表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/44

駅で

「邪魔なんだよ、どけよ!」


突然、後ろからぶつかってきた中年男性の怒声。


「あ、すみません……」

と精一杯心の中で返す…


詩音は慌てて頭を下げる。心がざわめく。思わず小さく呟くように、また唱える。


“……それでも、人生にイエスと言う……”


それは、誰に向けたわけでもない。ただ、自分の心を守るための呪文だった。


だが次の瞬間、別の通勤客が肩をぶつけてきた。


「チッ……何考えてんだか」


その衝撃で、手からノートが滑り落ちた。足元でひらりと舞い、線路に向かって落ちていく。


「あ……!」


詩音は反射的に手を伸ばした。ホームの縁ぎりぎりまで身を乗り出した瞬間、足元が滑った。


重力が彼女を引きずり、視界が傾いた。


耳に、駅の警笛が響く。


薄れていく意識の中、詩音は思った。


――せめて、言葉に救われたこの想いが、誰かに届きますように。


風がホームに吹いた。線路に落ちたノートのページが一枚、空に舞い上がる。


そこには、詩音が一番好きだった言葉が記されていた。


> “心が自然と再び通いあうとき、 わたしたちは言葉の中に、世界を築いていく。”


(ワーズワース『ティンターン寺院』より)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