喧嘩
「ホレス様、早く始めちゃってください!」
「そうだな」
ホレスが手を振り上げる。
男たちは目をギュッとつむった。
「なるほど、終わったぞ」
ホレスが声をかける。
「え・・・?」
「頭をいじくりまわすってのは魔法でって意味だ」
「良かった~!」
「お前達の頭は単純だからすぐに記憶を読み取れたよ。【パラスト】がこれから何をするのかも。どうやら大きな計画を練っているようだな」
「俺たちのせいでバレちまった・・・。こんなんじゃ組織に戻れねえ。いっそ殺してくれ」
「俺は人を殺さない」
「頼む!」
「その前に組織が練っている計画について話せ」
「無理だ!俺は組織を売ることなんてできない」
「ホレス様、こいつらを殺してしまいましょう」
「もう一度言うが俺は人は殺さない」
「でも・・・!」
「言い方が悪かったか?俺は人を殺せないんだ!」
ホレスが声を荒げたのがミハエラはショックだった。
「じゃあ、どうするんですか・・・?」
「それは・・・」
「ホレス様、いつも私に指図ばっかりで自分では何もしないじゃないですか!計画も何もないくせ に!」
「っ・・・!悪かったな。これからは一人でやるよ」
ホレスはミハエラから視線をそらして男たちのほうを見た。
「俺はお前たちを殺さない。このまま逃がしてる。頑張って生きろよ」
ホレスはそう言って縄を切った。男たちはホレスを襲おうとせず大人しく帰っていった。
「ホレス様!そんなに敵に甘いといつかホレス様が殺されてしまいますよ!」
「俺なりに考えがあるんだ。安心しろ、お前はもう巻き込まない」
その言葉からは悲しみが感じ取れた。
「帰るぞ」
「・・・はい」
ホレスとミハエラは気まずい雰囲気のまま転移したのだった。
*
「おかえりなさい。どこに行ってたの?」
「いろいろ」
「ホレス、元気ないわよ。何かあった?」
「何も」
「そう。ならいいけど・・・」
ソフィアが心配そうにホレスを見た。