表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍人の子、陽の元に堕つ  作者: 麗氷柱
第一章 八柱の姫君
5/202

転生

龍文書―四


ヨウ家:主人公ソウが産まれた家。父のコウは気が強く、図体が大きい。母のリンは常に困り顔で、かなりの心配症。




 まてまて。ここで状況を整理しよう。

 ――――まず1つ目、悔しい事に私は和風の異世界に転生してしまった。2つ目、頭には角、口からは火炎。見れば分かる、私は人間じゃない。そして3つ目。これが今一番どうしようもない問題だ。お腹空いた。

 

 さて、どうやってこの耐え難い空腹をママパパに伝えよう。……まあ。ここは赤ちゃんらしく泣いてみるか。


「お、おぎゃ。……おぎゃ、あ」


 ――――カポーン。

 中庭の獅子脅しが、一拍おくようにベストなタイミングで鳴り響く。

 

 は、恥ずかしいぃ。何で記憶引き継いでるんだよ。体は0歳でも心は十六だぞ!


「あらまあ。どうしたのかしら」


 産後で疲れ果てた表情をしているが、お母さんはすぐさま私の鳴き声に気付く。聞こえていないと思っていたが流石は母親だ。


「もう一回、高い高いしてほしいのかの」


 お父さん、あんたは育児を勉強しろ。あとその立派なあご髭、燃やしちゃってごめんね。


「おぎゃあッ!」


 ――――こうなりゃヤケだ。命に関わる問題、恥ずかしがってはいられない。何事も全力で楽しむ。それが私のモットーだ。


「おっぎゃあッ!」

「リン様。恐らくソウ様は、お腹が空いているのかと思われます」


 巫女姿の若い女が、片膝をついてお母さんに言う。

 ……私の両親、偉い人なのかな。というかよく気付いた巫女。グッジョブ!


「あら、そうだったのね。流石だわユキメ。やはりこの子の教育もあなたに任せようかしら」


 おいおいマジか。この齢にして世話役が付くのか。ビバ金持ち! ありがとう閻魔様。あんた悪い奴じゃなかったよ。


「そ、それは勿体のうお言葉。身に余る光栄でございます!」


 苦しゅうない、苦しゅうないぞ。


「ふむ。ユキメであれば俺も安心できる。何て言ったって、あの腑抜けた長男坊ですら、今や俺を超える天才となったのだからな」


 長男? 私にお兄ちゃんがいるのか。しかしこの美形夫婦から生まれたんだ。さぞイケメンなんだろうなあ。ふふふ。


「恐れ入ります。コウ様にそう言っていただけるのであれば、このユキメ、骨身も惜しまず励むことが出来まする」


 頭を深々と下げ、私の両親への忠誠を態度で示す巫女。私は大して偉いこともしていないが、これはこれで面白い。


「うむ。ソウの事もよろしく頼む」

「は。お任せくださいませ」

「しかし、フウの様に何度も家出しなければ良いのだが」

「問題ありません。どうかご安心ください」


 父親と何やら神妙に話す侍女ユキメ。少々物騒な話に聞こえなくもないが、まあ正直そこまででもないでしょ。と私は楽観視する。


 その証拠に、お母さんも着物の袖を口に当てて笑っている。しかし、本当にドラマみたいな笑い方をするんだな。


 ――――と、そんなこんなで、私の異世界物語は幕を開けることとなるのだが、正直モチベーションは上がらない。その訳を話すと、ここまでの出来事は全て、今から三十年前のお話だからだ。


 現在のあたし。名前はソウ。苗字はヨウ。年齢は三十歳。精神年齢は四十六歳。しかし間違えないで欲しい。私はまだ、ぴちぴちの幼女だ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