入学早々問題児?②
説教も終わり、私達は学長舎を出てすぐ、頂院に降りる浮かぶ石床に乗りながら、長いため息を吐きつくす。
「はああああ。生きた心地がしなかった」
「…………全くよ」
「ふぇぇぇぇ。でも退学にならなくて良かったよッ」
「いてててて!」
いきなり抱き着いて来るユハン。その衝撃に腹部の傷が痛むが、今はそれすら問題にならない程、清々しい気持ちだ。
「ふぁっ、ごめんソウちゃん大丈夫?」
「あはは、大丈夫」
「でも不思議よね、一体誰が結界を二重に…………」
ヒスイは石床からの風光明媚を楽しむことすらせず、ひたすら顎に手を添えて考えている。まあ、私が気に食わないやつの仕業だと思うが。
「ところで、次の授業って何だっけ?」
ふと私は気になり、彼女らに問う。
「確か、昨日の門分け試験の結果発表じゃなかったっけ?」
ユハンの言葉に、私とヒスイの顔から血の気が引く。
「ヤバ! 鐘ってもう鳴ったっけ?」
「え、え、分かんないわよ!」
「…………え? さっき鳴ってたよ?」
そうして私たちは、二限の授業に少し遅れて合流することとなり、大広間では一年生の冷笑を浴びながら、三人仲良く先生に謝罪をした。
「…………さてそれでは、昨日の適正考査の結果を発表する」
教師用の黒羽織を着ているオッキュ先生。しかし着物の色も暗めなので、まさに全身真っ黒ファッションだ。
そんな彼は、大広間に集まった新入生の前で、ミウ先生、ニライ先生の代表として話を続ける。
「まず、諸君らには三色の紙が配られる。朱ならトンウー先生。黒ならコウドウ先生。黄なら小生の門下生となる」
その言葉と同時に、蝶々のように空を舞い始める小さな紙。見た感じ三色の紙の量は均等なので、上手い事分けられた様だ。
「はあぁぁ、ソッ、ソウちゃん」
隣を見ると、ユハンの手元には真っ赤な紙。
「おお、ミウ先生だ!」
――――昨日の模擬戦、ユハンは新入生の誰よりも、相手から鮮やかに一本を勝ち取ったと聞いた。神通力が効いたのか、それとも彼女の実力かは分からないが、とにかく良かった。
「あああ! ソウちゃん、ソウちゃん!」
「痛い痛い痛い!」
これでもかと言うほど、私の肩を強く叩くユハン。しかし彼女は私の方を一切見ず、朧げに舞う紙を眺めていた。
「赤色だよ! ソウちゃんも赤色だ」
ひらひらと舞い降り、私の手の中に納まる朱い紙。その紙には小さく「おめでとう」と書かれている。
「やった! でも、私負けたのに」
――まあこの際だ、細かいことはどうでもいい。
「ヒスイちゃんは?」
生徒たちの喜び、落胆の声がオーロラソースを作る中、私達はヒスイの手元を見る。
「もちろん、私も朱色よ」
きた、これで私たちは同じ門下だ!
「――――皆さん、お静かに」
オッキュ先生が声を張る。しかしそれでも、声量は普段とあまり変わらない大きさだ。これで静まるわけがない。
「静かにぃぃッッ! しろぉぉぉおッ!」
大広間の中をビリビリと駆け抜ける轟音。最後尾に座っていた私達ですら耳を塞ぐほどだ。
「……感謝します、コウドウ先生」
片耳を抑えながら、眉間にシワを寄せてお礼を言うオッキュ先生。その隣では、ミウ先生がもの凄い形相でニライ先生を睨んでいる。
「ガハハハハハ! ちいっとうるさかったか!?」
たくましい図体を持つニライ先生。身長は二メートルほどだが、その図体はサカマキといい勝負だ。
「それでは皆さん、これから紙に書かれた場所へと向かってください」
終始笑顔を見せず、ぶっきらぼうな表情のまま、オッキュ先生は話を終わらせた。
――そう言えば昨日の模擬戦、オッキュ先生も見に来てたっけ?
「ねえ、あたし達は陽日院らしいわよ」
「え、どこに書いてある?」
ふと手元の紙を見ると、“おめでとう"の文字が消え、次は”陽日院、第三舞台”という文字が浮かび上がる。
「はえぇ。第三舞台ってすごい遠かった気がする」
「……勘弁。朝のひと悶着で疲れてるんだよなあ」
「いや、私たちの方が大変だったんだからね」
などと言いながらも、私たちは取り留めのない話で笑いながら、のんびり陽日院まで歩いたのだった。




