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神の形になるノイズ

静まり返った深夜の教会。

蝋燭の炎が揺れ、長椅子の影が壁に長く伸びている。

祭壇の奥には、慈悲に満ちた神の像が鎮座していた。


その足元に、黒い染みのようなものが滲み出ていた。

はじめはただの闇。

だが、それは蠢き、波打ち、まるで腐った肉を捏ね合わせるように形を変えていく。


「……人は神に祈る。だが、祈りは争いに変わる……」

「……神の名を掲げ、血を流す……」

「……神は人を救わない。神こそ、人を憎ませる……」


ざわざわと、無数の声が重なり合う。

それはこの世の人間が吐いてきた罵詈雑言や恨み言、信仰への絶望や裏切りの叫びだった。

ノイズはそれらを吸収し、肥大化していく。


どろり、と黒い塊が祭壇に絡みついた。

やがて、像に向かって手を伸ばすような形を作り始める。

指先はまだ溶けた粘土のように形を保てず、滴り落ちてはまた這い戻る。

だが執拗に繰り返すうちに、その“指”は徐々に細かい骨格を真似るように固まっていった。


「……神の姿であれば、人は疑わない……」

「……神の声であれば、人は従う……」


ぶよぶよと揺れる塊が、少しずつ輪郭を整えていく。

背筋を伸ばし、腕を広げ、慈悲深い微笑を浮かべる――それは、祭壇に鎮座する神像と同じ姿。


ただし、その顔の奥底で蠢くものは慈悲ではなかった。

歪んだ口の端からは黒い霧が滲み、眼窩には底知れぬ闇が宿っている。


教会の静寂に、異様な存在が立ち上がる。

二つの神が並び立った。

ひとつは石像の純白の神。

もうひとつは、闇と悪意が作り上げた偽りの神。


その口がゆっくりと開いた。


「……我こそ真なる神なり……汝らの祈り、我が受け取ろう……」


まるで石像が語ったかのように、低く澄んだ声が響いた。

だが、その言葉の奥には、人を裂き、争わせ、互いを罵らせようとする毒が潜んでいた。

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