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龍人の子、陽の元に堕つ  作者: 麗氷柱
第二章 不死の呪いと死なずの少女
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0話 最強の神は誰だ! 2

 アホの癖に漢文を使ってしまいました。触れるのは高校生以来なので、多分(いや絶対)間違いだらけの漢文です。


 もし漢文に詳しい方がおられましたら、是非ともアドバイス頂けると恐縮でございます。

 信号が赤に変わるように現れた一つの気配。


 しかしそれは、台風も一吹きで消せるほど、雷雲を綿菓子のように喰らうほど、遥か上位に位置する存在だった。


「我、申名星津皇(名を星つ神と申す)汝名何申(汝ら名を何と申す)?」


 目の前に浮かぶ細身の男神。しかし髪は後ろで結っており、その出で立ちは女と見間違えても可笑しくは無いほど美しい。


「おい。カナビコ……」


 尋常ならざる雰囲気。一見すればただの一柱だが、彼から漂う気配は、たった一柱が放つにはあまりにも大きすぎた。


「――――こんな国つ神がいたのに黙ってたのかよ?」


 初めて対する相手。強者という言葉に収まるのかすら怪しい“敵"を前に、オクダカの闘争心は陰り始めていた。


「……此奴は国つ神ではない」


「どういうことだ?」


 星津皇ほしつかみと名乗る男神。二柱は彼から一切目を離せずにいた。それは美しい物を見る目ではなく、ただただ不気味な異形を見るような目である。


言名(名を言え)


 柔らかい声。女の様な中性的な顔立ち。髪はこの世の何とも言い難い色をしており、瞳はただただ闇を映している。


「恐らくこの世の神ではない」


「さっきからブツブツと。はっきり言え」


 ――――気づけば二柱は刀を抜いていた。オクダカならまだしも、カナビコですら今では柄に汗を吸わせている。


「分からぬのだ」


「はぁ!?」


「此奴の力量を計れぬ!」


 初めて見るカナビコの焦燥。オクダカは一瞬だけ彼に目をやるが、その一瞬が星津皇から目を離せる彼の限界だった。


「クソ! 一旦退いてクサバナを連れてくるか」


 オクダカの一言。しかしその一言がカナビコの競争心に火をつけた。


「いや、こいつはワシらでやるぞ」


「本当に大丈夫か? たった二柱で」


 天陽直属の護衛。恐らく天都最強の二柱。しかしそれを加味しても、オクダカはこの神を前にして物足りぬと肌で感じ取った。


「危険すぎる。ここでるぞ」


 言葉は返さず、ただ深い呼吸だけを一回。これから何が起きるのかも分からず、オクダカはただただ身体を強張らせた。


豈不(なんと)不己知哉(身の程知らずか)


 星津皇から発せられた言葉。心臓の芯にまで染み入るような貴さがあるが、しかしその声は、彼らの後方から突き刺さった。


(後ろ……ッ?)


 オクダカとカナビコは瞬時に距離を取る。あと少しでも反応が遅れていれば、間違いなく首を撥ねられていたと汗を流しながら。


「電光石火ッ! 檑斬りらいぎり


 最早後ろを取ることは不要だった。それ故に、行うべきは真正面からの全力を乗せた一太刀。


 ――雷光の如く速さで距離を詰め、まさに稲妻の如し赫々かっかくたる斬撃。


「届かねえ!」


 しかしそれは星津皇の神霊に一歩及ばず、放たれた一振りはあっさりと星津皇の掌によって止められた。


疾風はやて!」


 間髪入れずカナビコが攻撃を加える。


 剣先から生まれた微風。それは辺りの空気を巻き込み、巨大な斬撃となって星津皇をオクダカごと一刀で断つ。


 ――――しかしオクダカはこれを電光石火で回避。これを分かっていたからこそ、カナビコも臆せず攻撃を行えたのである。


「効いたのか?」


 翁の斬撃がヒットし、星津皇の腹部からは夥しいほどの煙が上がっている。


汝、果武大器為(やはり武に明るい者達)


「まるで効いておらぬな……」


 プライドが傷つく翁カナビコ。それでもまだ、彼らは全力を出していない。


界雷かいらい!」


 突如として蒼い天空に立ち込める鉛色の雷雲。その分厚い積乱雲の中で、龍の如く渦を巻くは黄色い稲妻。


「本気じゃな。オクダカ」


「じゃねえと無理だろ!」


 ゴロゴロと重低音を響かせる曇天。その一瞬、まさに天が造りし黄金の龍が星津皇に食らいつく。


 爆音、そして閃光。それらを間近で喰らえば、どんな者でも本能が叫び怖気づいてしまう。……しかしそれはあくまで、それを知っている者だけの話である。


不効(効かぬ)


