榮鳳官学入門 少女よ、大志を抱け②
――新鮮味ナシ! そもそも何でカナビコがこんな所に?
「そしてもう一人、天千陽から来てくださったユキメ・エト先生です」
ユキメェェ! “直ぐ会えますよ"って言ってたけど、別れてからまだ二時間も経ってないよ!?
「ねえねえ凄くない!?」
「めっちゃ美人だよあの先生」
「男の先生、天界からの神様だって!」
凄まじい盛り上がりを見せる場内。女子はハートを輝かせ、男子は眼を輝かせている。
「それではお二方、簡単に自己紹介をお願いします」
何食わぬ顔で空いていた座布団に座る二人。しかし、明らかに強い意志を持ってこの官学に来ていることは明確だった。
「紹介に預かりました、奏比古命と申す。何ぶん勉学の指南をするのはこの度が初めての事ゆえ、分からぬことも多く、物足りない部分もありますが、精を尽くす次第でありますので、どうぞ宜しくお願いします」
私の方は一切見る事もせず、淡々と言葉を発するカナビコ。果たして何を目的にこの学校に来たのだろうか。
「はい。有難うカナビコ」
――――呼び捨て? 知り合いなのか?
「ちなみに彼とは一緒に仕事をしたことがある仲で、とても優しい神様なので、皆さんも遠慮せずどんどん頼ってくださいね」
仕事仲間? なんだろう、カナビコが転職したとか? 神様なのに?
他の生徒がやんややんや言っている中、恐らく唯一私だけが心に不安を募らせている。
「それじゃあ、次、ユキメ先生お願いします」
「はい」
一瞬にして静まり返る生徒たち。そして主に男子たちがユキメの凛とした姿に釘付けになっている。言わずもがな、男教師もだ。
「この度、この榮鳳官学で皆さんを教える事になりましたエトと申します。皆さんはエト先生と呼んでください」
彼女はそのまま一礼して席に戻った。正直あの別れの涙を返してほしい物だ。とてもじゃないが彼女の眼を見られない。
「はい、ありがとうございました。ちなみにこのユキメ先生は榮鳳官学の卒業生なので、皆さんも安心して彼女に教えを乞うてくださいね」
――――え、そうだったのか。
「ねえ。あの龍人の先生、ユハンとソウは知ってるの?」
男子が鼻の下を伸ばす中、ヒスイまでもが、興味尽きぬと言った感じで私たちを交互に見る。
「わえは知らないなあ。ソウちゃんは」
「ええ? 知らないなあ」
咄嗟に私は嘘をついてしまった。何故だかは分からない。ただここは嘘をついて免れたかった。
「え? でもソウ様のお付き…………」
ここでウヅキが不思議そうな目で私の顔を覗き込んだ。だから私はその口を押え込む。
「ウヅキ大丈夫? 顔色が悪いよ?」
「ち、ちょっとっ。ウヅキ君が苦しそうだよ」
私の手を叩くウヅキを見て、ヒスイが声を抑えて仰天する。突然飛び出して来たヘビでも見たかのような表情で。
「ああっ、ごめんごめん。その白さは生まれつきだったね」
「あはは…………」
引きつった笑みで笑うユハン。――――ごめんね。普段の私はこんなんじゃないんだ。
「はいはい! お静かに!」
学長ズイエンが三回手を叩き、瞬時にして場内を黙らせた。流石は学長、手慣れたものだ。
「それじゃあ、これにて新入生の歓迎会を終わります。一年生はここに残って、他の者たちは各自講義に戻ってください」
約一時間。他の新入生からしたら、これからの学園生活に希望を持てる会になったのだろうが、私は内心穏やかではなかった。




