嫌だ嫌だ嫌だ
「月・黄金・神憑き」
先ほどから感じていた、心臓を握りつぶすような恐ろしい感覚は、彼女の纏いによって発せられていたものだと気づいた。
「おおおお。いい時に降ろしてくれたねぇ」
何か、呼び出してはいけない者を、巫女は呼んだのだと肌で感じる。その姿、形、毛先からつま先までの全てが変わらずに見えるが、その纏う気配は、完全に別の物だった。
「アラナギ、アラナミ。まだ雑魚が残っているのに此方を呼んだのは、しっかりとした理由があってのことで?」
不覚にも、その発せられる言葉を、私は貴きものに感じてしまう。見た目はただの十代少女に見えても、その神霊は偉大なる御霊そのもの。
――――そして、巫女に対して最敬礼をして見せる兄弟。
「我が君、申し訳ありませぬ。思ったほか時間をかけてしまいました」
「まあ構いませんわ、こうして此方が降ろされたことで、この事実が天都にも知られ、きっとお姉さまが此方に会いに…………」
手を胸の前で組み、甘い青春に身を捩らせる少女のように、巫女は笑う。
「アアッ! 来た、来る! お姉さまがこちらにやって来ますわ!」
「…………大神の気配が」
カナビコが感じたように、私もその気配を感じた。間違いない、私たちの太陽がここへ来る。
「ユキメ、今止血するね!」
その晴れ晴れしくも堂々たる存在に、誰もが体を強張らせる中、私はその隙を見てユキメの腕を縛る。
「申し訳ありません。これではもう、あなたを抱くことが出来ません」
「何言ってるのよ。片腕があれば私は十分だよ」
アマハル様が来てくれる。助かる。これで、みんな無事に帰れる…………。
「ああああ! お姉さまァァッ!」
狂った様に巫女が叫ぶ。そして同時に感じるは、いつも私たちを照らしてくれる崇高な暖かみ。
「嫌な神霊を感じると思ったら、やっぱりお前か、吾月」
西日に照らされ、後ろで束ねた黄金色の髪をなびかせる影。その声は豪勢たる神々しさを孕み、纏う袴からは圧倒的な無敵を感じる。
「おい、じじい。これはどういうことだ」
「お主も来おったか、オクダカ!」
さらにアマハル様は、剣神オクダカをも天都から連れて来ていた。
「なんでアラナギがここにいる。しかも二柱も」
「分からぬ。双神と言っておったが、真かどうかも怪しいものだ」
「荒魂でもなさそうだしな」
やはりオクダカも、兄弟の事を知っている風だ。やはりアラナギは元天津神。それが何故か敵の国つ神の味方をしているのだ。
「お姉さま、お姉さま、お姉さまッ! お会いしたかったですわ!」
巫女が宙に浮かぶアマハル様に飛び掛かろうとするが、彼女はそれを、コバエでも叩くように回避する。
「答えろ吾月。何しにこっちへ来た」
「お姉さまったら、昔と変わらず、恥ずかしがり屋さんですのね」
「――――答えろッ!」
初めて見る怒りの表情。いつもおおらかでヘラヘラしている大神が、本気で怒っているように見えた。
それにしても、アマハル様をお姉さまと言っているアイツは、一体何なんだ?
嫌に微笑む巫女は、滞空するアマハル様に視線を合わせると、その口元を三日月のように曲げる。
「嫌ですわぁ。ただの戯れですよ。お姉さまが葦原を平定なさると聞いたので、その檄を飛ばしに参りましたの」
「その割には、随分と手荒な真似をしてくれたな」
「ええ、ええ、ええ! ですがそのおかげで、こうしてお姉さまとお会い出来ました」
「どうやら、もう一度殴らねば気がすまぬようだな」
「ひひひ、お手柔らかにどうぞ」
天陽様に全く物怖じしない巫女。むしろ太々しいその態度は、大神を煽っているようにも見える。果たして本当に、私たちは助かったのだろうか?
