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婚約から始まる物語を、始めます!  作者: 無乃海
開幕 ~続編が始まる~
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55話 あまりに可愛い婚約者

 主人公と婚約者との遣り取りも、漸くこれにて終了か?


今回はタイトルからしても、惚気オーラが凄いかも……

 「我が子に爵位は継承されないが、その代わり昇進で給与が上がる。それだけでも平民には、魅力的に感じるだろう。制度を変更した途端、教師を志願する平民達が早速、倍増したようだよ。」

 「あら、まあ…。どういう理由であれども、教師という職業が人気となりますならば、非常に良い傾向ですわね。」


貴族達が爵位などの名誉を求める一方で、平民達は身分という名誉より、安定した生活を望む者が多い。何方か一方を選ぶ必要があるのなら、見栄を張る者は爵位を選ぶだろうし、より良い豊かな生活を望む者は、安定した仕事を選ぶだろう。


 「今回の制度変更には、貴族達も注目しているようだ。次男や三男以降の子息は勿論のこと、跡継ぎ争いに敗れた子息達にとっても、条件の良い家門へ婿入りするという、出世の糸口になるかもしれないからね。王立学園の教師ともなれば、多くの未婚令嬢と知り合う切っ掛けになると、婚活にも繋がることだろう。」

 「王立学園が男女の出逢いの場に?…それもまた、婚約者のいらっしゃらない貴族令嬢の方々も、嬉しい誤算と申しましょうか…。学生という立場では、未婚は当たり前ではございますけれど、多くの令嬢方は正式な婚約をなさっておられます。その大半が()()()()()()()()()、政略的な婚約なのですが…」


フェリシアンヌの前世でもあった、日本を含んだ現代世界と、今のこの異世界と言える世界では、似て非なる世界だ。女性が何らかの理由で結婚を諦めれば、自立することも不可能な状況に立たされる。この世界は未だ男性中心であり、女性は意思を明確に持てず、働くことも許されていなかった。


前代の当主達…つまり、フェリシアンヌ達の祖父母世代が若かりし頃に、漸く女性の社会進出が認められるようになる。平民の女性達は夫の庇護下から出て、経営にも携わるようになっていく。この国では身分関係なく、女性から離婚申請することが認められ、横暴な夫に我慢する必要がなくなった。離婚した女性は生活のためとはいえ、積極的に社会進出しているようだ。


 「優良物件を見つけたいのは、女性も同じだな。貴族として生まれた以上、家門を守る義務と責任もあり、政略結婚はその手段の1つだ。今回、教師を志願する令嬢も現れたし、私は…働く女性を助けたい。序でに、前世世界のように家同士の結び付かない恋愛結婚も、私は応援するつもりだ。」


平民女性が就職できても、貴族令嬢が働くことには、未だ大きな壁がある。資産がより豊かな高位貴族に嫁ぎ、跡継ぎを産むのが貴族女性の幸せだと、本気で信じられていた。また男児を出産すれば、母として奥方として贅沢な一生を、約束されている。逆に女児しか生まれず、若しくは子が為せずであれば、一方的に貶され離縁されることもあった。


単に政略結婚の道具と見なし、出産も女性だけが責任を負う。平民の女性も同様ではあれど、貴族女性からは離婚することができず、また貴族女性が働くこと自体、恥とされた。


 「…貴族令嬢が、教師に志願を?…例え()()()()()()()であれ、大層喜ばしいことですわ。学園の理事長先生並びに教師の先生方は、どのような対応をなさるおつもりかしら?」


現状で貴族令嬢が働くには、他家の上位貴族家でメイドとなるか、商売で経営者として成功するしかない。その他の職で雇われる側として働くのは、ほんの一部である。働く理由としても、領地が痩せこけ家門も貧しく、資金も才能にも恵まれない場合が多かった。


その他の職には、教師も含まれる。この世界では、貴族子息子女を専門に教える家庭教師が、女性教師とも言えるだろう。前世のように学校の教師は含まれず、故に王立学園の教師は全員が、男性である。


