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恋夢  作者: 夢楽庵十夢
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 2 その時、そのあと

《 三月十一日 午後二時四十六分から始まった 》



「え?なに?地震?」

最初はカタカタと周りのものが当たってなっているだけだったけど…

「長い…な」

不安にかられてマンションの外へ出て駐車場に走った…そのときは走れたんだよ。

アスファルトの地面が頼りなくって、ひざから力が抜けてその場にしゃがんだ。

電柱や木が不自然に左右に振れてる。



がらがら!

どん!



大きな音!

やっぱり外にでてきてたマンションの住人の顔は凍り付いたみたいになってる。


「地震だ…大きい…長いよ」


不思議に怖さは実感できず呆然とまわりを見てた。

長く感じた…


終わったと思ったときに立とうとして、ひざが笑ってまともに立てなかった。

部屋に戻ろうとしたら揺り返しが来た!


「わっ!」


もう一度その場にしゃがんで…


今度は怖いって思った。


手に唯一持って出たのは携帯だし…自分の軽自動車に乗って、ワンセグでニュースを見た。

さかんに津波がどうとか言ってる。


「津波?」


ニュースキャスターがいろんなことを言ってるけど、どれも嘘っぽくて実感できなかった。

自分の置かれてる状況だってなんだか夢みたい。

でも近所のブロック塀が見事に倒れたり、一軒家の屋根瓦がなくなってたり…

実家への電話は全然つながらない。

リダイヤルを続けるってか、つながれって心が叫んで、電話しなくちゃしなくちゃて思いこんでて…

飛び込んできたメール受信の知らせに胸が張り裂けそうだった。


「あ、メール…おかあさん!」


『あなたは大丈夫?こっちは無事です』


メールなんて面倒じゃない!

用があれば電話するわって言ってたおかあさんが、慣れないメールを打ったんだってちょっと笑えた。

つか、いっつもメールばっかりのあたしがメール使ってないってどうよ?

あたしやっぱ普通じゃなかったんだなって、やっと頭と体と心が少し落ち着いた気がした。



おかあさん、さんきゅ



なんて面と向かって言えないけど、ともかく


『無事だよー☆おばあちゃんとかも大丈夫?』


って返信したけど、なかなか返ってこないからセンター問い合わせをしたら、もう返信が返ってきてた。

小まめにセンター問い合わせしなきゃだねって思った。



部屋の中めちゃくちゃ。

ぐるって部屋の小物とかが渦巻いたみたいに散乱してる。


冷蔵庫…ちょっと待って!なんで50センチ近く前に出てるの!


うそっ!壁とかに亀裂が入ってるし!


電気も水道もガスもダメ。

10分に一回は余震があって、部屋にいたかったけど怖くて自分の軽自動車に避難。

厚着したうえに毛布を持ち込んで、買い置きしてあったお菓子とペットボトルのお茶を持っていった。

足りないもんは後でコンビニに買いに行こうって本気で考えてて…

暗くなってから行ったら、当然お店なんて開いてなくて…


うわっ!

入り口の自動ドアにヒビが入ってる!



普通が普通じゃないときって、こんなに不自由なんだって実感。


日が暮れたら急に寒さが戻ってきて、また部屋に戻ったけど懐中電灯なくって…

アロマキャンドルを点けたけどやっぱり揺れると怖い。

結局疲れきったまま車へ逆戻り。



ガソリン、まだ半分以上あるから大丈夫だよね?



ヒーターを入れたままアイドリングさせてシートを倒したら、フロントガラス越しに目に飛び込んできたのは見たこともない星空っ!



マジ?吸い込まれそう!



こんなにも夜空に星があったんだって、水戸だって都会じゃないけどやっぱり明るかったんだなって思った。



翌日にはライフラインはほぼ復旧して、あたしは三日目に石岡の実家に戻った。

おばあちゃん大丈夫って言ってたけど、やっぱりショックが大きかったのか寝込んでた。

中町通りを歩いてたら、農家を継いだ高校の同級生たちとばったり会った。


「お、元気そうだな?」

「あんたもね」

「水戸も随分でかかったろ?」

「びっくりしたよぉ」

「俺らだって畑で立ってられなかったかんな」


それからは地震のこともだったけど、福島原発事故の放射能漏れから世間で急にその話題が広がった。

出荷するはずの野菜とかが東京で買ってくれなくなってっていう風評被害が出てるって…あたし怒りが爆発寸前!


「それって酷くない?」

「ああ、茨城だって被災地なのに報道も取り上げてくれないしな」

「どうするの?」

「どうもこうもないさ。安全だっていう証拠を見せるしかないな」

「なんとかカウンターってやつ?」

「まぁそんなもんだけど、それだってただじゃないしな」

「だよねぇ」

「だけどな、今度東京へ直接売りに行くんだ」

「そんなことできるの?」

「場所の確保もできてるし、あとは野菜を可能な限り積み込んで出かけるだけってとこまで来てる」

「さすが素早いね」

「死活問題だからな…ってか先行き不安で自殺したひともいるしな」

「うん」


あたしの中で何かがむくむくとわきあがってきた感じがして思わずいっしょに連れてけと身を乗り出してた。

友達はにやりと笑って人手は多いほどありがたいと快く承諾してくれた。



【続】

怖いとかの感情が抜け落ちるんですね…

妙に冷静で、だけどとんちんかんで…

ちょっと考えればコンビニが開いてるわけないのに、普通にやってると思い込んでましたね(苦笑)

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