 黒煙をその身体から立ち昇らせるも、星津皇はまるで健全そのものだった。


「雷は同じ場所に落ちないって言うよな? あれは嘘だ」

 

 ――――ドカン。その轟音と電光が連続して天から降る。そしてそれらは全て、悉く星津皇の頭上に落ちた。


 何度も繰り返される落雷。バリバリと空を切り裂く音。まさに天の怒りを具現化したような様である。


「流石に何度も当たりゃあ効くだろ!」


 笑みを浮かべ、稲妻を落とし続けるオクダカ。しかしそれらが止んだ時、彼の表情から余裕は消えていた。


「…………おいおい」


 髪の毛一本、そして衣の端すら欠ける事なく、星津皇はただそこに立っている。


「致し方なし。()()を使うぞ」


 その言葉に思わずカナビコを見るオクダカ。


「マジでやんのか? まだ実戦で使った事ねえだろ」


「むしろこういう時にしか使わんじゃろ。界雷はそのままにしておけ」


 息を呑む剣神。しかしそれに構わず、カナビコは自らの刀を天高く掲げ、小さく円を描くように剣先を回し始める。


 ――――すると次第に、天を埋め尽くすほどの雷雲が、まさに台風のように渦を巻き始めた。


神 風かみかぜ


 降り注ぐ大雨たいう。吹き荒れる暴風。それは彼らの戦場のみならず、地上でもその効果を発揮していた。


 草木は反り返り、海は荒れ、山からは土砂が流れて大地を飲み込む。


「これ後で絶対怒られるだろ!」


「天つ神の恐ろしさを知らしめ、一石二鳥じゃろ」


 ――――言い表すなら、まさしく地獄という言葉が的確だった。


 遥か上空まで突き上げられた超巨大積乱雲。ひょうが落ち、竜巻が地面を削り、災害級の落雷が絶えず轟音を響かせる。


「武で伏せるなって言ったのは誰だよ!」


「それはそれじゃ。儂に雷を落とすなよ!」


 吹き荒れる雷雨。その場にとどまる事すら困難な突風。しかしカナビコとオクダカの頭上からは光が差していた。


「当てにするなよ。多分この神生じんせいで一番の大技だ」


 幾本も落ち続けていた雷が、積乱雲の中で一つの巨大エネルギーを生成する。それは雲の中で爆発が起きているかのような光景だ。


花 雷からい


 天に咲き誇る広大な雷雲。その下を一本のイカズチが奔る。――――その様は、まさに大地に根を張る巨大な一輪であった。


「大丈夫か!?」


「少し痺れるが問題は無い! 星津皇はどうじゃ!」


 二柱は残った電撃が散るのを待つ。あまりの大きさ故、稲妻が走った後も数本の雷が後を追うように落ち続けていたのだ。


「見えねえ。一旦雷を退かせる」


 そうして雷が止み、空を埋め尽くしていた曇天から陽が差し始める。…………しかし。


我星其物也(私は星その物)故我不滅也(故に私は滅びず)


 太陽の光がスポットライトの様に星津皇を照らす。奇しくもその光景は、二柱の目に神々しさを焼きつけさせた。


「…………無理だ。敵わねえ」


 言葉を失うカナビコ。もうプライドがどうこうという問題ではなくなった。


流星(流れ星)


 ――――刹那、天空から一筋の光が降り注ぐ。だがそれは光などと生易しい物ではない。


「オクダカッ!」


 小さな紙風船ほどの石つぶて。それは目にも留まらぬ速さでオクダカの腹部を貫いた。


「…………早」


 頭を地に向け、真っ逆さまに堕ちる剣神。カナビコはすぐさま救助に向かうが、星津皇はそれをさせない。


 オクダカを追うカナビコの顔面に蹴りを入れる星津皇。そうしてカナビコを遥か上空へ蹴り上げると、今度は腹部目掛けて踵を落とす。


「受けきれぬ……ッ」


 血反吐を吹く翁。神通力を使いすぎたが故に、彼には体力がほとんど残っていなかった。


 ――――それでもオクダカを助けようとする意志は潰えていない。


 彼は姿を風に変え、蹴り落とされた速度を活かしてオクダカをキャッチした。


「返事をしろオクダカ!」


 剣神を抱えたまま落下するカナビコ。彼はオクダカの意識に呼び掛け続けるが、しかし返事は無い。


「オクダカ! しっかりしろオクダカッ!」


 そうして二柱の神はそのまま地に墜落。その衝撃音は、何里も離れた土地にまで響き渡った。


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