おむすび
「ほんとよくがんばったよ。お気に入りのお店ちょっとよってくかい?」
私は彼と小料理屋に立ち寄った。
笑顔も素敵なかわいらしい女将さん。
乾杯。会話もはずみ、お酒もすすんだ。家庭的な料理を次々と出してくれた。
なんて感じのいいお店だろう。こんなに居心地のいいお店は初めてだ。
女将さんの握ったおむすびを食べたら、子供の頃、母が握ってくれたおむすびを思い出して涙が瞳にたまってしまったから、私はあわてて上をむいた。
そんなところを彼に見られてしまって、私は恥ずかしくてあわてた。
「あれ?どうしたの?耳も顔も赤くして。よっちゃったかい?」
彼はそんな私に、ふーふーと息を吹きかけてきた。冗談でよいをさまそうとでもしているようだ。
私は嬉しくて瞳にためていた涙をこぼした。
「もうばかっ!」
私は笑顔で両手をぱたぱたと団扇のようにして、自分の頬を扇いだ。
女将さんは嬉しそうにお茶をだしてくれた。