少年の正体
「僕の目的?そうだね・・・君にもプレゼントを届けるため、かな。ほら、君の本当の親を知りたくない?」
「俺の親はソフィア・・・魔王ソフィアだ」
「うん、間違いじゃない。愚かな魔王は気づいてないかもしれないけど君は魔法ソフィアのれっきとした血のつながった息子だよ。問題は父親だ」
聞く気はない、聞きたくはない。なのに自然とホレスは耳を傾けてしまっていた。
「君の父親は勇者だ」
「は・・・?」
「いいね、その反応!そう、君は魔王と勇者の間に生まれた子供なんだ。厄災を招く子だよ」
「っ・・・黙れ!」
ホレスは懐に忍ばせていたナイフで少年に切りかかる。しかし、少年の周りに張られている結界によってその刃が届くことはない。
「その厄災は君の父親と母親にも等しくふりそそいだ。勇者は子供を守るために死に、魔王は勇者が死んで禁忌に手を染めた」
「黙れ黙れ黙れ!」
届くはずがないのに何度も何度も結界に刃を立てる。
「ホレスにも心当たりはあったんじゃない?」
ナイフが度重なる負荷に耐え切れずに折れた。
「俺は、何も知らないっ・・・!」
それでもホレスは手を止めない。
「君は人を傷つけるのが怖いよね。それは、一度傷つけてしまえば止まらなくなってしまう気がしたからじゃない?」
「違う・・・。違う・・・。」
ナイフが手から落ちる。
「ソフィアが本当の母親だと、あの夢を見たとき、うすうす勘づいていたはずだ。」
ホレスは力なく膝から崩れ落ちた。
「君は、全てを知っている。目を背けるのはやめるんだ」
ホレスの脳内に知らない記憶が流れ込んでくる。
「や、やめろ・・っ!」
「大丈夫。君がこれを受け入れられれば君はさらに強くなる」
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
断片的なものが次第に繋がってくる。ホレスは記憶の波にのまれる。
少年はその姿を見下ろして仮面をはずす。
「ロベルト・・・・」
かすみゆく視界の中でホレスは仮面を取った少年の顔を見てその名を呼んだ。
「いい夢を」
そう言ってロベルトは優しく微笑むのだった。