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独りぼっちのソフィア

投稿が遅れてしまい申し訳ありません。忙しいって嫌ですね。ゆっくりできる日がほしいです・・・。

 私の名前はソフィア。魔王城にずっと一人で暮らしてた。ほんの一瞬お友達が出来たこともあったけど・・・私が原因で彼らはひどい目にあったから。あの時我を失って人を初めて殺した。

それからずっと・・・・・独りだった。その寂しさが庭園に咲く美しい花々を枯らせ、鉄は錆びて朽ちた。

 でもある日、そんな魔王城に一人の男がやって来た。


*** 


「君が魔王ソフィア?」

男は私を見るなりそう言った。失礼な奴である。

それにしてもまあ・・・随分と値の張りそうな装備だこと。この男は一人で魔王城まで来たというの?阿呆なのかしら。

「だったらなにかしら?」

「俺、勇者なんだ。だから君を倒す!」

阿呆だったみたいね。

「だけど、君を見て気分が変わった」

「へえ、見た目が少女というのも時には得ね」

「もちろんそれもあるが・・・・君に惚れたんだ!」

・・・・・え?

私をここまで思考停止させるなんて。そうか、これは罠よ。

「そんなこと言って私をだまそうとしているのでしょう?」

「違うんだソフィア。君に一目ぼれしたんだ。その美しい顔。時々憂いを含んだそのまなざし。なにより黒い髪が妖艶さを引き立たせている!!!!」

この方、脳みそちゃんとあるかしら。いえ、ないのでしょうね。

「もう少しまともな作戦を考えてくることね」

そう言って無理やり自称勇者を転移させた。己の頬がほんのりと赤くなっていることも気づかずに。

勇者のいなくなった部屋は妙に静かに感じて、意味もなく腹立たしくなった。

今日はイレギュラーだったけれどきっと明日はまた一人。・・・・それでいいのよ。


翌朝、「ソフィアーーーー!好きで――――す!」という間抜けな声で目を覚ます。

あのアホ男だ。心のどこかで喜んでいる自分に気づかないふりをして、追い返した。

しかし男はあきらめなかった。来る日も来る日も魔王城に通い続けた。そして私もまたそれを心待ちにするようになった。心待ちにはしているのだけど、それ以上の関係に踏み出す勇気もなく私は追い返すだけ追い返した。

 その関係性が崩れたのは嵐の日だった。男は傷だらけで倒れこむようにしてやってきたのだ。

「な、何があったの?」

仕方がないから手当をしよう。家に上げるのは癪だけど、手当をしたらまた転移で返せばいいのよ。

自分に言い訳をしてかすり傷だらけの男に包帯を巻く。

「こんな嵐の中来るなんてあなたはやっぱり阿保なのね」

「へへへっ好きな女のためならばどこにだって行くさ・・・いってぇ」

どうしてだろう、胸の鼓動が変だ。随分と小刻みに動く。風邪でも引いた?

「にしても初めてだよな、お前が自分から家に上げてくれるの。今日、泊ってってもいいか?」

「あら、少し優しくしてあげたら随分と調子に乗ってくれるじゃない」

包帯を巻く力を思いっきり強くする。

「痛い!もうちょっと優しく!優しく!!!」

なんだか可笑しい。彼のことをもっと知りたい。

「自称勇者さん、あなたのお名前は?」

「俺の名前はピエール・エルマン。自称じゃなくて本物の勇者さ」

「本物?それなら帝国はおしまいね。あなたみたいな人が勇者だもの」

「本当だよ。まあ、俺がソフィアに一目ぼれした時点で俺が魔王を倒すことはなくなったわけだ」

「それでいいの?」

「いいわけないだろう?国民も王も激怒してるよ。でも、仕方がないじゃないか。君は美しくて、・・・優しい魔王だから。優しい魔王を殺すなんてなんの意味があるんだ」

優しい・・・?その言葉は私の胸をほんのりとてらす。

「だけどなぁ、魔王を倒すまで国に帰ってくるなと言われてしまった。これじゃあ家がなくて困る」

「それなら、その・・・私の家に住む?」

鼓動が速い。おかげで判断力がなんだか鈍っている気がするわ。こんなことを言うなんて。

しかし彼女の小さな後悔は、彼の無邪気な笑みにかき消されてしまった。


二人が付き合い始めるのにそう時間はかからなかった。

・・・そして、二人の幸せが崩れるのにも。


私はは勇者と出会って幸せの絶頂にいた。お腹にはピエールと私の子供がいて、もう生まれるはずだ。

本当に幸せだった。でも、世間はそれをよしとはしなかった。

勇者と魔王。二人は大きな力を持っている。時にその力は、理由なく恐れられ、傷つけていいのだと弱者は勘違いする。帝国もまた、そうだった。

子どもは生まれたちょうどその日のことだ。

「っピエール!魔物の森に結界が張られたわ!」

「ああ、多分帝国軍だ。俺が足止めしてくる。ソフィアは先に逃げてくれ」

「駄目よ。流石のあなたでもこの数じゃ・・・」

「大丈夫。それに君は、その子を守らなくちゃだろう?」

「でもっ・・・」

「信じてくれ」

「約束よ。必ず、必ず生きて会いましょう」

「ああ、またあとで」

私は愚かだ。この後まさか帝国軍から旦那の死を聞かされるとは思っていないのだから。そして私は魔王の力すべてを使って帝国軍を根絶やしにした。その時の記憶はないが、自分の腕に抱えていたはずの赤子は消え去り、血にまみれた自分の姿だけが森に残った。

きっと、私が赤子を殺したのだろう。


**


「その赤子がホレスだと?」

あまりに壮絶な話にカレンはやっとのことでこれを尋ねた。

「ええ・・・。勇者の魔力と魔王である私の魔力、どちらも持っているのは私の子供しかいないはずだもの」

「でも、どうして生きて・・・」

「憶測にすぎないけど・・・勇者がなにかしたのかもしれないわ」

「勇者が?」

「ええ。なにをしたのかは分からないけれどね」

「これはなおさらホレスに目を覚ましてもらわなくちゃですね!!」

アデルはにやりと笑って魔王に拳をあてる。

「アデル・・・言うようになったじゃない。でも、そうね。その通りだわ。皆、力を貸してくれるかしら」

「「もちろんです!!」」

もう魔王は一人じゃない。なにも失わせはしない。彼女は確かに前を向いた。

新作始めました!題名は「お嬢様、執事です。」です。ぜひぜひ読んでいただけたらなと思っております。今後とも狛犬をよろしくお願いいたします。これからはなるべく毎日(?)投稿目指して頑張ります・・・。

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