少女の行進
~4~「少女の行進」
学校説明会が始まるのを見届けて、視聴覚室から抜け出した。少し時間が押しているので小走りだった。
「チトセさん、次は1時間後の鉄研ですよ。ジオラマを動かしながらの解説に音楽あてるっていう」
俊介は完璧にスケジュールを知っていることを再確認できた。
「そう、あのジオラマと鉄道模型、スケールがデカすぎるよな。さすが裕太とアッちゃん」
山上裕太はクラスメイトで中2ながら中高あわせた中の副部長、アッちゃんは地学の厚本先生で鉄道研究部の顧問、どちらも筋金入りの鉄っちゃんだ。
「そうですね、でも、そうじゃなくてですね」
俊介の息が少し切れていた。北館の階段を上がり、2階に出てそのまま外通路に向かった。
「じゃあ、なんで急いでるんですか?チトセさん」
僕はバックステップになって俊介に人差し指を振りながら答えた。
「俊介、僕のスケジュールは分かっていても、文化祭のパンフレットの読み込みは甘いみたいだね」
そういって、パンフレットのあるページを開いた状態で、俊介にわたした。俊介はとりあえずそのページを眺めたら、アリーナと呼んでいる体育館の手前の階段でつんのめった。
「前見ないと、ダサいぞ」
「パンフ渡しておいてそれはないですよ」
俊介は、もうすべて分かった顔をしていた。
「健気ですね、チトセさん」
その一言に僕は心臓の上がちょっと熱くなったのが分かった。
「まあね。でも俊介に言われるのはむかつく」
そういってアリーナの扉を開けた。
アリーナのステージでは高校1年の先輩が登壇していた。生徒一人ひとりの日頃の研究を発表する「学芸発表会」だ。いろいろなエンターテイメントが揃っている文化祭の中で、実は「学芸発表会」ほどそれぞれのオタク魂を発揮できる祭典は他になく、まじめな硬いネーミングでありながら大人気イベントなのである。今まさに登壇している先輩が発表しているのは、「『ブラックホールは6次元の可能性がある』という説を私は5次元までは納得した」というものだった。熱く先輩は語るが、その殆どを誰も理解できないでいた。しかし、このいち高校生が本気出して熱弁をふるっている姿に聴衆は「こんなに好きなんだ」という納得を得るのが、この「学芸発表会」の正しい楽しみ方であるということを、在校生はもれなく知っていた。
「つまり、ブラックホールの深淵において、時間軸と空間軸はフリップするのです。まだわからないことも多く、これからさらに解明されていく天体に期待して、わたくしの発表を終わります。ご清聴ありがとうございます。」
最後まで何の話か分かりはしなかったが、一応の発表は終わったらしいことは分かったので、周りを確認するかのようにしてパラパラと起きた拍手のあと、大きな拍手に変わった。先輩は少し奥歯を噛んで首を傾げ、悔しそうな顔をしていたが、一つ息を吐いたら満足げで緊張から解放された笑顔になった。
「チトセさん、理解できました?」
ちょっと困った笑顔で、俊介が言った。
「分かるわけないよ。誰も理解できなかったと思うけど、それでも面白かった」
「ホントに言ってます?僕はもう、もやもやが溜まってムズムズしますよ」
「理解されない楽しさがあってもいいじゃないか。世の中のことなんて、ほとんど全員が理解できないことだらけなんだから」
納得いっていない顔を俊介はしていた。
「そんなこと、あります?そりゃ、そうなんでしょうけど」
「いいんだよ、熱をもって話す人を理解できなくても熱は理解できるし、ほんの一握り興味がくすぐられた人がいれば十分じゃないか」
実際、そんなふうに誰かの発表が次の誰かの発火点になる。
「昨年の〇〇先輩の発表を受けて、今年は私なりの研究発表をしてみたいと思っています」
そういって始まる研究発表は毎年2,3人はいるのだ。だから学芸発表会は個人の研究発表でありながら、僕らの学校のまさに文化であり続けているんだ。