「じじい。俺の腹はまだ癒えてない。電光石火は、一回しか使えねえぞ」
「…………そうか。やはりまだ、厳しいか」
――――オクダカとカナビコの弱弱しい声。ふと見ると、オクダカは痛々しく腹を抑えており、さらにその顔には、血の気が無いようにも伺える。
「ひふみ。吾月がおる以上、余は主らを守れきれぬかもしれん」
その言葉は、一番聞きたくない言葉だった。一度訪れた絶望が、眩い光によって消え去ったと思ったら、それは再び顔を覗かせた。まるで月が、雲からその姿を現すように。
「イッヒヒヒヒヒ! 流石お姉さま! 自分のことは、自分が一番知っていますものねぇ!」
向かうところ敵なし。まさにその言葉通りに笑う吾月。しかしなぜ、彼女がそこまで揺るがない自信を持っているのか、私はまったく理解が出来ずにいる。
「アマハル様、どういうことですか?」
「ひふみ。酷な事を言う様じゃが、友かユキメ、どちらかを選べ」
――――何を、言ってるの?
「なに寝ぼけたこと言ってるんですか? 先鉾と一緒にサクッと片付けてくださいよ」
「すまぬ。今日じゃなければ、こんな事にはならなかったのだが」
「いひひひひひひひひ! あああッ、痺れますわ! お姉さまのそのお顔。その惨憺たる表情!」
アマハル様は眉根をひそめ、まるで打つ手なしと言った様子で汗を流す。――――そして私が、彼女のその表情に例えようもない恐怖心を抱いていると、突如世界に闇が訪れる。
「…………そんな、まさかそんなことって」
私は、その光景を見て、全てを悟った。
「カナビコ! オクダカ! 子供らを早く運べ!」
「…………御意ッ」
ほんのつい先ほどまで、さんさんと世界を照らしていた太陽が、その端から齧られるように欠けてゆく。
「…………皆既日食」
こいつら、この日を狙って?
「ひひひ。さあ、お姉さま、ほんの束の間ですが、ここから先は此方の世界。ようこそ、夜の国へ」
私たちの太陽は、その漆黒たる月によって食われ、まるで全てを飲み込む特異点のように、その姿を深淵の星へと変えていった。
「選べひふみ! 二人は守れぬぞ!」
カナビコが私を抱きかかえる。そうしてオクダカはウヅキを抱え、恐らく最後の電光石火を使う。残るはユハンとユキメだけ。
「アラナギ、アラナミ、誰一人逃がしてはいけませんわよ」
「――――時間が無い、ひふみ早くッ!」
分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。
ユハンを置いていくべきか? 彼女とはまだ出会って数日。ユハンが死んでも……………………。ユハンが、死んでも?
「――――ぉえッ!」
口から噴き出る吐しゃ物。常世の国で食べた昼が出てきた。――――だって、ユハンはまだ死ねないでしょ。死んじゃだめだよ。
じゃあユキメが死ぬべきなの?
いや、彼女ならきっと、アマハル様と一緒に生き残ってくれる筈。だってユキメは強いし、さっきだって兄弟を追い詰めてたし…………。
そうだよ。きっとアマハル様も守ってくれるよね?
「ソウ様…………。私なら、心配に及びません」
腕も無く、尾も切られ、角は砕かれ、彼女はとても、もう戦える状態ではない。しかしそれでも彼女は、私に微笑んで見せた。いつも私に見せるあの笑顔。誰でも骨抜きにしてしまう、妖艶な笑み。優しくて、心強くて、いつも私を支えてくれたあの笑顔。
「アラナミ、そこの縁切りの神使を殺してください!」
「あいよ」
アラナミの凶刃がユハンに迫る。アマハル様は吾月に睨まれ動けずにいる。ユハン、ユハンは、死にたくないよね?
