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現代解釈桃太郎 ~大都会鬼討伐戦記~  作者: はの


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第7話 西粟倉村

 西粟倉村にしあわくらそん

 岡山県の北東端に位置し、兵庫県および鳥取県と隣接する村である。

 人口は一三六二人。

 面積の九十五パーセントを森林が占め、そのうち約九割が人工林と言う、村ぐるみで森林を育て続けている村である。

 

 そんな村に突如として届いた、鐘の音。

 

 あわくら温泉に浸かる村民たちは、音の意味が分からず美しい音色に聞き惚れるのみだったが、この男だけは違った。

 

「これは、美作市のリュバンベールの鐘の音。この鐘が鳴るってことは、そういうことだよね」

 

 西粟倉村村長である西粟倉にしあわくらあいは、あわくら温泉から速やかにあがり、服に着替える。

 そして、先に温泉からあがり、待合室で体を冷ましていた秘書と合流する。

 

「さかちゃんがピンチかもしれない。マンマミーヤだ」

 

 男湯の暖簾をくぐって出てきた西粟倉愛は、茶色い着ぐるみに包まれていた。

 

「村長! たぬきの着ぐるみやめてください!」

 

「車を回せ!ヒアウィゴーだ!」

 

「村長! 別の服に着替えてください! お願いですから!」


 秘書の言葉を無視して西粟倉愛が温泉宿の外に出ると、木製の自動運転車が丁度入り口に止まったところだった。

 とあるアクションレースゲームに登場する車に酷似した、一人乗り用の小さな車。

 名を、『ニシアワクラカー』。

 素材は木。

 動力源は太陽光。

 森林と共に生き、エネルギー自給率百パーセントを目指す西粟倉村では、自然と科学の融合など当たり前だ。

 

 西粟倉愛は、ニシアワクラカーに颯爽と乗り込んだ。

 

「村長、私は!?」

 

「お留守番だ! マンマミーヤ!」

 

 そして、秘書をその場に残してアクセルを踏む。

 ロケットスタートによって、ニシアワクラカーはスポーツカー並みの急加速をして、発進する。

 

「イヤッフー! マンマミーヤー!」

 

 たぬきの着ぐるみの尻尾が、くるくると回る。

 回る尻尾はプロペラの役割で風を起こし、風力によってニシアワクラカーをさらに加速させる。

 

「あ、村長だ」

 

「村長ー!」

 

 西粟倉愛は、手を振る村民たちに手を振り返しながら、美作市に向けて走っていく。

 

 

 

「森林の傷が酷い。マンマミーヤだ」

 

 美作市に突入し、ニシアワクラカーを走らせながら西粟倉愛が見たのは、餓鬼によってえぐりとられた木々と大地だった。

 森林と共存する西粟倉愛にとって、許しがたい光景。

 

「本来はさかちゃんに許可を取ってやるべきことだが、今は緊急事態だ。ヒアウィゴーだ」

 

 西粟倉愛はポケットから、亀の甲羅の形をした小さな種を取り出し、ニシアワクラカーの外へとばら撒いた。

 小さな種は、まるで車のように走り出し、まるで目があるかのようにえぐり取られた木へとぶつかっていく。

 ぶつかった種は、次々と木の中へと吸い込まれて消える。

 次の瞬間、まるで自己再生でもしているかのように、木が急成長して穴を塞いでいった。

 否、木だけではない。

 えぐり取られた地面は埋まり、草木がにょきにょきと生えだした。

 

 百年の森林もり構想。

 二〇〇八年、西粟倉村が掲げた構想である。

 林業の六次化、移住と起業の活性化などを軸とし、百年の森林に囲まれた上質な田舎を西粟倉村に実現するための壮大なプロジェクトである。

 

 プロジェクトの結果生み出された一つが、持続可能な森林の素。

 先の、甲羅の形をした種である。

 傷ついた木々に再び命を吹き込み、癒し、成長させることができるのだ。

 森林を百年もたせるための大都会テクノロジーある。

 

「イヤッフー! マンマミーヤー!」

 

 めきめきと回復していく森林を見ながら、西粟倉愛はどんどん進んでいく。

 

 進んで。

 進んで。

 

「ジュババババ!」

 

 餓鬼の声を聞いた。

 

「近いぞ!」

 

 たぬきの着ぐるみのしっぽが、さらに速く回る。

 ニシアワクラカーがさらに加速し、丘の頂点を走り抜けて空へと飛んだ。

 

「イヤッフー!」

 

 そして、西粟倉愛は視界に捕らえた。

 美作さかと、美作さかの前に立つ巨大な餓鬼を。

 

「さかちゃん、見っけ!」

 

「西粟倉殿?」

 

 西粟倉愛は車の中から銃を取り出し、餓鬼へ向ける。

 銃の素材は、当然木材。

 普通の銃と違うのは、銃口に弾が入っていないこと。

 だがしかし、西粟倉愛が引き金を引くと同時に、銃からは弾が放たれた。

 

 弾は、餓鬼の体内に撃ち込まれると同時に、爆弾に等しい働きで餓鬼を体内から爆散させた。

 

「ジュバッ……!?」

 

 餓鬼の体は爆散し、眼球ごと形を失った。

 

「テテテテテテテーテー! テテテテテテテーテー! テテテテテテテテーテテテテー!」

 

 西粟倉愛はニシアワクラカーが着地すると同時に降車し、美作さかの方へ駆け寄った。

 

「やあ、さかちゃん! 助けに来たよ!」

 

「……頼んでないでござるよ」

 

「またまたー! 結構、マンマミーヤな状況だったじゃないかー」

 

「断じて、そんなことはないでござる!」

 

 美作さかは、餓鬼がいた場所を見た後、西粟倉愛が持つ銃を見る。

 

「相変わらず、訳の分からぬ道具を使っているでござるな」

 

「マンマミーヤな道具を作るのが趣味だからね。ミーの最新作」

 

「弾が入っていないようには見えぬでござるが」

 

「よく気づいたね! この銃は、大気中の空気を集めて弾にするマンマミーヤな銃なのさ!」

 

 西粟倉愛の持つ銃は、弾が不要な銃。

 外部の空気を取り込み内部で圧縮し、高密度空気を弾とする。

 高密度空気の弾は、対象に当たるとしばらくして動きを止め、圧縮された空気が元の密度に戻ろうと四方八方へと力を加えさせる代物だ。

 先程、餓鬼が爆散したのは、圧縮された空気の引き起こした爆発である。

 

「つまり、空気の膨張でござるか」

 

「その通りだよ!」

 

「なら、まだ生きてるでござるな」

 

「へ?」

 

 西粟倉愛は、美作さかの視線を追って、先程まで餓鬼がいた場所を見た。

 餓鬼がいた場所にはばらばらになった餓鬼の体が集まり始め、数秒もしないうちに餓鬼は元の巨大な姿を取り戻した。

 流動体となった眼球が回転し、視界に西粟倉愛を捉える。

 

 西粟倉愛は、両手で自身の両頬を挟み込み、大きな口を開けて叫んだ。

 

「マンマミーヤ!?」

人口は、令和五年一月一日時点の住民基本台帳人口に基づきます。

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