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試験監督

 ドアの開く音がした。

 試験会場に試験監督が入ってきたのだ。

 それと同時に試験会場にいた受験者が全員立ち上がり挨拶をした。

 …一人を除いては。


 「なあ、こんなことして何の意味がある?さっさと試験を始めたいのだが」


 ホレスがよく響く声で言った。…無表情で。

 

 「無礼だぞ!」


 受験者の誰かが言った。それを機にホレスに対する罵倒が試験会場にとびかった。


 「うるさい。試験監督を差し置いてそういうことするほうが失礼じゃないのか?」


 ホレスが机をコツンと叩いた。一瞬放たれた殺気と威圧に誰もが震えた。


 「そろそろいいかの?それでは筆記試験を始める!」


 試験監督が紙を配る。ホレスに配るとき試験監督のうちの一人が耳打ちしてきた。


 「あまり暴れんでくれ」


 「暴れる?なんの話だ?」


 それを聞いた試験監督は苦笑して去っていった。

 ホレスは問題を解き始めた。


 (なんだこの問題。赤ちゃんでも解けるぞ。舐めているのか?)


 決してそういうわけではない。勇者学校は世界で一番難しい学校と言われており、受験者は毎年何万人といるのだが、その中でも100人ほどしか受からない。

 それぐらい難しい試験のはずだがホレスは10分で解けてしまった。


 一時間ほど時間が余ったのでホレスは魔物の姿となったアデルと遊んでいた。

 …透明化したアデルを試験会場にいる人たちにバレずに魔法で打ち落とせるか、というゲームだが。

 アデルは必死に逃げていた。

 

 「そこまで!」


 ようやく筆記試験が終わった。


 「解答用紙を集める」


 魔法で解答用紙を集め、その場で丸付けをする。


 「筆記試験合格者は・・・・・・・」


 名前を呼ばれていく。

 しかしホレスは一向に呼ばれなかった。


 「以上だ」


 (簡単すぎると思ってたんだ。やはりなにかひっかけがあったのか)


 ホレスは落ち込んだ。


 「続いて上位50名を発表する。いまから呼ばれた者たちは前に出ろ。すぐ実技試験を受けてもらう」


 「ホレス=マルティ、リスベツ=クランツ、ティーノ=カルディ ・・・・・」


 50人が呼ばれた。


 「さて、この50人には今から俺の使い魔と戦ってもらう」


 「そんな…」


 誰もが絶望の顔をした。

 ホレスは何でそんな顔ををするのか分からなかった。


 「おい、なんでそんな顔する?彼の使い魔はそんなにヤバいのか?」


 「当たり前のことを聞くなよ!あの人の使い魔は龍なんだぞ!」


 「ふーん」


 (龍ってそんなに凄いのか?まあ様子見だな)


 周りに被害が及ばないように試験監督が結界を張る。

 そして龍を召喚した。


 「ひっ…」


 「はじめ!」


 とりあえず魔法を打つもの、切りかかるもの、使い魔を召喚する者と様々だった。

 ホレスは動かなかった。

 アデルが痺れをきらせて聞いた。

 

 「攻撃しないのですか?」


 「様子を見ている。体を囲んでいる鱗は剣では切り裂けない。貫ける魔法を模索中だったがその必要はなくなったようだ」


 「どういう意味ですか?」


 「龍の様子をよく見ろ」


 「あっ!」


 「さて、可哀そうな龍を助けてあげよう」


 静観していたホレスが動き出した。

 龍が気づく前に龍の顔に乗る。


 「なっ…!」


 誰もが絶句した。

 ホレスは龍に心の中で話しかける。


 [おい、大丈夫か?]


 [逃げてください…!私には…!]


 [おれは大丈夫かと聞いている。それに答えるだけでいい]


 [あなたがこの魔法に気づけたのはいいでしょう。だけどどうやって解くんですか?]


 [俺と使い魔の契約を交わすんだ]


 [誇り高き龍がそんなことをすると思いますか?]

 

 「誇り高き龍が人間ごときの魔法に引っかかって恥ずかしくないのか?]


 [わ、私だってそれは、その…]


 [じゃあ決まりだ。サインしろ]


 龍は人間に服従の魔法にかかってしまったのだ。

 そして使い魔という設定でずっと従い続けてきた。龍を使い魔にしなかったのは龍のほうが強かったからだ。使い魔は召喚主が使い魔より強くないとすぐに殺されてしまう。

 ホレスは自信があった。この龍より自分のほうが強い、と。

 龍もまた、ホレスのことを認めていた。

 だから、サインをした。


 [待ってろ。今、魔法を解いてやる]


 龍が使い魔になったことにより龍への魂の干渉が出来るようになったのだ。


 [解けたぞ]


 [ありがとう。本当にありがとう]


 [よし早速契約を破棄するぞ]

 

 [え?どうして?せっかく私と契約をかわせたのに]


 [魔法は解けたんだし、お前は誇り高き龍なんだろ?俺は他人の意思を尊重するさ]


 […]


 (この人間は本当に欲がないのね。面白い)


 [私は、あなたの使い魔になりたいわ]


 [そうか。それは嬉しい。なら、よろしくな。あともう一人俺の使い魔、アデルがいるから仲良くしろよ]


 アデルが龍を睨んでいた。


 (俺のホレス様だし!ホレス様の使い魔は俺だし!)


 嫉妬だった。


 「しかし、この龍に魔法をかけたのはお前か?」


 ホレスが試験監督を睨む。


 「な、なんのことだ?」


 「龍にかけた魔法は禁忌の魔法だぞ。それを分かっているんだろうな」


 「さあな!」


 (ちっ。転移で逃げられた。あいつ、なかなか強いぞ)


 周りにいた人たちは何が起こったか全くわからずただ口を開けていた。


 *


 薄暗く、殺気が充満した部屋。そこの部屋の奥には大きな椅子が置いてありそこに小さな男の子が座っていた。


 「龍を逃がした?あなたは何をしているのですか?」


 その少年に震えながら跪く試験監督がいた。


 「しかし、ホレスでしたか。その少年には興味がありますねぇ。今すぐその少年について調べなさい。役立たずなあなたには適任でしょう?」


 「はっ!」


 少年は新しい玩具ホレスを見つけてうれしそうに笑うのだった。


 

物語が動き出しました!この後も謎の少年が物語の中でカギになってきます。ぜひ読んでください!

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