ズキン、ズキンズキン。
作者も片頭痛起こして「ぐえぇ…」ってなってました。なので、インフルエンザのときの夢みたいにいけるかな、と思いましたんで、書きますたぁ。
ああ、痛い。
片頭痛。
仕事中、部屋でダラダラしているとき、買い物に出かけているとき。
いかなる場面でもお構いなしだ。
今回は仕事中。一時的に頭を半分取りたくなる。
雨の音。きっと気圧のせいだろう。
仕事に集中できなくなる。
最近、残業ばかりだったから、早く仕事を終わらせて帰りたいのに。
「はあ…」と、溜め息を落とす。
「あの、先輩」
誰だ。
「はい」と言いながら声の方向を見る。
「お疲れですか?少し休んでは?お仕事変わりましょうか」
「七梨ちゃん…そうだね、お言葉に甘えようかな」
後輩である七梨に体調を心配されるようになるなんて。
自己管理もできない先輩で少し申し訳ない気持ちになる。
しかし、いい後輩を持ったものだ。こんなふうに自分だけでなく、他の人に気を使える後輩。
なかなか、いないような気がする。
「お願いします。ありがとうね」
「いえいえ。」
七梨は書類を受け取ると、自分のデスクに帰っていった。
休憩室に向かう。
流石にずっと任せきりでは駄目だ。
10分程度休憩したら、七梨を手伝いに行こう。
今日は一段と痛みが強い。
50分程前に薬を飲んだのに。治るどころか、痛みが増している。
もう10分経ったのか。
七梨を手伝うために、休憩室の椅子を立つ。
駄目だ。立つと視界がぐにゃぐにゃ歪む。
ズキン、ズキン。
脳みそだか心臓だかが拍動する。
あまりの痛さに、左手で頭を抑える。
「先輩、先輩。大丈夫ですか。」
いつかの、鈴が転がるような声がする。
七梨だ。
「う、うん…」
やっとのことで返事をする。
本心は全然大丈夫ではない。すぐに倒れてしまいそうだ。
「先輩、帰ったほうがいいです。家まで送ります。」
七梨が真剣な眼差しをする。私の顔を見ながら。
「……お言葉に…甘えるよ……」
本当に私は愚かだ。自分の身体の悲鳴にも耳を傾けないで。
そんなやつが後輩になんか気を使えるわけがない。
「私の車でいいですね?車乗るまで背負いますよ」
ああ、本当に優しい後輩だ。私にはもったいないほどに。
七梨に背負われる。
華奢なはずの背中なのに、何処か大きく感じる。
思いと思うのに。本当に申し訳ない。
車に私を乗せながら、七梨が言う。
「馬場さんに早退の旨、言っておきます。」
上司に報告までしてくれるらしい。優秀すぎる。
「絶対に安静にしておいてください。病院は治ってからでいいです。」
七梨が運転しながら言う。
あっという間に家に着いた。
いつも通りのアパート。403号室。
また七梨が背負ってくれる。
「ここでいいですか」
403号室の前。
「ありがとう……」
這うようにして、部屋の鍵を開け、中に入る。
やっとの思いで鍵を閉め、ベッドに横になる。
ほぼ気を失うようにして、眠りにつく。
気づくと、夜だった。午前2時。
確か、昨日家に帰ってきたのが午後2時くらいだったから、ざっと12時間眠っていたことになる。
いつの間にやら頭痛が治っている。
もう一度、眠りにつくか。
朝の8時。出勤まで1時間ある。
家から職場まで20分なので、それに+5分しても35分。
少し寝坊した。病院行くふりして遅刻しよう。
「あ、先輩。おはようございます」
「頭痛大丈夫なんですか」
七梨が声をかけてくれる。
「うん、お陰様で。昨日はありがとう。七梨ちゃんがいなかったら、ちょっとヤバかったよ」
「そういえば先輩。病院行ってませんよね、病院行くように声かけましたよね」
え。
心臓が飛び跳ねる。
なんで病院に行っていないことを知っているのか。
七梨にはそのことは言っていない。職場にも「病院に行く」と電話した。
どうして、なんでそのことを知っている。
頭の中で疑問が堂々巡りしている。
「うふふ。「なんでそのことを知っているのか」という顔ですね、先輩」
「理由は簡単。
いつも先輩を見ているからです。
先輩の行動なんか、すべて把握していますよ。
昨日は14:12分にベッドで寝始めて、今日の2:05分に目が覚めて。
先輩の寝顔可愛かったなぁ。」
そういえば、家も教えていないのになぜ分かったのか。答えは、私を「いつも見ている」から…
寝顔…ベッドはベランダ側にある。ベランダに入れば見れる。だから、ベランダに入られている…
七梨は私のストーカー……
「うふふ。あはははははははははははは」
七梨が高笑いをする。
七梨。てめーはやべえぞ、てめーは。
七梨を悪者にする案は途中でバチッと思いつきました。
結構書いてて楽しかったです。
『私』。貴様は意識朦朧のはずなのに、なぜ眠りについた時間を覚えている。
その答えは「恐ろしく真面目だから」です。
仕事に就いたばかりの頃、時間を守る癖、時計をよく見る癖がついてしまいました。
まあ、恐ろしく真面目なやつが病院行くふりして仕事バックレるか、って話ですよね。




