表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

真実と虚構の鏡

作者: 虚木

真実と虚構の鏡

遠い国のお城の中、女王様の部屋に飾られた魔法の鏡。鏡は何を言われても、真実を写し続けてきた。

今日はこの国に新しい女王様が君臨する日。新しい女王様は私を見て一言告げる。



「な、何よ、この鏡!!!!」


女王様はご不満の様子。近くにあった物を手に取り、今にも私を割りそうな雰囲気。


「女王様、おやめ下さい!」

「メイクが崩れてしまいます。一度落ち着いてくださいませ!」


目の前の女王様は従者達に宥められている。

どうしてこんなに怒っていらっしゃるのだろうか。私は本来の役目通り、「真実」の姿を写しただけである。


「とにかく、この鏡を捨てなさい!!」


女王様に命令された従者達は、すぐさま私を捨てた。数百年「家宝」だとか「魔法の鏡」だとか言われてきたのに、なんて有様だろうか。もう少し扱いを考えてもらいたい。



捨てられてから数時間後、1人の貿易商が私を拾う。遠くの国へ連れていかれるようだ。今度は上手くやろう。でも上手くってどうやって?さっきは「真実」を写して捨てられた。なら、今度は「虚構」を写してやればいい!


先の国から遠く東に来たようだ。女王様とは顔立ちが違う。女王様とは別の意味で醜い顔の人間達が行き交っている。そのまま写すと捨てられてしまうらしいから、今度は理想を写してやろう!全く、人間は鏡をなんだと思っているのだろうか。


「あら、私はこんなに綺麗だったかしら?」


目の前を通ったご婦人が笑う。

ううん、そんなことないよ。なんて言うわけも無い。ご婦人は機嫌よく過ぎていった。


「おや、鏡なんて珍しい。どうだい、かっこいいだろう!」


近づいてきた男性がかっこつけて言う。

お腹についた脂肪については、何も言わないことにしよう。男性は服を買いに行こう!と去っていった。


「鏡がある!私可愛いでしょ!」


駆け寄ってきた少女がスカートの裾を摘んでお辞儀する。

君だけは他の人と違って、嘘をつかなくてよさそうだ。少女はくるりと1回回って去っていった。



それからどれくらい経っただろう。

貿易商は私のことを特定の人物には売らなかった。その変わり、常に街の中心の広場に私は置かれ、人々は私に一瞥をくれた。裾を摘んでお辞儀をしたり、モデルのようなポーズをとったり、笑顔の練習をしてみたり。その間はひたすら、心の中にある理想を写し続けてやった。するとどうだ。いつの間にか理想と見た目が同じになっているではないか。


私は「虚構」を写すのをやめ、「真実」を写すことにした。

それでも人々は私を捨てることなく、広場に置き続けてくれたのだ。


そういえばあの女王様は、今頃どうなっているだろうか。広場に置かれた私には知る由もない。

随分と前に書いた話。発掘したので置いときます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