「そうかもしれませんね・・・」
「すぐにわかるよ、学芸発表会ってどう楽しめばいいか」
「今年は勉強ですね。来年からは楽しみます」
僕は親指をたててエールを送った。
パンフレットの学芸発表会のページを開いた。そこにはこの3日間のプログラムとして発表者と研究タイトルが記載されている。
高校1年8組・葛城和真 「『ブラックホールは6次元の可能性がある』という説の理解」
中学2年5組・井坂文子 「カバは少女の思うことに気づいたか」
そう、次は文子が発表者だ。
「聞きに来るならこっそり来てね」
冗談っぽいけどおそらく本気でそう言っていたので、舞台袖で準備しているだろう文子には会いに行かないことにした。なるべく真ん中の人が密集して座っているところに座った。
「井坂先輩、カバなんて好きなんですか?意外です」
次の発表者を待つざわめきの中で俊介が囁いた。
「そうだね、意外だよ」
「え?チトセさん知らなかったんですか?」
「知らないよ、何を発表するかなんて。パワーポイントも一人で作ってたし」
「そうなんですか、てっきり共同作品かと思ってました」
「作品、ってなんだよ」
俊介が色々を含んでニヤついていた。
「文子が没頭できるものなんだから、文子にしかまとめられないよ。そういう発表会だから」
僕はまだ知らない文子のオタク魂が詰まった発表を通じて、また一つ文子が何を感じ取るのか真剣な読書をするつもりだった。
司会者の高校生がマイクのスイッチを入れたボンという音をきっかけに、ざわめきが徐々に静まっていった。その喧騒の残り香に小さなハウリングの音が混じり、さらにざわめきは静まった。僕と俊介は文子がすでにスタンバイしているであろう下手の奥をその暗がりの奥に見ようとした。
「お待たせいたしました。続いての発表者は中学2年5組の井坂文子さんです。発表テーマは『カバは少女の思うことにきづいたか』です。とてもユーモラスなタイトルとなっております。それでは、井坂さんどうぞステージへ。」
司会者は紹介を終えると、もう何人も送ってきたのと同じように神聖なものを送り出すかのような拍手をした。それに呼応して聴衆も儀礼ではない拍手を送った。鳴りやまぬうちに文子が下手からステージに現れた。何度か会釈をしながら聴衆の全体を見渡して、文子はステージ中央へ足を進めた。手にはマイクとスクリーンに映されるスライドを切り替えるスイッチだけで、どの生徒も持って出てくるはずの原稿は持っていなかった。
拍手が徐々におさまった頃を見定めて、文子はマイクのスイッチを入れた。
「2年5組・井坂文子です。今回このような舞台で私の超がつくほどの個人的見識を発表させていただければと思っています。私の筋道の甘さゆえに辻褄の合わないこともお気づきになるかもと、すでに諦めておりますが、よろしければお聞きいただければと思います。どうぞよろしくお願いします。」
ちいさな笑い声が聴衆から起こった。いつも通り過ぎるくらいにいつもの文子が、アリーナを内側から温めるような声で続けた。
「校外からお越しの方も多くいらっしゃいますので、ご紹介したほうが良いと思いますが、私たちの学校には毎朝の10分間読書が実施されております。そのせい、いえいえ失礼、そのおかげもあって、本を好んで読む生徒が他校よりも多いというのが特徴だと思います。」
頷く頭がいくつも視界の中にあった。この文化をある意味誇りにしている生徒が多くいるのが伝わってきた。
「私も、諸先輩がたには及ばず、といった程度ではありますが、いわゆる"本の虫"の端くれ、"本の蛹"をやっております。」
また少し笑いが起こった。
「井坂さん、こんな冗談みたいなこと言う人だったんですね」
俊介も笑いながら、でも驚きながら言った。
「文子の話し方はユーモアだらけだよ。でも、冗談で言ってはないかな。けっこう本気」
