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逆恨み

 「おい、何が起こったんだ?」


 「さあ」


 試験会場がうるさくなる。騒ぎを聞きつけた勇者学校の先生たちが駆けつける。


 「全員席につけ!」


 騒がしさに負けないくらい大きな声で先生が言う。


 「試験監督は何をしている?」


 「逃げたぞ?」


 ホレスが口を開いた。


 「は?お前は何を言っている?」


 「いやだから、禁忌の魔法を使ったのがバレて逃げたぞ。あいつはなかなか転移がうまくてな。痕跡が消されていた」


 「まてまて。状況が理解が出来ないのだが。あの試験監督、実は勇者だったのだが…」


 実は試験監督を決めようとしていた時、勇者の一人である〈転移と龍の使い手 デグロ=デラロサ〉が名乗り上げたのだ。学校側も勇者が試験監督をしてくれるならと喜んで引き受けた。試験の内容は勇者にすべて任せっきりだった。

先生が全て説明した。


 「というわけだったのだが…。一番事情を知ってそうなのはお前だな。ちょっと来い」


 「面倒くさい。説明すればいいんだろ?デグロが龍に禁忌の魔法を使っていた。それを解いてデグロにどういうことか聞いたら逃げた。これ以上分かりやすい説明ないだろ?」


 「おいおい、それ本当なのか?そうだったら問題だぞ…」


 先生たちが慌ただしく試験会場を出ていく。


 (人の言うことをあっさりと信じるんだな。ま、ホントのことだからいいけど)


 するとホレスの隣にいた女の子がホレスに話しかける。


 「君、凄いね。なんか色々知ってるみたいだし」


 「それはどーも」


 「ねえ、この後どうなっちゃうんだろうね?」


 「さあな」


 「この後お茶でもどう?」


 「断る」


 「ひっど!」


 (鬱陶しい) ホレスは早く会話を終わらせたかったのにつぎからつぎに質問してくる。


 「おい、いい加減に…」


 ホレスが怒りそうになった時、先生たちがぞろぞろと入ってきた。


 「試験は終わりだ。ホレス君、君は残りたまえ。ほかの者は帰るように」


 ぞろぞろと試験会場から人がいなくなる。


 「じゃあね。ホレス君」


 「…」


 「シカト?ひっどー」


 ずっと鬱陶しいと思っていた女の子もとうとう席を離れ、ホレスは頬杖をつく。


 (面倒だ)


 「さて、ホレス君。詳しく事情を説明してほしい」


 「さっき説明した」


 「もっと詳しく!」


 「あれ以上詳しく説明できない。じゃあなんだ、デグロが使い魔とか言っていた龍から事情聴けよ。あいつが一番被害者なんだしよ」


 「どうやって…」


 ホレスは無言で龍を召喚した。


 「あとは任せたぞ」


 「はい」


 「ひゃあ。本物だぁ」


 変な声は無視して家に帰った。


 *


 「お帰りなさい。どうだった?」


 ソフィアが聞く。


 「最悪でしたよ。すごい面倒くさかったです。実は…」


 ソフィアに事情を話す。ソフィアは難しい顔をする。


 「そっか。今日はもう寝るといいわ。アデル、ちょっといい?」


 「はい」


 アデルは嫌な予感がした。


 ホレスが寝たことを確認してからソフィアがアデルに聞く。


 「()()()()の仕業だと思う?」


 アデルは静かにコクリと頷いた。


 「ホレスにちょっかいをかけようとしてる?」


 「いや、そういうつもりはなさそうでした。どちらかと言うと新しい人材を見つけようとしているようでした」


 「そう。それならいいわ。あいつら、慎重でなかなかしっぽがつかめないからねぇ。ホレスにバレないようにあいつらについて調べなさい」


 「…はい」


 「不満そうね。失敗したら…死だからね」


 (理不尽だって!なんできゅうに死とか言うんだよ)


 アデルは嘆いていた。


 *


 デグロは必死にホレスの情報を掴もうとするが一つも分からなかった。


 (このままだとボスに役立たずの烙印を押されてしまう…!)


 しかし、間に合わなかった。


 「デグロ、遅いじゃないか。何やっているんだ?」


 気配を察知させずに少年がデグロに近づく。


 「ひっ!すみません!全く情報が掴めないのです!」


 「本気で使えないなお前は」


 少年から放たれた殺気にガクガクと震えるデグロ。


 「すみませんすみませんすみません」


 「ちっ。もういい。にしても全く情報が掴めないというのもおかしな話だな。…もしかしたらソフィアのクソ婆が絡んでいるのかもしれないな。なら、もっと面白いじゃないか」


 「よし、デグロ。お前は使えない。だから今すぐ俺の前から去れ」


 デグロは震えながら静かに消えていった。


 (全部ホレスが悪いんだ。全部ホレスが…)


 デグロの怒りはホレスへと向いた。それは逆恨みだった。



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