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婚約から始まる物語を、始めます!  作者: 無乃海
中盤 ~複雑に絡まる~
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58話 攻略対象を考察せよ?

 新ヒロインが動かないと、考察するしかなくて…。というわけで、女子会の開始となりました。

 乙女ゲー通りに進めば今頃、新ヒロインと攻略対象達が接触し、本格的な恋に落ちている、頃合いだと思われる。ところが、現実はそう甘くなく、設定通りに進む様子もなかった。


攻略対象の1人『ラングルフ』は、フェリシアンヌの元婚約者で、ハイリッシュの実弟でもある。ゲーム通り進むなら、兄の恋人で元ヒロインに、淡い初恋を抱く。卒業した直後に兄が恋人と結婚、公爵家を継ぐ。家に帰りたくない彼は、心の隙間を埋めてくれた新ヒロインに、惹かれていく。


しかし、現実はフェリシアンヌを慕い、兄同様にアレンシアを許せず、寧ろ彼女を忌み嫌っていた。父親の代わりに母親が当主となり、彼も次期後継者に決まって、目まぐるしいほど忙しいと聞く。


元々次男の彼は、次期当主の勉強をしておらず、遅れた分を取り戻そうと、猛勉強中だったが、おバカな兄とは違って、理解するのも速かった。当然ながら王立学園から帰宅後、当主としての勉強に勤しみ、テレンシアに接触する暇もないだろう。


今後もハッピーエンドは難しく、友情エンドが精一杯だろうか。但し、友情エンドはないような…?


 「…もう、一体どうなってますの?…ラングには誰より、幸せになっていただきたいのよ。ヒロインに惹かれたのなら、ご協力致しますし…」

 「…だ、ダメです!…ゲームの彼は攻略対象の中で、一番危険な人です。真面目過ぎるが故に、恋に一直線に突っ走って…」

 「…あら?…現実の彼は、フェリーヌの弟同様の存在ですのよ。何のご心配もないはずで…?」

 「それでも…ダメです。現実の彼も真面目で誠実なら、特に。そういう人に限って恋をすると、他は()()()()()()()()から…」


前世の記憶がまだ戻る前、フェリシアンヌも義姉になる気で、ラングルフに接してきた。しかし、前世の記憶を思い出し、自分も別の人と婚約して、ラングルフとも(いず)れ疎遠になる。そう思うと、彼の幸せを心から願い、祝ってあげたくて。


…恋を知ったラングが、ゲーム通りに?…いいえ、それは違います……


何故かアレンシアは、否定した。アリアーネが告げた通り、フェリシアンヌを姉のように慕う彼は、彼女が兄嫁とならなくなっても、2人の仲は変わらずに続いている。だから、大丈夫では…と思うところだが、アレンシアだけは油断できないと、思っていた。それに対し、ミスティーヌが意外なことを言う。


 「現実の彼は何方(どちら)かと申すなら、わたくしと同類に近い気が致します。ゲームの彼は真面目一辺倒でしたが、今の彼はちょっと違う感じかも…」

 「…ん?…ミスティと同類?…腹黒い一面も、ほんの少しあるとか?…そういえば数年前にお会いした時、わたくしも似たような感想を、持ったような…」


ミスティーヌの発言に、クリスティアも同意した。弟のように想うフェリシアンヌには、誠実で優しい彼に腹黒い一面など、全く想像もできない。複雑な気持ちを抱いてしまう。


 「…うわあ。現実のラングルフ様って、裏の顔とかある人?…うう、何か幻滅してきたかも。今まで会う機会がなくて、助かったわ…」

 「…皆さん。ラングのこと、勘違いなさっておられますのね。彼は大層愛くるしくて、子犬みたいですのよ。本当の彼は、純真で清廉なお人ですわ。」


現実とゲームとの相違に、アレンシアは拒否反応が出た。当時、彼が学園に入学する前で、キャスパー家にも一度も招待されず、彼と出会う切っ掛けもなく。会わずに済んで良かったと、今更ながら胸を撫で下ろした。


彼と親しいフェリシアンヌだけは、俄然納得できないでいた。皆の思い違いだと訴えるも、確かに見た目は子犬でも、純真で清廉かどうかなど、親友達には分かるまい。アレンシアを除けば、最低限の挨拶は彼ともしている。フェリシアンヌ以外の異性とは、殆ど話さない彼でも。それは、フェリーヌ()()()()()()()だと、この場の全員が心の中で、思わず突っ込みを入れた。



 「フェリーヌはお人好しですもの。けれども他の者達の前で、キャスパー公爵令息とのお話を、決してなさってはいけません。今の貴方は、アーマイル様の婚約者なのですから…」

 「フェリーヌお姉様、その通りですわ。これ以上は何も、仰られないで…」

 「そうよ、フェリーヌ。ラングルフ様とはもう少し、距離を置くべきです。」

 「…………」


フェリシアンヌは納得のいかぬ顔で、親友3人を見つめ返した。将来、家族にならないと判明した以上は、余計な話をすべきではないと、本当は自分でも理解していた。けれど、彼女は一度()()()()()()()に、安易に割り切れず。


 「…フェリーヌ様って、根っからのいい人タイプ、ですよね…」


ポツリ呟くアレンシアに、当人以外の全員が首を縦に振り同意するも、そういう優しさのある彼女だからこそ、親友として大好きなのだと……



 



   ****************************






 「では、次の攻略対象はモーリス様で…」



攻略対象の1人『モーリスバーグ』は、フェリシアンヌの実兄であり、アリアーネの婚約者でもある。ゲームの彼は、婚約者が派手好きなことに嫌悪し、仲の悪い実妹の断罪を望むほど、忌み嫌う。新ヒロインに惹かれていくと、彼女の生い立ちを不憫に思い、手を貸す。


