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龍人の子、陽の元に堕つ  作者: 麗氷柱
第二章 不死の呪いと死なずの少女
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0話 最恐の神は誰だ!?

即眠安(安らかに眠れ)星裏腹似(星の腹の中で)


 地を見下す星津皇。


 ――――しかし次の瞬間、彼は見下ろしていた筈の地の中で目覚めた。


「随分楽しそうにやってくれたなあ」


なんだ…………?」


 全身を襲う激痛に耐えながら、やっとの思いで顔を上げる星津皇。そしてその目に映るは光り輝く一貴の女神。


「…………太陽皇(太陽神)?」


「ほう。うぬの様な下郎にも、余の貴さが分かるのか?」


 立ち上がろうとする星津皇。しかし彼の体内は既に粉砕されており、最早立つことさえも出来ずにいた。


流星(流れ星)……ッ」


 オクダカを貫いた一閃が天陽アマハルの頭上に降りかかる。


 その大地が隆起するほどの衝撃。それは先ほどの物よりはるかに高威力だった。

 ――――しかし。


「あははは、甘い甘い。小惑星ごときがさえずるなど笑止千万」


 バスケットボールほどの岩石を、彼女は片手で受け止めていた。

 

 ――――圧倒的格差。その光景を目の当たりにした星津皇は、塵ほどの戦意も残さずに、そのまま意識を失い地面に伏せた。


「お疲れサマー」


 そう言って彼女はオクダカとカナビコが堕ちた方向へ視線を移す。彼女の興味はすでに星津皇には残っていない。


「しまった。あいつらから大分離れた所に落としちゃったな」


 そうして彼女は星津皇を宙に浮かせ、彼らの元へと向かうべく姿を消した。



 ――――カナビコは墜落する直前、星津皇にやられた傷によって意識を失っていた。


「……オク、ダカ」


 目を覚ますと、そこには見慣れた巨体が目一杯に広がる。


「目を覚ましたかッ!」


「サカマキか?」


「ああ! 私がお主らを受け止めたのだ!」


 カナビコとオクダカは、どうやら落下寸前にサカマキにキャッチされていたようだった。


「オクダカは!」


 傷を庇いながらも、自分より遥かに重症なオクダカの身を案じる翁。しかしその心配は無用だった。


「案ずるな! オクダカの傷は既に塞いだ!」


 その言葉に大きくため息を吐きながら、カナビコは起こした上体をそのまま寝かせる。


「お主の傷も今から治療するぞッ!」


「……頼んだ」


「任せろ!」


 周りに茂っていた草草がカナビコノ身体に向かって伸びてくる。その蛇のように迫るツルや草は彼の身体に纏わりつくと、その上体をぐるぐるに包んでしまった。


「あーあー。我が先鉾の二柱が、なんたる失態ぞ」


 眩い閃光と共に現れた天陽。彼女は到着するや否や、連れてきた星津皇を降ろしてそう言い放った。


「申し訳ございませぬ。大御神」


 身体を起こしたくとも、植物の力に押し負け思うように上体を起こせないカナビコ。


「そのままでよい。それより、オクダカはどこじゃ?」


「ここにおります!」


 サカマキの指す方向を見ると、そこには頭のてっぺんから足のつま先までを植物に包み込まれた哀れなオクダカの姿があった。


「アッハハハハ! 無様ッ。最強の剣神が聞いてあきれるわ。はあっはっは!」


 腹を抱えて笑うアマハル。とても上品とは言えない。


「あはは。……はあ。ところでお前ら、無許可で神の誅伐ちゅうばつに出たな」


 ひとしきり笑って深い溜め息を吐くと、彼女はゴミを見るような眼差しでその言葉を吐いた。


「い、いえ! ワシらはただ威力偵察に出ただけでっ…………、だから」


 子供の様に目を右左させるカナビコ。誰が見てもウソをついていることは瞭然だ。


「ほう。明らかに敵わぬ相手と面したのに、それでも退却しなかったのはどう説明するつもりじゃ?」


 太陽の神から向けられる、一筋の光も宿っていない冷たい眼差し。これを目の前にすると、誰もが太陽に嫌われまいと正直者になる。


「我が君、これは私の責任にございます。オクダカの退却の提案を無視し、わしが勝手に交戦しました。どんな罰も受け入れる次第でございます」


「じゃあお前、10年間榮鳳官学えいほうかんがくで教鞭取ってこい」


 その言葉を聞いた瞬間、真っ青だったカナビコの顔が、さらに死人同然の白さを作り出した。


「えっ、榮鳳官学ですと! 別の学院では駄目なのですか!?」


 もはや傷の痛みなどどうという事はないといった様子で、カナビコは怯えた子犬の様な目をアマハルに向ける。


「だーめ」


 とても太陽神とは言い難い妖しい笑みを浮かべる大神。


「我が可愛い神使が、今年あの官学に入学するのだ。だからお前に支えて欲しい」


蒼陽姫命ソウヨウヒメノミコトが、あの官学に?」


「そ。兄妹そろって名門に就学だ。あの家の女官は相当優秀と見える」


 脳内にぼんやりと浮かぶ人物を思いだそうと、アマハルは空を見上げる。


「なんて名前だっけなあ。あの龍人……」


「ユキメ殿ですか?」


 カナビコが思い当たる名前を出すと、アマハルは気持ちよさそうに指を弾いた。


「そう! ユキメだユキメ。あの美人ちゃん」


 歯に挟まった食べ物が取れたかのような表情のアマハル。しかし話は大きく逸れていた。


「――――で、何の話だっけ」


「ワシが榮鳳官学で教鞭を取る話にござる」


「そうそう。そういう訳でよろしくね」


 そこまで言うと、アマハルは再び星津皇を宙に浮かせ天界に帰ろうとする。しかしカナビコがそれを止めた。


「大御神!」


 まだ何かあるのか。と言わんばかりの表情で振り返る。


「なんじゃ」


「その者は一体、何者ですか?」

 

 口から絶えず血を垂らし続ける星津皇。


 自身を死の一歩手前まで追い詰めたその強敵に、カナビコの興味は尽きなかった。


「こ奴は天よりも遥かに天の世から降った神じゃ。大方、自らの星と共に堕ちてきたのじゃろ」


「それはどういう事にございますか?」


「まあ、我が妹や余に似たような性質の神じゃな。お主では到底敵わぬ神だ」


 これまで知る由もなかった存在を知り、カナビコはこの時初めて恐怖心というものをその身に感じたのであった。


 そして、自身が一番に苦手とする一柱がいる学院に遣わされる事実を、彼はズタボロの身で重く受け止めた。


 


 お久しぶりです。


 0話は第二章のプロローグです。ですが、本編はまだ執筆途中で、投稿できるのは5月下旬ごろになります。


 そして、大ッ変ありがたいことに、ブックマーク者数が20名様を超えました!

 本当にありがとうございます!



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