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龍人の子、陽の元に堕つ  作者: 麗氷柱
第二章 不死の呪いと死なずの少女
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入学早々問題児?④

「――――はーい、それじゃあ皆さん、纏いは出来ましたね?」


 気が付くと、私は陽日院の舞台上に戻っていた。アマハル様が精神世界を出たので、私も現実に引き戻されたのだ。


「あれソウちゃん、纏い出来てないよ?」


 静かに私の耳元でそう言うユハン。しかし私の神通力は、願い事がないと無効になってしまうのだ。…………しかし。


「あれぇ。ヨウさん纏い出来てないじゃん」

 

 話したこともない女子が、ニヤニヤしながら私を見ている。そしてその言葉を皮切りに、ポツポツと馬鹿にしたような笑い声が聞こえてくる。


「ええ、武鞭やってたのに出来ないの?」

「そう言えば、昨日の模擬戦でも負けてたよね」


 この空気、陰キャには応える。

 ――――お前らが困っていても、願い事は絶対に聞いてやらないからな。


「はいはい、お静かに!」

 ここでミウ先生が手を叩く。


「ソウ君は“神統”の神通力を使うので、ここで纏いが出来ないのも、不思議な事ではありませんよ」


 その言葉に騒めきだす一同。ありがとうミウ先生、お陰で胸がスッとしました。


「いいですか? 神統はとても強力な神通力です。五行や特殊陰陽と違って、あまり耳にすることはありませんが、名前だけでもしっかり覚えましょうね」


 お陰で先ほどよりかは静かになったが、しかし中には、まだ納得できていない子供もいるようで、未だに私を睨む様な目線は絶えなかった。


「はえぇ。大神様の神通力って、神統なんだね」

 ――――だがそれでも、ユハンと同じく、目を輝かせる生徒がいるのも事実だ。


「それじゃあ、皆さん纏いも出来たようなので、今から少し神通力を使ってみましょう」


 …………と、それから授業は滞りなく進んだが、ただ見学するだけの私は、この上なく暇な時間となってしまった。


「はい、これで最初の授業を終わりますが、何か分からないことはありますか?」

「ありませーん」


 生徒の返答を聞き、満足そうにうなずくミウ先生。その表情には、どこか感情が籠っていたので安心した。


「それじゃあ、次の授業は種族ごとに別れて行いますので、これから皆さんには、それぞれの先生の所へ行って貰います」


 そう言って彼女は、生徒たちに案内の紙を配るが、しかし龍人の子供達には紙は渡されない。


「龍人族の皆は、休憩が終わったらまたここに戻ってきてくださいね」

 ――なるほど、龍人族はここでやるのか。


「それじゃあ、皆さんお疲れさまでした」

「有難うございました!」


 私たち一年生はそう言ってお辞儀をした後、風に吹かれたタンポポの綿毛の如く、足早に散開した。


「――――二人共どうだった!? 神通力の授業は」


 ユキメ組から戻って来たヒスイは、興奮冷めぬと言った様子で息を荒げる。初めて神通力を使った時の私も、確かにこんな感じだったのかもしれない。


「はへぇ。こんなに神通力を使ったのは初めてだったから、ちょっと疲れたよぉ」

「だね。まあ、私は見てただけだけど」


 ――――対するミウクラスの私たちは、特に目新しい事もやらなかったため、ただただ疲労を感じていた。


「ねえねえ! 二人はどんな神通力を使うの!?」


 まるで話を聞いていないヒスイは、お風呂以上の興奮を私たち見せる、これは文句なしに可愛らしく感じる。


「わえは縁切りの神様だよ」

「私は所願成就の神様だよ」


 ユハンの神通力は縁切り。物騒なご利益だが、私もよく分かっていない。聞けば相手の心に影響を及ぼす神通力のようだが、その真意はいかに。


「縁切りって、物騒な名前ね。…………っていうか所願成就って、どんな神様と契約したの?」

「ソウちゃんはね、天陽大神さまの神使なんだよ」

「天陽大神って…………。太陽神じゃない!」


 龍人族の子らは知っている者も多いが、他の種族はまだこの事実を知らない。故にヒスイはここまで驚いているのだ。


「嘘! なんでそんな神様と契りを交わせたの!?」


 目を輝かせるヒスイ。その様子を見て、私は心の底から安心した。この事を良く思っていない連中も多いからだ。


「成り行きで?」

「成り行きって、今まで大神様と契約した神使はいなかったのよ!?」

「あはは。なんでだろ」


 この類の質問は、この三十年間で耳にタコができるほど聞かれてきた。それでもヒスイの質問攻めは、その後も何分か続く…………。


「――――ところでヒスイは、どんな神通力なの?」

「私はね…………」


 えっへんっと息を吐き、胸を張ってヒスイは答える。


「お酒の神様よ!」

「酒!?」


 おいおい、なんだ酒の神様って。それにこんな小さな女の子と契りを交わすなんて、嫌らしすぎるだろ!


「ヒスイ、その神様に変な事されなかった!? 何かあったら私に言うんだよ?」

「…………え。いや、大丈夫だけど」


 彼女の肩を掴んで声を張ると、ヒスイはドン引きした様子で顔を引きつらせる。


「まだ未成年なんだから、お酒なんて飲んじゃダメだからね!」

「の、飲まないわよ。っていうか、私の神通力は相手を酔わせるものなの」

「――――誰かを酔わせるですって!?」


 それで世の男どもを骨抜きにするって事か、恐ろしい子ッ!


「いい? 変な男には引っかからないようにね」

「ソウ、さっきから何言ってるのか分かんないんだけど……」

「……ごめん、ただ気を付けてって話」


 そんなこんなで、たった十分ほどの休憩はあっという間に過ぎ去っていった。

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