それを聞いた俊介は、はぁ?と首を傾げるが 「まぁ、そんな感じなのはわかる気がします」といって、ステージに向き直った。
「さて、本日いらした皆さん、一冊の本で人生の考え方が変わった、と言う経験はありますか?」
話が本題入ったのであろうことが皆に伝わった。文子の問いに自信を持って頷く"本の虫"の先輩がたくさんいた一方で、あったかなあ、と今までの読了本を思い返しているのであろう先輩たちもいた。"本の卵"にもなれていない僕は、文子の人生を変えた本の話が聞けるのかと、すこし姿勢が伸びた。それと、発表タイトルとの繋がりも気になっていた。
各々に、「俺は〇〇だな」「そうなの、俺は〇〇」と言う具合に、多分、本のタイトルなのであろうものが囁かれて、会場はガヤガヤとした。
「巌窟王!」
先輩の1人が叫んだ。
「レディージョーカー!」
「アンネ!」
何人かステージに向かって叫んでいる。
「星の王子様!」
野太い声の高校生が叫んで、会場がどっと湧いた。
「かわいいな!お前!」
ヤジも響いて、笑いがアリーナを包んだ。文子もステージで口を押さえて笑っている。その姿がまた、聴衆の心を和らげた。
「先輩方、盛り上げていただいてありがとうございます。そんな方々の前でこう言うことを言うのはちょっと勇気がいるのですが、、」
文子は手元のスイッチを押してスライドを進めた。
"本で私は変わらない"
明朝体で、ただその文字だけがスライドの中央に現れた。
「私の過去に出会った本が先輩方に比べてまだまだ少ないことは自覚していますが、私はどれだけ感動的な本でも、どれだけ驚く仕掛けの本でも、そうですね、どれだけ新しい価値観を見せてくれる本でも、それを発見し体感したとは思っても、それで私の毎日が変わったと思ったことがありません」
少し、アリーナが騒ついたが、文子はスライドを切り替えてからはまっすぐ前を向いて自信に満ちていた。文子は手元のスイッチを押して、スライドをもう一つ進めた。
「でも、私のような"本の蛹"が言うのは大変におこがましいことだとは承知の上ですが、つい最近、このように思うことがありました」
聴衆がそのスライドに、またただ一文、明朝体で書かれたそれを読み取ろうと静まった。それは俊介も同じだったし、僕もそうだった。
"私で本は変わる"
聞き手側が、文子の次の言葉を待っているのがひしひしと伝わってきて、それが怖いくらいだった。それでも、文子は微笑みを崩すことなく言葉とは裏腹に確信を持ったかおをしていた。
「本の虫の皆さん、本選びはどうやって決めていますか?」
ざわざわと声がまた混ざった。
「私の話にはなってしまいますが、」
「そういう時間だろ!」
良いヤジが飛んで、場が和んだ。
「そうでしたね。私、本を選ぶ基準が多分あるんだと思うんですが、自覚がないのです。でも、確かに私が選んできた本は私に合うものばかりでしたので、自らで私に合う本を選んでいるらしいのです。それは、ミステリーも恋愛も純文学も群像劇もSFも、開いてからジャンルが初めてわかるような状態な私ですが、どのジャンルの本でもそうなのです。この“基準”を私は同級生に本選びの相談をされたときに言葉にできず、ちょっと悔しい思いをしました。」
聴衆が和やかに聞く雰囲気から、すこし真剣みが増した気がした。台本の朗読ではないし、前もって練習してきた風でもない文子の息遣いや、言葉と言葉の間の取り方が、作られていない文子であることを聴衆が理解しているようだった。
「そこで、私はそれを“何となく”と呼ぶことにしました。違うな、その相談してくれた同級生が、私の“何となく”の意味を拾い上げてくれたんです」
聞いているすべての人が、納得しても理解しきれずにいた。しかし僕は文子の“何となく”がどういうものかを知っていた。そして、それが説明できないことも。
