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龍人の子、陽の元に堕つ  作者: 麗氷柱
第一章 八柱の姫君
42/202

七つの墓にはお供え物が無い

龍文書―41


【神の墓】:神に寿命はないが、不死身でもない。どんな形であれ、供養しないと祟られる。

「これは、無縁墓でしょうか」


 “奥津城おくつき”とだけ彫られた墓石。その雨ざらしの墓は七つ分あり、どれも雑に設置されたように見える。


「供養してくれる人がいないって事?」

「そうです。しかしいくら無縁でも、もう少し綺麗にされているものですが」


 寂しそうに佇む石柱。お供え物も無ければ、線香を立てる台も無い。ここに眠る者達は、よほど愛されていなかったのだろう。


「しかし! 墓があるという事は! この近辺に誰かがいるやもしれませぬ!」

「でもお供え物も花も無いんだよ? こんな、いつ建てられたのかも分からないんじゃ…………」

「――――ご覧ください!」


 私の言葉を遮ったサカマキが、向かって一番左にある墓石を指さした。


「この墓は! 比較的新しい物と見受けられます!」


 一見しただけでは違いが分からなかったが、その細部にまで目を向ければ、確かにその墓石だけは他の物とは風化具合が違った。


「最近亡くなられたという事でしょうか」


 私の股の下からユキメが言う。しかし、そろそろ降ろしてくれてもいいのではないだろうか。


「恐らくは! しかし! ここに無縁墓が固まっているのもおかしな話です!」

「ここが霊園だという可能性は無いでしょうか?」


 ――ここで意見がぶつかるが、二人の言い分はどれも間違っていない。

 サカマキの主張が正しければ、こここが霊園でもない限り、無縁墓が固まるのはおかしい。近くに集落でもあれば別だが。

 そしてユキメの言葉通りここが霊園であれば、この場所にはもっと墓石があってもいい筈だ。それなのに、ここにはたったの七つだけ。


 以上の点を踏まえ、私は一つの結論にたどり着く。


「これ、無縁墓じゃないんじゃない?」

「ふむ! しかしもしそうであるなら! 何故この墓たちからは弔いの念を感じぬのでしょうか!?」


 そこが問題だ。もし無縁でないのなら、墓石はもっと綺麗なはずだし、もっと立派な墓を建ててやってもいい筈だ。これでは祟られてもおかしくはない。


「んんん。分からん」


 今現在ただ一つだけ言えるとしたら、この墓を建てた誰かは道徳心の無いクズだという事だけ。


「ソウ様。ここに墓があるという事は、近くに誰かが住んでいる可能性がありますね」

 ユキメは頭を上げ、肩に乗っかている私を見る。

「そうだね。この新しい御墓を見るに、その可能性は十分ありそう」

「そうと決まれば! 早速探しましょう!」


 思わぬ手掛かりを見つけた私たちは、再び林の中へと戻り、いるかも分からない誰かを探すことにした。


 ――しかし、当初の目的である“川ノ神討伐”からどんどん遠ざかっているような気がする。これで本当に大丈夫かなあ。

 などと心の中で危惧した時から、私の中では形容しがたい不気味さが渦を巻き始めていた。



「ソウ様。一度龍昇を使い、空から探してみては如何でしょうか?」

 林に戻ってからユキメがその提案をしたのは早かった。

「そうだね。流石ユキメ。ナイスアイデア」

「ないすあいであ?」

「褒めてるんだよ」


 ……このどこまでも続くような雑木林だ。空から見れば何か見えるかもしれない。と考え、私もその提案に乗ることにした。

 そしてユキメの龍玉が光ったその次の瞬間、体は空に浮き、気付けば私は遥か上空にいた。


「――――何か見える?」


 見渡す限りの山と谷。そしてその間を蛇のように走る渓流。太陽の光が川に乱反射し、まるで秘境のような造形を私に魅せる。

 しかし今は観光している場合ではない。誰かが住んでいる痕跡を見つけねば。


「何かあッ! 見えましたかあッ!」


 遥か下方から飛んでくる声。そのやかましい声はピンボールのように山々を跳ね、何度も私の耳に入ってくる。ここまで声が届くとは恐ろしい。


「何も見えませんね」

「うーん。もう少し向こうまで行ってみよ」


 もはや下からの声には無視を決め込み、私たちだけで話を進める。一体どれだけの声量を持っているんだろうか。

 ……そうしてしばらく翔んでいると、林の中から一本の白煙が、タバコの煙のように立ち昇ってくるのが確認できた。


「あれッ!」

 思わず声を張り上げる。レアポケモンでも見つけた気分だ。

「誰かが風呂でも沸かしたようですね」

「行ってみよ!」


 ゲームのイベントが始まったかのようにワクワクする私だったが、対するユキメは冷静だった。


「まずはサカマキ様の所に戻ってはいかがでしょうか?」

「あ、それもそうだね」


 確かに、あの場所にはどんな危険が潜んでいるか分からない。なので仕方なく私は好奇心を殺し、ユキメの提案に賛成した。



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