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龍人の子、陽の元に堕つ  作者: 麗氷柱
第一章 八柱の姫君
24/202

白いウサギの涙2

龍文書―23


【白兎族その二】:白銀の頭髪に、白い肌が特徴的。体は小さいが、かなり素早い。

「誰だ!」

 咄嗟にユキメが声を張り上げ、音のした方へ睨みを利かす。

「あ、あの。僕は」


 気の弱そうな声だ。甲高く、鳥のさえずりのように細い。女の声にも聞こえるが、声変わりしていない男児の声にも聞こえる。


 ――――疲れた体に鞭を打ち、私も声の主の方へと顔を向ける。そうして目に入ったのは、頭に長い耳の生えた、可愛らしい銀髪のおかっぱ男児だ。


「何者だと申しておる」


 私と同い年くらいの男児だが、ユキメは静かに、かつ容赦なく声をとがらせた。


「ぼ、僕は。小鬼に捕まってて、でも気付いたら小鬼たちがいなくなってて。そして貴女たちを見つけたんです」


 ウサギのような白い耳を生やした男児は、ウサギのように怯えながら、ウサギのように涙を浮かべて震えている。


「その耳、お主は白兎はくと族か?」

 白兎族? なんだそれ、そんな尊い種族がこの世界にはいるのか?

「は、はい。ウヅキともうします」


 彼はボロボロの布切れを身に纏っており、体には所々小さな傷が痛々しく残っている。恐らく小鬼に付けれられたものだろう。


「…………何があったのですか?」


 先ほどとは違い、彼女は優しさの籠った声音で男児に問う。むしろ、この幼気な男児によくぞあそこまで声を張り上げられたものだ。


「ぼ、僕の村は小鬼に襲われて、捧上する食べ物も奪われ、女の人達も攫われたんです……」


 男児はその目に若干の涙を浮かべ、しかしそれを堪えながら話を続ける。


「だから、僕が助けに行こうと山に入ったら、小鬼たちに捕まって。それで」

「もういいよ」


 聞いていられなかった。歳は私と近くとも、私の方が人間分長く生きている。こんなに小さな子が泣くのは耐えられない。


「ウヅキだっけ? その攫われた人たちが何処にいるか分かる?」

「ソウ様?」


 ユキメが不安そうな顔で私を見る。余計なことに首を突っ込もうとしている私の身を案じているのだろう。でも、これは放っておけない。


「小鬼の巣に連れていかれたんだと思います」

 小鬼の巣。今倒した小鬼たちの巣か? 

「場所は分かるかな?」

「はい。奴らが何度も出入りしている洞穴を見つけました。だから村の人たちを呼びに行こうとしたら捕まってしまって」


 先の戦闘で疲れ果て、まるで風邪のように重い体を持ち上げる。一瞬よろけるが、ユキメがすかさず支えてくれた。


「なりませぬソウ様。このようお身体では、返り討ちにされますぞ」

「でもほっとけないよ」


 恐らく、この世界で初めて作る表情。恐怖でもなければ、喜びでもない。これは怒りだ。この感情はユキメにも伝わるだろう。


「でしたら私めが参りますので、ソウ様はどうかお休みくださいまし」

 そう言ってくれると思った。流石は、頼りになる私のお目付け役だ。

「ごめんね」

「いいえ。ユキメに任せてください」


 どうしようもない申し訳なさから謝ると、彼女はそう言って頭を撫でてくれた。


「では、案内してもらえますか? ウヅキ殿」


 ユキメの言葉を聞き、白兎族のウヅキは目を輝かせる。それが希望の光なのか、涙で潤んだ瞳なのかは分からないが、多分両方だろう。


「はい、こっちです!」


 ユキメは私を背負うと、力強くウヅキの後を付いてゆく。本当に包容力の強い女性だ。もし私が男なら、間違いなくユキメと結婚する。


 ――――そうして少し歩くと、巣穴らしき洞窟を見つけた。この広大な自然の中に一つ、ぽっかりと口を開けた小さな穴。先ほど小鬼と戦った場所から数分の所にそれはあった。


「こんな近くにあったなんて」


 ユキメの背中から穴を見ると、確認できるだけで2匹の小鬼が入口を守っている。恐らく中にはまだまだいる。さっきのが全部ではなかったのか?


「どうやら私たちは、既に彼らの縄張りに踏み込んでいたようですね」


 笹の草陰から巣穴を覗き見る。中からはぼんやりと灯りが漏れ、黒い煙が蛇のように這い出ている。やはり中にまだいるようだ。


「ソウ様とウヅキ殿はここでお待ち下さい」

 ――――ユキメは私たちに微笑むと、おもむろに袴の帯を解き始めた。

「ちょっと、何してるの?」

「奴らはそこまで頭のいい妖怪ではありません」


 そう言って帯を完全に解くと、彼女は下の袴から足を抜く。少し筋肉のついた白い足に目が行くが、しかし今は見とれている場合ではない。一体何をしているのだ?


「それは分かったけど、脱ぐ必要あるの?」


 隣ではウヅキが真っ赤な顔を両手で塞いでいる。ちょっと刺激強すぎるだろ。


「頭は悪いですが、奴らは人質を盾にするくらいの小賢しさを持っています。このまま私が行けば、恐らく中の捕虜は無事では済みませぬ」


 下の袴を脱ぐと、今度は土を身体に塗りたくりながら彼女は続ける。


「ですので、ここは一度奴らに捕まり、捕虜のいる所まで連れて行ってもらいます」


 なるほど。確かにそうすれば、囚われている人達を守りながら戦うことが出来る。でも、本当に上手くいくのか?


「大丈夫なの?」

「はい。ユキメにお任せください」


 そう言って彼女は笑う。

 しかしそういう事ではない。私が心配しているのは、もっと別の所にある。確かにユキメは負けないだろうが、彼女の身に何かあったら、多分私は立ち直れない。


 だが情けない事に、私はただ彼女を信じるしかなかった。

 でも、私が助けようと言ったばかりに、もし彼女の身が汚されるようなことになれば…………。


「大丈夫ですよ。私は必ず、貴女の元へ戻って参ります」


 私の不安を吹き飛ばすようにユキメは笑う。

 そうして静かに笹薮の中から出ると、両手を挙げながら洞窟の元へと歩いて行った。

  ご愛読ありがとうございます!!

 ついに! ブックマーク者数が十一名様となりました! 本当に嬉しい限りでございます。

 ところで、私の住んでいるところは寒暖差が激しいですが、皆さんのお住まいの地域はどうでしょうか。

 体調を崩しやすい季節ですので、どうかお体にはお気を付けてください。


 私は今現在、花粉症で鼻が死んでます笑




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