「私が、私の“何となく”で選んでいない本を今日は紹介してみたいと思います。この本はその同級生と書店に行ったときにボンヤリと彼の視線の中心にある気がした本です。本人にそうじゃないと言われてしまえばそれまでなのですが、でも、私はその同級生が“何となく”選んだ本なのだろうと感じました。誰かの“何となく”がここまで気になることはありませんでした。でも、気になったのです。私の大切な人だから」
そうして、文子はスクリーンに映ったスライドを次に進めた。そこにゆっくり、じんわりと一冊の書影が浮かんだ。
小川洋子 ミーナの行進
少しそんな気がしたけれど、いざその書影の写真が映ると僕のお腹の下から感情があふれるようだった。しかし、文子がどう紹介するのかの興味がそれを辛うじて押し下げた。
「私は以前から小川洋子さんの小説は偶然の賜物ですが、いくつも読んできました。閉じた世界に小さな自由を見つけて、その中で最大限の“遊び”や“宝”を作る、というのが著者の書く小説ではよくモチーフになっていると感じていました。」
ここでも、いくつかの聴衆の頭が頷いているように見えた。そこから文子は『ミーナの行進』のあらすじをビブリオバトルで話すように4分で語りつくした。そこには、文子がどう思ったというような主観的感想は排除されていた。
「ここまで語らせて頂いたように、優しく温かい物語でした。ミーナも朋子もその他にもとても魅力的なキャラクターが登場します。私はこの一冊をその大切な同級生と同じ時間、同級生の隣で読みました。普段の私であるならば、読み終えた後も私の中の物語の世界からなかなか帰ってこないのですが、今回は隣の彼が気になって、その余韻を彼の読んでいる姿に求めました。彼はいつも私の隣か少し後ろにいます。私が踏み込んだ物語を、その足あとの上を彼も行進しているのだろうかと気になってしまいました。」
もう、だれも合いの手を入れなくなっていた。声色も表情も最初から変わっていないけれど、文子の伝えたい核心に触れていることが聞いている人々すべてに明らかだった。僕の視界も周りの聴衆をいよいよ排除し始めて文子の握るマイクと、スライドに映る書影に吸い込まれていった。
文子はあの日、文子が『ミーナの行進』を読み終えた後の読書の中身を、惜しげもなく話すつもりなのだ。それは、僕らがあの日の帰り道に寄ったサイゼでは聞けなかった文子の『ミーナの行進』の話だということが僕を一つ真面目にさせた。僕の知っている文子が多くの聴衆に僕らの共鳴を語っているのではない。それはまだ僕の知らない文子が、僕が聞きに来ていることに期待し、発表会というのを照れ隠しの道具にして届けようとしていた。僕にはそう思えた。
「彼は確かに私の少し後ろを行進していました。でも、彼は私の少し前も同じように行進していたことに気づきました。一歩一歩の歩幅も足の向きも少しずつ違っていました。私のつっかえた文章をさらりと抜けてゆき、私が立ち止まって膝を落とし眺めた一文を流し目で気づいたのかもわからない速さで踏み越えていきました。でも、私がリズムをとる事に夢中だった部分で彼は道草を食み、私がどう乗り越えるか苦心した部分で彼は陽気に水浴びをしました」
ここまでずっと『ミーナの行進』の書影を映していたスライドが切り替わった。語るのに夢中で切り替えるのを忘れていたのではないかと想像するほど突然だった。でも、文子は台本のない中での着地点をきめていた。
「この小説の多くのキャラクターのなかで、ミーナに寄り添い続けていたのは誰だったのかを思い起こすと、それは伯父さんでもとっくりさんでも、そして朋子でもなかったと思っています。一番ミーナに寄り添っていたのはポチ子でした」
スライドは『ミーナの行進』の本にところどころ差し込まれていた挿絵に変わっていた。そこにはポチ子にまたがるミーナの後ろ姿があった。肺の弱いミーナは毎日学校までコビトカバのポチ子にまたがって通っているのだ。
