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ソフィアの過去2

 「この魔物新種じゃないか?」


 「ホントだな」


 人間がアデルを見ながら会話をする。アデルは檻越しにその会話を聞いているしかなかった。


 「高値で売れそうだな」


 「やめろ。こいつは魔物だ。殺すぞ」


 「エラそうに・・・」


 「さあ、行くぞ。魔王ソフィアが死ぬのはもうすぐだ」


 (くそ!このままじゃだめだ!いっそ・・・)


 アデルはイチかバチかやってみることにした。

 本当に小さくつぶやく。


 〈魔弾〉


 するとアデルの口から小さな光の玉が出てきた。

 決して人を殺すような威力は無い。しかし、檻を壊すには十分だった。

 音をたてて壊れた檻を見て人間は慌てて


 「魔物が逃げた!」


 人間たちはまさかと魔物が入っていた檻を見る。

 しかしその檻は壊れていて魔物はいなかった。


 「探せ!魔法が使える魔物は殺さなければ!見つけ次第殺せ!」


 人間は魔物を逃がさないように結界を張った。アデルはギリギリで結界内に閉じ込められてしまった。


 「おい、出てこい魔物!」


 (このまま俺が隠れ切ればソフィアを助けられる?)


 しかし結界内にはほかにも魔物がいる。そのためアデルの敵は人間だけではなかった。

 

 「まだ見つからないか。おい、使い魔を召喚するぞ」


 「ああ。早く片付けなくちゃなあ」


 人間たちの足元に魔方陣が浮かぶ。そしていかつい魔物たちが現れた。


 (これは流石に、勝てない・・・。いや、諦めるな!ソフィアを守るんだろう!)


 しかしそれは叶うことは無かった。魔物がアデルのことを一瞬で見つけたのだ。


 (いつの間に・・・?)


 「全く、迷惑かけさせやがって。これでお別れだ」


 人間が懐から出したナイフを振り上げてアデルにまっすぐ振り下ろす。


 (終わった・・・。ゴメン、ソフィア)


 しかし、一向に痛みが来ることは無かった。代わりに見覚えのある背中が見えた。


 「ソフィア・・・!」


 アデルが驚いてソフィアの名前を呼んだ。しかし、それにこたえることなく人間を見つめる。


 「お前らは誰に手を出している?」


 聞いたことのないような声がソフィアの口から出る。その殺気は禍々しく、「魔王」にふさわしかった。


 「け、穢れた魔王め!この場に現れたことを一生悔いるがいい」


 「それは、こっちのセリフだ」


 そのあとソフィアが何をしたのかアデルには分からなかった。いや、人間たちにも分からなかっただろう。

   地面には驚きと恐怖に染まった顔をした人間の首が落ちていた。

 

 ソフィアはクルリとアデルに向き直った。


 「大丈夫?ケガはない?」


 いつもの調子に戻って話しかけてきたソフィア。


 「あ、ああ・・・。ソフィアこそ大丈夫か?体中に血が・・・」


 「え?ああ、大丈夫。これ、返り血だから」


 顔にべっとりと血をつけながら微笑むソフィアは「化物」だった。

 恐怖でモノが言えなくなったアデルを見てソフィアは


 「やっぱりだめね。私、分からないのよ。どこまでがダメなのか。ごめんなさい。怖い思いをさせてしまったわね。もう、こうやって喋るのも最後にしましょう。あなたを巻き込むわけにはいかないもの。最初から友達なんて望まなければよかった・・・」


 ソフィアはそう言って踵を返す。アデルは辛うじて声を上げた。


 「待って!」


 チラリとアデルを見たソフィアは名残惜しそうに転移した。

 アデルはよろよろと立ち上がると家に向かって帰っていった。


―その日以来、魔王は笑顔を見せることも庭に花を咲かせることもなくなった―


                      *


 「これが、俺の知っているソフィア様の過去です」


 「なるほど・・・とは言えないな。それだけだとお母様が王宮がろくでもない場所だと言った理由が分からない」


 「また、探ってみます。今日は寝ましょう」


 ホレスは釈然としないまま眠りについた。



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