ところが現実は、ゲームと真逆の婚約者の姿にメロメロで、フェリシアンヌを心優しい妹と認識した上で、彼女達を溺愛している。妹を貶めた前ヒロインを、断罪する勢いで憎悪した。新ヒロインにも、興味の欠片もないようだ。


 「ゲームでは私を守る、唯々優しい人です。現実では出逢った当初から、完全に嫌われたけど…。私がフェリーヌ様に近づくと、今も睨まれますし。新ヒロインと出逢う以前に、態と避けているような気もします。」


ゲームとの相違に、当初アレンシアはショックを受けた。一番の本命の推しだったというのに、出逢いシーンで冷たい態度の彼を。最終的に後がないと諦め、王太子に標的を変えた。


 「わたくしが申すのも憚られますが、ゲームのモーリス様とは違って、わたくしの意思を尊重してくださるわ。ですが、彼が優しい人だというのは、ゲームと全く同じでしてよ。」

 「アリアお姉様の仰る通りですわ。わたくしの兄は誰にでもお優しく、模範的な紳士なのですもの。わたくしにとっても、自慢の兄ですのよ。」


モーリスバーグをべた褒めする、アリアーネとフェリシアンヌの2人に、親友たる令嬢達は顔を顰めた。婚約者と実妹が褒めても、惚気と家族自慢だと言える。もし彼ら2人を敵に回そうものなら、彼が()()()()()()ことやら……


普段は誰にでも優しく接するも、それは単なる見せかけでしかない。彼らを敵に回した者達が、彼に処罰される場面。其処に遭遇した生徒達は、1人や2人ではないからで。妹に対するシスコンが重い、と常々思われてはいたけれど、偶然目撃した生徒の証言を聞けば、根本的に違うと気付いてしまう。


 「それはさておき、『新ヒロインの生い立ち』『不憫に思う』は、どういう意味を含む設定でして?…新ヒロインの実の両親は平民で、彼女を貴族令嬢の如く大切に、育てたはずですよね?…ルノブール公爵の養子となった、今の状況に同情したのかしら…ね?」

 「…養子の件は、除外では?…生い立ちというまでには、養子となってからまだ日が浅過ぎますもの。生い立ちの設定は、微妙よね…」


残り令嬢2人と元令嬢1人は、完全無視することにした。ミスティーヌはゲーム設定に対し、疑問を唱えてくると、この疑問にクリスティアが、養子の件は当て嵌まらないのでは…と、意見を出した。


 「『生い立ち』『不憫に思う』の設定は、間違いなく書いてありました。設定集のない今も思い出すぐらい、何度も何度も読んで暗記したんです。」


かなりのゲームマニアらしく、アレンシアは自信満々に、宣言をした。一体どれほどのめり込み、やり込んだのだろうか。令嬢達が苦笑気味に、顔を引き攣らせるすぐ傍らで、考え込むようにずっと黙っていた、フェリシアンヌは。


 「日本での『生い立ち』の意味は、生まれてから成人までの成長、という意味でしたわよ。ですから新ヒロインは、両方全てを含め『生い立ち』ですわ。」

 「「「…………」」」

 「……な、何で前世で外国人のフェリーヌ様が、そんなムズいことを…」


前世は外国人だったフェリシアンヌが、前世は日本人の貴族令嬢達より、漢字だけでなく言葉の意味まで、日本語がこうも詳しいとは。カルチャーショックのようになるも、それでも数秒で頭を切り替え、令嬢達も納得したようであった。


 「シアさんは新ヒロインの設定を、他にも覚えていらっしゃる?」

 「…私も、うろ覚えなんです。ゲームで私はヒロインに徹していたし、攻略対象しか見てなかったかも…」

 「…わたくしも明確ではありませんが、ヒロインの身分に何か重大な、秘密が隠れていたような…」

 「……えっ?…ミスティさん。それは、どういう意味で…」


アリアーネはヒロイン設定を、他にも覚えているか問うたが、アレンシアは何も思い出せないようだ。しかし、ヒロインには何か秘密があると、ミスティーヌが仄めかしたことに、アレンシアは飛びつくように問いかけた。あと少しで、何か掴めそうな気もして。


 「確信はありませんが、ヒロインの本来の身分が…貴族令嬢とか、身分の高い令嬢だと、()()()()()()()気もして…」


ミスティーヌの暴露に、この場の全員が驚いた。ヒロインの本来の身分が高いとするならば、元々は平民ではないと言える。反対に「道理で…」と、納得もできた。あの貴族令嬢の仕草や口調は、数年で会得したものでは、ないだろう。彼女の本来の身分を知る母親が、元の身分に戻れた時に困らないよう、本格的な厳しいしつけを施していた、とか……


 「…そういえば隣国に、不穏な動きが見られるようで、ユーリ様も懸念なさっておられました…」

 「…ハーバー国が…?」

 「いいえ。隣国でも、ジュール王国で…」

 「……!?…()()()()()、ジュール王国…?!」

 いきなり攻略対象の説明で、ストーリーが始まっております。新ヒロインとされるテレンシアが、攻略対象と全く絡みがないまま進み、主人公達もどう対応したらいいかと、悩んだ結果にこうなった、と。


攻略対象全員を考察する気は、ないとは思われるものの、あともう少しは続くかもしれません。元ヒロインのアレンシアも、完全に棘が抜け素に戻った、というようにも見えますが、実は前世より生き生きと自由に、現世の生活を満喫しています。性格も前世より、丸くなったというべきか。同じ魂を持つ人物でも、別世界や前世など様々な環境の違いで、人格も微妙に変化するように。


ジュール王国の詳細は、書くかどうか分かりませんが、次回に続きます。

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