込み、静かに朝の訪れを告げていた。
真は、昨日の学校帰りからの記憶を全く失っていた。どうやら、昨日玄関で倒れたきり、今やっと目を覚ましたところなのであろう。
そこまで考えて、彼の頭に、ふと両親に心配をかけていないかという不安がよぎった。真が両親の様子を見に行こうとしたその時、突然、真の部屋の扉が開き、ミカエルが部屋に入ってくる。そして彼は、
「おはよう、マコちゃん♥」
と、真に声をかけた。真は顔を真っ赤にして、
「マコちゃんって言うな!というか、なぜここに…」
と反論する。ミカエルは、
「あら、魔法少女モノでは普通、マスコットキャラは主人公のそばにいるじゃない。」
と答えた。真はまた、
「じゃぁこれからずっとそばにいるっていうの!?」
と、驚きの声を上げた。それに対してミカエルはこう答える。
「そうよ、ずっとそ・ば・に…♥」
真はまた、倒れそうになる。ミカエルは慌てて真の身体を支えた。真がそれに気づくと、ものすごい勢いでミカエルから離れる。
そこでふと、先ほどの不安が頭に蘇った。
「そういえば、ボクのお父さんとお母さんはどうしたの?」
真が尋ねる。ミカエルは、
「ダイジョウブよ、アタシはこの姿の時は普通の人間には見えないし、ご両親の記憶はちゃんと消すわ。」
と答えた。真は更に、
「この姿…ってことは、他の姿があるってこと?」
と尋ねた。するとミカエルは少しうつむいて、
「えぇ、まぁ…。あまりなりたくないんだけど…。」
と答えた。これ幸い、弱みを握るチャンスだと思った真は、更に彼に尋ねる。
「ねぇ、どんな姿になるの?」
するとミカエルは
「…カエル。」
と答えた。
ミカエルは話をつけ加ける。
「ミ『カエル』だから、カエル……。」
4月のある朝、このあたりの気象台の温度計には、なぜか氷点下が記録されていたそうである。