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龍人の子、陽の元に堕つ  作者: 麗氷柱
第一章 八柱の姫君
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人の子、龍人に還る③

龍文書―三


龍人その二:龍の姿に戻る“還り”という能力を持つ。ちなみに龍神でなく龍人なのは、完全なる神霊ではないため、同じ読みの人を使ったと言われている。

「待ってろ異世界!」


 裁きの部屋から突き落とされ、時空の狭間の様な真っ白な空間をひたすら突き進む。ものすごい速度に感じるが、しかし体には何の負荷も掛からない。


 ――――そんな事よりも、心を躍らせるような想像が頭の中で弾ける。なんて言ったってこの私、龍野一二三は、今から異世界に転生するのだ。


 きっと自然が豊かで、フランスのパリの様な場所なんだろうなあ。それともベルギーとか? まあヨーロッパ風ならどこでもいいや。

 さて職業はどうしよう。剣士? でも痛いのは嫌だしなあ。それなら魔術師か。魔法かあ、極大魔法とか出来るかな?


 胡坐あぐらをかきながら何もない空間を落ちてゆく。すると、これまで無景だった風景が、突如として歪み始める。

 というか肉体も既に無い。私の身体はいつの間にか、マッチの如く小さな火の玉の様な姿になっていたのだ。


 ――――瞬間、目も開けられない程の光が私を包み込み、落下しているような感覚も消えた。そして産まれるは、一つの感情。


 気持ちいい。まるで生湯に浸かっているみたい。


「おんぎゃあ?」


 お、赤ちゃんからのパターンか。という事はこの気持ち良さは産湯かな。そして、きっと目を空ければ、そこには白人ママと白人パパがいるんだろうなあ。


「おお、私たちの子だ。よく頑張ったなリン!」


 心地のいい低音ボイス。真っ黒なあご髭が似合っている。でも骨格は日本人っぽいぞ? 日系ハーフか? これはこれで面白そう。


「…………可愛い子。なんて愛らしいのでしょう」


 お母さんだ。この心の底から安心できるような抱擁感は間違いない。しかしこの人も美人だが、やはり顔つきが日本人だ。 


 ――――んん? 何か思ってるのと違うな。


 ぼんやりと、まだ視力が定かではない目を凝らして周りを見渡す。そうして私の目に飛び込んできたのは、まるで平安時代の様な、赤を基調にして作られた雅な建物だ。

 微かにだが笛の音も聞こえる。神社とかでよく聞くあの音楽。


 そして私を囲う人たちだ。彼ないし彼女らの服装は着物を初めとし、袴や巫女装束を着た人もいる。


 待って。ヨーロッパ風どこ行った?


「よーしよし。“ソウ”よ、今日からここが、お前の家だぞお」


 重機の様にいかつい腕が私を包み込む。そしてお約束の高い高い。


 おー、高い。まあ私は赤ちゃんだからそれもそうか。しかしいつぶりだろう、こんなに愛情に包まれるたのは。

 ……施設育ちだからなあ、あたし。


「あぅあぅ!」


 言葉が出ない。まだ声帯が発達してないのか。ていうか今の私の声か、可愛いな。


 ――――細くて、それでいて力強い声。子供はいつか欲しいと思っていたけど、まさか私自身が子供になるとは思わなかった。


 よし手は動くな。


 とりあえず自分の顔や頭。そして()を触り、自分の身体を把握する。

 んん? 角?


 ――え、なにこれ、角!? 何で頭に角が生えているんだ。両親には生えてないのに。私は突然変異なのか?


「おお、よしよし。立派な角が生えて良かったでちゅねえ」


 その赤ちゃん言葉、今のあたしには煽りにしか聞こえない。っていうか髭がチクチクするから頬ずりやめて欲しい。


「あなた。ソウが痛がっているわ」

「おお、これは迂闊だった。ごめんねえ。痛かったでちゅか?」


 アホほど痛かったし、なんか少し酔って来たから早く下ろしてほしい。ふわふわふわふわと気持ち悪い。

 

 ――――あ、駄目だこれ、吐く。


「きゃ!」


 侍女と思しき女が急に叫ぶ。しかし、叫びたいのはむしろ私の方だった。――なぜなら、ゲロを吐くかと思いきや、口から出たのは真っ赤な火炎だったからだ。


 しかし父親は笑っている。状況の理解が追い付かん。


「おっとっと。げっぷが出てしまったようだな」


 ゲップっていうレベルじゃないっ。てゆうか父上のあごひげ燃えてますよ!


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