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龍人の子、陽の元に堕つ  作者: 麗氷柱
第二章 不死の呪いと死なずの少女
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榮鳳官学入門 少女よ、大志を抱け③


「すっげえ可愛くなかった? エト先生!」

「な! やっぱ龍人族って綺麗な人が多いんだな」


 テンションが上がりまくる男子たち。ユキメに加え、ミウ先生も美人と来た。私も男だったら間違いなく舞い上がっていただろう。


「では、新入生には榮鳳官学の大まかな行事を説明しますね」


 そう言ってズイエン学長は大きな布を宙に浮かせた。その年季の入った垂れ幕の様な布には、なにやら滲んだ文字がびっしりと書き込まれている。


「まずあなた達が一番最初に行うのが、門分けです」


 ――――クラス分けって事か? 意外と在り来たりだな。


「門分けとは、あなた達一人一人の適性を計って、各々に合った門下に入ってもらう単純なものです」


 ズイエンは長い木の棒を使い、丁寧かつざっくりと説明をする。そしてキューのような棒は次の項目へ移る。


「そして次が、二年後に控えた競闘遊戯会きそいあそびです」

「競い遊び? なんだそれ」


 聞いたことの無い行事に思わず言葉が出てしまう。だがそれもズイエンが説明する。


「これは全学年対抗で行なう行事で、皆さんがこれまでに培った“武”で競い合う伝統ある行事です」


 ――武で競い合う……。運動会みたいなものか?


「これは三組に分かれて行うので、皆さんも今隣にいる人と戦う事になるかもしれません。ですが、これは由緒正しき行事です。くれぐれも馬鹿な真似はしないでくださいね」


 彼女はシワの目立つ口を酸っぱくして体裁を保つが、それでもどこか熱が入った様に目を輝かせる。

 

「もちろん規定を破る生徒には、しっかりとお仕置きが待っていますので。気を付けてくださいね」

「はーい」


 全員が声をそろえる。どうやら大半の一年はこれを楽しみにしている様だ。


「それからもいくつか行事はありますが、あと紹介すべき大きな行事は榮鳳祭えいほうさいですね」


 ――――まさか。これはいわゆる文化祭と言うやつなのでは!


「これは、この学校を創立した神々お祭りする行事です。夜遅くまで執り行われますが、決して羽目は外さぬように」


 来た来た来た! 私が夢にまで見た共学の文化祭! これは楽しみすぎる!

 そうして、発売前のゲームを待ちかねるような気分を味わいながら、次々と説明される学校行事に、私はさらに胸を高鳴らせる。


「…………とまあ、これくらいですね。残りを全部説明していると一日が終わってしまうので、あとは各自先生方に聞いてください」


 説明が始まって十分ほど経ち、横断幕のような布にはまだまだ文字が羅列しているが、彼女は一息吐いてここで説明を終わらせた。


「さあ、それでは皆さん。この榮鳳官学での六十年を、一生に残るような良いものにしましょうね。それじゃあシロギ。あとはお願いしますね」


 おおお。ワクワクさせてくれぜ!


「頑張ろうねウヅキ」

「もちろんだよ」


 そうして私たちは一つの熱い気持ちを抑えながら、副学長シロギの次の言葉を待つ。


「……はぁい、皆さんお静かにい」


 しかし煮えたぎるような私たちとは裏腹に、シロギ副学長は相変わらずの呆け面で手を叩く。


「それじゃあ、新入生の君たちには、一年生の証であるだいだい色の羽織を着てもらう」


 そう言ってシロギは一枚の羽織を放り、それを宙に浮かせる。やはり学年ごとに羽織の色は別らしい。


「先ずはお前からだ。龍人ソウ・ヨウ」


 宙に浮いた羽織が私の元へと飛んでくる。なぜ私が一番なのか分からないが、その一枚は私の眼前で滞空。


「え、私から?」

「ああ。お前は今回の入学試験を首席で合格している。そういった生徒には、代々特別な羽織が渡されるんだ」


 騒めきだす一年たち。実際私も、自分が首席で入学試験をクリアしていた事実を今知ったのだ。


「え! あなたが首席だったの?」


 絵に描いたように驚くヒスイ。それどころか他の生徒たちも皆一様に同じ表情をしている。


「流石ソウ様。やっぱ凄いよ」

「はえぇ。ソウちゃん頭いいんだねえ」


 ――まあそれもそうかもしれない。何せ私は、現代の名門高校に滑り込みセーフで合格するほどの努力家なのだから。


「ま、まあねえ!」


 ニヤけずにはいられない。そもそもこの官学の入学試験は、例えるなら中学生の低学年レベル。武鞭のおかげで、実技テストも楽勝だった。


 しかし思い出す。――確かに入学試験は楽だったが、その際不正を働いた私には、キツイ追加試験があったのだから。

 …………あのお爺ちゃん試験官は、今頃どうしているのだろうか。


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