「……………………いやだ、ユキメ」
「ではユキメ殿を、お運びいたす」
その言葉を聞いた時、私は心の底から安堵した。これでユキメと一緒に居られる。これからも一緒に、いつもの日常を歩めるのだと。そう思った。
でも同時に、脳裏にはユハンとヒスイが浮かび上がる。彼女らと過ごしたのはほんの少しだけど、この六十年間に匹敵するほどの衝撃を私にくれた。でも明日から、ユハンの姿はない。ヒスイはきっと悲しむ。タライも、ウヅキも、チヨも。
――――私にどちらを選ぶかなんて出来ない。ただ私は、気付けば流れる涙のままに、その名前を口にした。
「ユハンを」
「今何と!?」
「…………ユハンを運んで」
その瞬間、ユハンの身体は光に包まれ、アラナミの刃が一歩届かぬところで、その姿をこの場から消した。――だが代わりに、アラナギの太刀がユキメの片目を突き貫く。その刃は、最後まで貫くことなく、半ば途中で折れたが、きっと天陽様が守ってくれたのだろう。でも、明らかに、それが最後の手助けに見えた。
「…………ユキメ。ゆきめ」
アマハル様は吾月を相手にし、さらに手下と思しきもう一柱も相手にしていた。存分な力も発揮できず、更に二柱を相手にするなど、天陽様にとっては最悪な形なのだ。
でも最後の最後まで、ユキメを守ってくれたのは嬉しかった。流石は私の神様だ。
「嫌だよユキメ、立ってよ。立って今すぐ逃げて」
そうして私の身体は、カナビコの神通力で足元から風に変わってゆく。それは凄まじい速度だが、この人生で一番長い時間に感じた。
「ユキメッ! お願いだからッ!」
「ソウ。…………さよな」
――――最期、ユキメが私に言った言葉を、私は確かにこの耳に聞き入れた。片目を突かれ、その目から血とも涙とも捉えられる雫を流し、アラナギの白刃が喉元に迫る中、彼女は最期、そう言って微笑んだ。
私の身体が完全に風となり、ユキメの言葉を、最後まで聞くことは出来なかった。
「ッあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあッ! いやだぁ! ユキメッ、嫌だ嫌だッ! 嫌だよッ! いやぁッ! ユキメ! ユキメッ!」
風から戻ると、私は官学の大手門にいた。
そこでは私が叫んでいる。
ヒスイ、ユハン、ウヅキ、カナビコ、オクダカ。しかしそこにユキメの姿はない。天陽様はきっとまだ戦っている。
「じじい、俺はもう動けそうにねぇ…………」
オクダカの身体は、残った電気を纏いながらその血を噴出させている。よく見ると、お腹からも血がにじんでいる。
「ワシは戻る。お主は休んでおれ」
そう言ってカナビコは再び風になって消えた。彼が行ってくれたのなら、私も安心だが、ユキメは、ユキメはもう。
もう? まだ死んでなんかいない! きっとまだ生きてる! 生きて、私の元に帰って来てくれる。だって、ずっと傍に居るって…………。
「――――龍昇ッ!」
「おい! …………戻れッ!」
私が龍昇を使って足を浮かせると、オクダカがそれを止めた。そのせいなのかは分からないが、彼は空中で私を止めたあと、力尽き、そのまま地面に伏せる。
「おひい、いや、蒼陽姫、お前が行っても、もう終わってる頃だ」
「……………………いやだッ」
「太陽が戻ったんだッ! 吾月も、双神ももういねえ、気配が消えたから分かる!」
私の脚を掴んだまま、オクダカは顔を上げる。
「いやだッ! ユキメが死んじゃう! 私もいきたいの!」
「駄目だッ! お前が選んだんだろッ」
私が選んだ。そうだ。私がユキメの死を選んだ。彼女の最期の笑みは、いつもの、私を褒めるような笑みだった。
私が何かするたび、彼女は嬉しそうに笑ってくれた。
