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緊張

 「と、いうわけで勇者学校に行くことになったみたいで…」


 アデルがソフィアに説明する。


 「ふぅん」


 (なんだよ「ふぅん」て!気に入らなかったのか?)

 

 「ホレスがそこを選んだんだからそれでいいんじゃない?」


 「しかし、ソフィア様は魔王で、ホレス様が勇者だなんて将来敵対しろと言っているようなものじゃないですか!」


 「それがどうしたのかしら?あの子を拾ったのは、私を殺させるため。ちょうどいい設定じゃない」


 どこがだよ!という言葉を飲み込んでソフィアに聞く。


 「では私は何をすればいいのでしょう?」


 「そうね。今まではホレスのお世話係だったけど学校に行くなら必要ないわね。なら、あの子のお友達になってあげて?使い魔っていう設定。あと私が魔王って秘密にしといてね?面白いし」


 面白いし、という理由だけで人を振り回せるソフィアは流石だろう。


 「では、私はホレス様の使い魔になって、一緒に勇者学校に通います」


 「そうして。定期報告忘れずに、ね?]


 「はい」


 そして逃げるようにしてソフィアの前から消えたのだった。


 *


 「というわけで、ホレス様の使い魔として頑張ります」


 「ん。よろしく」


 さもどうでもいいといったような言い方だった。

 ちなみに使い魔になる、ということは一生を捧げるという大事なことなのだ。


 「では、早速なにか命令を…」


 「じゃあ、勉強の邪魔になるからどっか行って」


 「分かりました」


 (わざとじゃない、わざとじゃない…。けど、クソガキすぎんだよぉ!)


 心の中で文句を言いながら部屋を出た。


 「そういえばアデル、これからもよろしく」


 部屋を出ていく寸前そういう声が聞こえた。


 「まかせてください」


 それに答えるようにぼそりと呟いた。


 *


 「ホレス様!受験当日ですよ!」


 「う~ん。眠い」


 「ですから、受験当日ですってば!間に合いませんよ!」


 「アデル、頑張れ」


 「ホレス様の受験ですってば!」


 布団にしがみついているホレスを引き離そうとしたら普段張っている防御結界に跳ね返された。


 「いい加減にしてください!私もう知りません!」


 それを聞いたホレスはよろよろと起き上がって目をこすりながら


 「ごめんなさい、アデル」


 とつぶやいた。


 (こういうところは普通の子供と変わらないんだよな。だから憎めないんだよ)


 なんだかんだ言ってアデルはホレスの寝起きが好きなのだ。


 「さあ行きますよ」


 ぼさぼさな髪を馬車の中で整えさせる。

 身だしなみが整い、ホレスの目が覚めてきたところで勇者学校に着いた。


 「着きましたよ。さあ行きましょう。どうです?受かりそうですか?」


 「誰に聞いている」


 真顔で言うホレスを見て、だんだんソフィア様に似てきたな、と思ったのだった。


 「さあ、行こうか」


 「え?私は行きませんよ?」


 「来てくれないのか」


 悲しそうな声で言われたので渋々着いていくことにした。

 普段は人の姿をしているアデルだが姿を隠すために元の姿に戻ることにした。


 「あったかい」


 アデルを大事そうに抱えながら試験会場へ向かっていった。

 受付嬢らしい人がホレスに話しかけた。


 「受験番号は?」


 「受験、番号?」


 「紙、持ってないの?受験の紙」


 「ああ、これのこと」


 「そうそれ!ってクチャクチャじゃない」


 ホレスがポケットから出した受験用紙は適当に丸められていたのだ。


 「ま、まあいいわ。ホレス君ね。着いてきて」


 勇者学院はとても広く、きれいだった。


 「試験会場はここ。試験が始まるまで大人しくしといてね」


 そう言ってからまた忙しそうに受付まで戻って行ったのだった。


 「アデル、どうやら俺は緊張しているらしい」


 「そのようですね。とても体が震えていらっしゃる」


 アデルが揺られながら言う。


 (大丈夫かな?)


 アデルは少し心配になった。






 



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