国王の通達の影響
国王の命が、王都から各地へと走った。
通達は短く冷たい文面で記されていた。
――朗読によって民心を惑わし、治安を乱す者あらば、直ちに捕縛せよ。
王の印が押されたその文は、瞬く間に各地の領主の城館に届けられた。
だが受け取った者たちの反応は、決して一様ではなかった。
ある領主は通達を読み上げると、肩をすくめて言った。
「治安を乱すだと? 民が朗読を聞いて穏やかになるのなら、むしろ治安が保たれるだろう。私の領地では、特に問題はない」
そう言って、形式的に通達を受け取るだけにとどめた。
別の領主は眉をひそめ、即座に禁令を出した。
「朗読はすべて禁止だ。村の集会所も、教会も使わせるな。夜に人が集まる口実になるなど、もってのほかだ」
兵士たちはその命を受け、村々に立ち寄っては人々を威嚇して回った。
さらに別の領主は、妥協の形をとった。
「朗読そのものは禁じぬ。だが開催は昼間のみ、人数は二十人以下。場所は城壁の内側で、兵士を立ち合わせること」
人々たちは顔を曇らせながらも、それでも朗読の時間を失うまいと、決められた枠の中で集った。
一方、奇妙な動きを見せる者もいた。
ある城館では、領主が直々にシオンたちを招いたのだ。
「我が館で朗読してみよ。民衆の前ではなく、まずは私の目の前で」
華やかな食卓の奥で、笑みを浮かべながら領主はそう命じた。
だがその瞳の奥には、決して純粋な期待はなく――「監視」の色が潜んでいた。
こうして、同じ通達は土地ごとに姿を変え、人々に影を落としていった。
朗読は喜びをもたらすと同時に、疑念と監視の目を呼び込むものとなり始めていた。