「ポチ子と並んで行進するミーナからみれば、ミーナの足あとより前にも後ろにもポチ子の足跡が残ります。ポチ子は4足歩行ですから。ミーナが気になる小さな蝶にはポチ子は目もくれず、ミーナが素通りする野草をポチ子は食むために立ち止まります。」
ひと言ひと言を慎重に選ばれた文子の言葉は、スピーカーから放たれ聞き手すべての頭を撫でた。心地よい周波数で揺れる空気は、アリーナの外から微かに聞こえる屋台の喧騒も包み込んでいた。もう、文子の発表ではなく、これは文子の自己発見と告白の場になっていた。
「彼はいつも私の少し後ろに足跡をつけているように私は思っていました。でも、それは彼の後ろ脚の跡しか見えていなかった。だから私は彼と『ミーナ』を読んだとき、彼の足跡が私より前にあることに驚きました。彼は私の知らない場所まで先に行ってしまうかもしれないと不安だった」
マイクが文子の小さな吐く息の音を拾った。
「でも、それは私の勘違いでした。彼の前脚は私より前に、後ろ脚は私の後ろに。歩き方も歩幅も違うけれど、それは彼がピッタリ隣を並行し行進してくれていた証だった。私は彼が『ミーナの行進』を読み終えるまでの間、これ以上に説明のつかない温かさを感じました。彼の“何となく”で拾い上げたこの1冊で、こんなにも幸せを拾あげられたことが嬉しかった。彼の“何となく”が私をこんな幸せに導いてくれたことに感謝して、私の発表を終わります。最後に、『ミーナの行進』は私の中で勝手に幸せのスイッチになったように思います。いつの日か読み返すとき、私はあの日のことを想いだすことと思います。それは物語とは何も関係ないことなのかもしれませんが、、」
文子は、大きく息を吸った。
「『ミーナの行進』は私の中ではそういう本に変わったのです。どうもありがとうございました」
沈黙が長く続いた。そして、俊介が真っ先にパラパラと拍手を始めた。呼応するように司会者、そのほかの聞き手も拍手を重ねた。僕は文子の躑躅みたいな華やかな笑顔に目を奪われていた。
「さて、井坂さん、発表ありがとうございました。とても心温かくなる、そして芸術的な発表だったかと思います。ここからは質問の時間です。お集りの方の中から、質問してみたいことありましたら、挙手願います」
司会者は進行通りに進めていった。すると真っ先に俊介が挙手をした。マイクを受け取った俊介は文子に一礼してから続けた。
「発表お疲れさまでした。とても聞き入ってしまう発表でした。ひとつ伺いたいのは、この発表タイトルです。『カバは少女の思うことに気づいたか』とのことですが、先輩のカバは先輩の思うことに気づいていると思いますか?」
俊介の声は、今までになく真剣に聞こえた。
「そうですね。私のカバは気づいていても気づいていなくても、私には問題ないかなと思います。どちらにしても私の大切なカバは私に居心地のいい場所と、私の心の安寧を与え続けてくれるかと思います。私も彼のカバになれていたらうれしいですね。あ、でも、歩く場所が少し違うから見つけられるものが違っていて、それが私にとっては楽しさにもなるので、私は少女でいたいです」
少し場の和んだ笑い声が会場に戻った。次の質問者はブラックホール先輩だった。
「井坂さんにとってのベスト本は、今後は『ミーナの行進』になりそうですか?」
短く、端的な、それでいて肯定を期待する質問で、これできれいに幕引きを狙っているのが分かった。
「私のベスト本は、今も昔も『時をかける少女』です。SF好きなんです」
会場が大きな笑いに包まれた。ブラックホール先輩は続けた。
「なんで『ときかけ』がすきなんですか?」
文子は、自分でも面白くなってしまったのかはにかんで答えた。
「いや、それはもう、“何となく”ですね」




