頼る
「嫌がらせ?」
「あ、いや、何でもないぞ!さあ片付けよう。ここは前ゴミ捨て場で…」
「そんなところが僕たちの教室何ですか?嫌ですよ」
誰かが言った。
(ゴミ捨て場なわけがないだろう…)
ホレスは内心そう思っていたが自分が口出しするのも面倒くさいと思い黙っていた。
「先生が片付けてくださいよー。僕ら帰りまーす」
「でも、今からいっぱい話すことが…」
「片付けてから話してくださーい。俺らゴミ片付ける為に勇者学校に入ったわけじゃありません」
そのセリフにクスクスという笑い声が聞こえる。
(非常に不愉快だ)
ホレスはそう思った。
「おい、お前らは教師を馬鹿にするために勇者学校に入ったのか?」
「ああん?お前誰だよ?」
ホレスは無視してゴミを片付け始める。
「無視しとんなや!」
殴りかかったがホレスに軽々避けられる。
「なあ帰りたいなら、邪魔だから帰ってもらってかまわないぞ」
「チッ」
帰っていった。それに続いてクラスメイトがぞろぞろと帰っていく。教室に残ったのはホレスとアリスとサラだけだった。
「ああ、どうしようか。先生、初日から失敗しちゃったぞ」
サラが悲しそうな声で言う。
「サラ先生、先生はどうしたい?」
ホレスが聞く。
「どうしたいって?」
「サラ先生はクラスがこのまま崩壊したままでいいのかって聞いてるんだ」
「駄目に決まってるぞ!」
「そうか。ならまず先生に嫌がらせしている奴を殺す…じゃなくて、探し出せばいいな」
「は?こ、これは嫌がらせなんかじゃないぞ」
「先生、その嘘には無理があるだろう」
「っ…」
「先生、心当たりはありますか?」
アリスが優しい声で尋ねる。
「アリス、ホレス、先生は大丈夫ぞ。先生の問題だから先生が自分で解決するぞ」
そう言うサラの目はとても弱弱しかった。
「分かった。本当に困ったときはいつでも頼れ。俺たちはそこらの奴らより使えるし信用できるぞ」
「ふふ、ありがとうだぞ。覚えておくぞ」
話しながらゴミを片付けていたので気づけば教室はキレイになっていた。
「よし、じゃあ帰るからな」
「サヨナラ先生」
「気を付けるんだぞー」
手を振って見送る彼女は寂しそうな顔をしていた。
*
「ホレス、サラ先生のことどう思う?」
帰り道、アリスと話していた。
「サラ先生か。とてもいい先生だと思う。だからこそ助けてやろうと思ったのだがな」
「うん。でも今のままじゃ先生精神的に病んじゃうと思う」
「それも先生次第だな。もし先生が頼ってきたらその時はちゃんと助けてやろうぜ」
ホレスが拳をアリスに突きつける。アリスは顔を真っ赤にしてコツンと拳を当てる。
「だけど、頼ってくれるかなぁ」
「大丈夫だ。先生は必ず頼ってくる。人間というのは弱い者なのだ」
「あ、もう私の家だ!じゃあね」
(もしかしてホレス、私にあわせてくれてたの?)
「じゃあ」
アリスがコッソリ見ているとホレスは転移で帰っていった。
「転移かよ…」
アリスは少しがっかりした。