一緒に団子を食べた時も、初めて天の山腹に行った時も、禊祓から帰って来た後も、小鬼を倒した時も、それからもずっと、私の傍で、彼女は笑顔でいてくれた。
「嫌だよ、ユキメ。あたし、まだ一緒にいたいよ。だってまだ、貴女に。…………いやだ、オクダカお願い、私もいかせて」
「無駄だ。もうすぐ、じじいと大神も戻ってくる」
その言葉通り、それから数分して、私の視界に光が注ぎ込まれる。初めて禊に出向いた際に見たあの光。でも少し、弱っている。
「皇神!」
現れたのは、口から血を滴らせたアマハル様と、全身に切り傷を負ったカナビコ。その二柱だけ。
「――――ユキメは! ユキメは何処に!?」
「……すまぬひふみ。ユキメは、遺体の損傷が激しく、とても見せられるものではない」
呆然と立ち尽くし、その視線を空へ放ったカナビコを他所に、アマハル様は脇腹を抑えながらそう言った。彼女のその弱り切った姿は、その戦いがどれだけ苦しい物だったかを語っている。
「…………そんな、そんなぁ。嫌だぁ、いやだよ」
「ひふみ。残念じゃが彼女は、もうおらぬ」
「あああ……。そんなの嫌だ。嫌だよ。…………あいつら、殺してやる。絶対ッ」
片膝を着き、項垂れる私の背に、天陽様は優しく手を置いてくれた。
「あ、あああ! なんと言う事!」
――――その声と同時に現れたのは、ズイエン学長とシロギ副学長。
「大御神様、お怪我の具合は…………ッ」
「今は余より、他の者の治療を頼む」
「は、はい!」
あのズイエン学長が取り乱している。
「蒼陽姫…………。」
カナビコが私の傍で腰を下ろす。
もう私は、何もしゃべりたくない。もう何もする気が起きない。もう生きる気力も無い。死なせてほしい。ユキメがいないんじゃ、私はもう息も出来ない。
「――――お主はこれから」
「カナビコ、今は蒼陽を休ませてやれ」
「……………………は」
―――それからのことは、よく覚えていない。
ただひたすら泣いたことだけは覚えている。
けれど、どれだけ泣いたのかは覚えていない。最期、ユキメが何を言ったのかは覚えているが、そのあと私は何て返したのか分からない。でも彼女の笑顔は覚えている。いつも見せる泣き顔も覚えている。食べ物を頬張っている顔や、いつも下から見上げていた顔や、彼女に唇を重ねた時の顔も。
「いやだよユキメ! 俺はまだ、お礼も言えてないんだぞ! ユキメ。帰って来てくれよ、ユキメッ!」
お葬式の時、兄のフウが一番泣いていた。空っぽの棺桶だけど、彼はその棺桶に突っ伏したまま、何時間も泣いた。
――ユキメの遺体は、とても見せられるものではないと言って、アマハル様が天都で供養してくれた。いつもと違う神妙な顔つきで、彼女は私に遺灰を渡してくれた。
だがその時の天陽様も傷だらけだった。きっと最後まで、ユキメを守って戦ってくれてたのだろう。
ユキメの遺灰は、天千陽の奥。龍の胸椎の、さらに奥に位置する霊園。彼女の両親が眠るお墓の中に入れてあげた。
「…………ねえ、ユキメ。最近また寒くなって来たよ」
私は毎日のように御墓へ行った。官学を休んでいる間は一日中。そして復帰してからも毎日のようにお参りに行った。
「……そう言えばね、ユキメが好きだった団子屋さん、無くなっちゃうんだって。ヒドイ話だよね」
毎日、毎日。来る日も、来る日も。雨の日も、風の日も当然のように行き、私はそこでずっと話していた。
「…………ユキメ、本当はあのとき渡そうと思ってたんだけど、渡しそびれたから、今渡すね」
彼女の御墓に、私はあのとき呉服店で買った髪飾りを置く。ほんとはサプライズのつもりで隠していたのに、こんな形になってしまった。――本当に私は駄目だ。
「あーあー。もう一年生も終わっちゃうよ。憧れの共学だったのに、結局何もしないまま終わっちゃった。ほんと最悪」
