クラス対抗戦 3
アリスは動けなくなった。
「何をしたの?」
「ちょっと魔法を使っただけさ。これでおしまい」
攻撃魔法を躊躇なく当ててくる。
「っ…」
アリスは目をつむる。
同時にホレスに教わったことを思い出す。
―アリスは諦めるのが速すぎる。チャンスを見逃すなよ―
(落ち着いて、まずは防御結界を何重にも張る。魔法の正体は分からなくてもいい。あの魔法を使う!)
アリスは上級魔法のさらに上、特級魔法を行使しようとしていた。
魔方陣を見たイーデンは慌てた。
「で、出来るわけがない。魔力の量も膨大でないとできないし、それを扱える技量もないだろう!」
アリスを覆っていた最後の防御結界が突破されたのと同時にアリスの特級攻撃魔法も放たれた。
特級魔法は周りの音すら飲み込みイーデンへと襲い掛かった。
あと少しでイーデンにあたる…そこで攻撃魔法は消えた。
審判である魔導士が止めに入ったのだ。
このままだとイーデンが死にかねない、そう判断した。よって…
「勝者、2組、アリス=キンバリー!」
アリスはそれを聞いてから倒れこむ。魔力切れだ。
その姿を見ていたホレスは
「やるじゃないか」
そう呟いたのだった。
*
勇者学校の闘技場の観客席。そこではフードを深々と被った怪しい男が2人並んで座っていた。
「準備はできているか?」
「ああ。あいつは今日、ここで、死ぬ」
「そうか。それは楽しみだな」
*
「続いて、毎年1番人気の戦術部門!」
ホレスは自分の500分の1がどれくらいか初戦で試してみた。
ホレスなら普通は数十秒で終わるはずの試合が数分かかった。
「面倒だな」
ホレスはそう言いつつも楽々と勝っていった。
「おい、お前」
そう呼びかけられてホレスは振り向く。
「俺はマールデンだ。お前、昨日、変な奴に絡まれてないか?」
「ん?答えていいのかどうか分らんな」
「クソッ!あいつ、また余計なことしやがって…」
(昨日の連中のことを知っている?まあ、あんまり深く聞いて俺の命が危うくなるのも避けたい)
「もう行っていいか?」
「ああ。すまなかった」
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「さあ、最後の試合となりました。2組のホレス対7組のマールデン!どちらが勝つか全く予測できません。勝利の女神はどちらに微笑むのかっ!」
「始めっ!」
ホレスの実力が500分の1になってようやく一般人の目でも何とか追いつけるレベルになった。
ホレスとマールデンの蹴り合い、殴り合い、それはまるで舞を踊っているかのようで観客たちは見入っていた。
「ホレス、お前は凄いな」
マールデンがそう呟く。
「それを言ったらお前もすごいじゃないか。勇者第一候補なんだろ?大人も瞬殺だとか」
「それは…。いや、いい。この試合が終わってから少し話したいことがあるんだが、いいか?」
「分かった。空けておこう」
「ホレスなら大丈夫だろうって思ってしまうのはなんでなんだろうな」
「俺が強いからじゃないか?」
「ナルシストかよ。雑談はここまでにしといて…本気を出すぞ」
体術部門では原則魔法や武器の使用は禁止されている。本当の力を試されるのだ。
(おかしい。マールデンにはなにか違和感がある)
ホレスが考えている以上に強いのだ。
(そういうことか。俺が力を500分の1しか出せないようにあっちは500倍の力を出せていてもおかしくない)
「まあ問題なし」
ホレスがマールデンの腹にパンチを入れて、試合を終わらせようとしたときホレスとマールデンが立っていた試合会場が爆発した。