返事が来ることなんてない。けれど、私はついつい期待して話してしまう。神様がいる世界なんだから、きっと幽霊もいるはずだと思って。
でもそう思うだけ虚しかった。お墓に行っても、家に帰っても、学校へ行っても、ユキメはそこにいない。どこにもいないのだ。私はもう、独りぼっちだ。
会いたいよユキメ。会いたいよ。どうすればいいの? 私はこれから、貴女なしでどうやって過ごしていけばいいの? ねえ、教えてよ。なんで、なんで。あの時、ずっと傍に居てくれるって言ったのにさ。
「ユキメ。お願いだから…………もう一度だけ」
あと一度だけでもいいから、私に笑って欲しい。手を繋いで、ご飯を食べて、一緒に歩いて。また一緒に笑いたいよ。
「ユキメっ。ユキメッ!」
――――どれだけ泣いても、どれだけ笑っても、何を食べても、貴女がいないと思うと、私はとても退屈で仕方がない。
本当は私も、直ぐにユキメの後を追うつもりでいた。けれど、両親や友達の姿がそれを引き留める。
それにまだ、ユキメの仇も取れていない。もし仮に死ぬとしても、アイツらを殺さない限り、私は死ねない。
もう何日も、そのダサい想いをぶら下げてここに来ている。
「ユキメ、今日も来たよ…………」
気づけばもう、あれから十年。私は本当に、今日まで息をしていたのだろうか。ムカつくほど変わらない日常に、私は死んでいた。
「口に合うか分かんないけど、新しいお店の団子持ってきたよ」
そう言って、私が団子を置こうと墓前を見ると、そこには見覚えのないお供え物があった。
いつもは団子や榊、金木犀の枝といったものばかりなのに、今日は一本の真っ赤な菊が備えてある。
「…………誰だろ」
それは他の花のように立てられているのではなく、まるで拾ってくださいと言わんばかりに、寂しそうに横たわっている。
「蒼陽姫」
――――声。
振り返るとそこには、カナビコが花束を持って立っていた。見た目は厳つい老人の癖に、無駄に花が似合うから驚きだ。
「なに」
「わしも、墓前に参ろうと思っての」
腰を庇いながらゆっくりとかがむ翁。そうして彼は、花を一本一本、丁寧に手向けて行く。どれも上等そうで美しい。
「いつまで、ここでこうしておるつもりじゃ」
ユキメの墓前に手を合わせ、カナビコは少し頭を下げるとそう呟いた。私はただ放っておいて欲しいのに…………。
そうして彼の問いに答えず、ただ沈黙を貫いていると、カナビコはゆっくりと膝に手をついて立ち上がる。
「飛儺の更に北。その砦のような山々に囲まれた盆地に、奴らの村がありまする」
意味は理解できた。
私は今日までの十年間を、ただひたすらそれに費やしていたのだ。あの日、あの時、楽しそうにユキメをいたぶったアイツらに復讐するために。私は、ただただ遮二無二にアイツらを探していた。
「分かった」
「しかし、危険ですぞ」
「うるさい」
見ててねユキメ。
私があの二柱を殺すところを。足元からじっくりと燻るように苦しませるところを。もう殺してくださいと懇願されるまで、私が奴らの足元から切り刻むところを。アイツらがユキメに許しを請うまで、私は殺すから、しっかり見ていてね。
――――多分、しばらくは貴女のお墓に来れないだろうけど、それでも、ずっと私の傍で見守ってください。あの日、私に約束した時のように。
手を繋いで、見上げれば微笑み返してくれた毎日のように。
いつも通り、私の斜め上の方から、ずっと。
ここまでのご愛読ありがとうございました
二章は思ったほか長くなってしまいましたが、それでも最後まで読んでくださった方々には、深くお礼申し上げます。
三章はまた時間ができ次第、ゆっくり執筆していこうと思います。
その時まで、この物語を少しでも記憶して頂ければ幸いでございます。