平民の学校ならば兎も角も、王族も通うとされる王立学園で、女性教師は不必要なことだと、考えられていたからだ。また未婚・既婚に拘わらず、貴族令嬢が男性社会と言える職で働くのは、今も尚一族の恥として捉える者も多く、絶縁したも同然の扱いを受けることとなる。例え家族が許しても、令嬢が働くほど貧しいとして、他家の貴族達は見下すことだろう。


勿論、それら困難を物ともせず、我が道を突き進むという強者も、稀に居るには居たのだけれど。それを自立として捉えるのは、()()()()()()()()である。






    ****************************






 「王立学園は王族も通う学校であるとし、今まで一度も女性教師を受け入れていない。理事長を筆頭に他の教師達も、この制度を切っ掛けに前向きに検討するようだ。上位貴族令嬢である女生徒に対して、男性教師では荷が重いらしい。できれば高位貴族の女性教師を、雇いたいのだろう。」


身分の低い教師を見下し、教師の言うことを聞かない生徒もいる。如何やらそういう点では、女生徒の方が()()()()()()()()ようだ。


 「…それは、難しい問題ですわ。余程の高位貴族ではない限り、完璧には回避できかねますもの…」


女性の家庭教師は、礼儀作法を教えるのが殆どである。家庭教師に就くような貴族女性は、程々に裕福な家柄が出身であり、礼儀作法をしっかり学ぶ環境で育ったからこそ、教える側に立てていた。


貧しい男爵家・子爵家では、家庭教師も満足に雇うことができず、礼儀作法は独学に近いと言えた。見よう見真似で器用に熟す者もいるが、上位の貴族に見下されるほどに、礼儀も儘ならない者もいる。但し、礼儀作法を習ったとしても、身分を盾にし傲慢に振舞う者は、礼儀作法以前の問題であるけれど……


 「フェリの言うことは、最もだろうね。今回は、貴族女性が王立学園の教師を希望した自体に、意義があると思う。君が在学中の間は、貴族令嬢達の多くが君に取り入ろうと、するだろうからね。」

 「…確かに、これまではそうでしょうね。今年からは、テレンシス様もおられますし…。彼女は威張るようなお方では、ございませんでしたが…」

 「………フェリ…?」

 「……あっ!…………」


フェリシアンヌが学園に在籍する限り、他の令嬢が威張ることもないだろう。王族と親戚関係にある彼女を、敵に回す度胸はないだろうと、カイルベルトは言いたいようだ。精々取り入ろうとするぐらいだと。


彼の意見に彼女も同意であったが、転入生のテレンシスの存在も大きく、彼女の存在だけが抑止力になるとは言い難いほどに、彼女の心を占めていた。あの時はうっかりヒロインと過ごしたものの、アレンシアの時に感じた不安要素は、何も感じられずにいたけれど。


ヒロインと過ごした時間は、フェリシアンヌにとっても楽しく、穏やかなものであった。テレンシスがアレンシアのように振る舞うとは、思えない。だけど、それは共通の時を過ごしたからこそ、断言できることでもある。


ヒロインを知っている。ついうっかり口が滑り、カイルベルトにそう気付かせてしまう。婚約者の瞳は、一瞬で鋭くなる。魔法や呪術などが存在しない世界なのに、彼の背後に黒い靄がうっすら見えるようで、彼女の顔からは血の気が抜けていく。それと同時に、冷や汗も吹き出してくる。


…この恐ろしい感覚は、何なのかしら?…普段は優しいお方が、本気で怒った時は怖いと申しますけれども、正に…そういう状況でしょうか?


黒い靄を纏ったカイルベルトが、フェリシアンヌを愛称で呼べば、ハッと息を吞みながら彼を見つめる。どうにも抑えられず、怒りが再燃した彼を。カイルベルトもまた視線を逸らさず、ジッと見つめ返した。彼女は何も悪くないと思いつつ、他の誰かに心を許した彼女が、心底面白くない。まだ自分はヒロインを、()()()()()()と言うのに……


 「…カイ様。テレンシス様とは、偶然でしたのよ。あの辺鄙な所にヒロインがいらっしゃるなど、思いも致しませんでした。わたくしも直ぐ立ち去る気でしたが、何とも寂し気なご様子の彼女に引き止められ、断れる勇気などございませんでしたのよ、わたくしには…。ご心配をお掛け致しまして、申し訳ございません…」

 「……っ、すまない…。貴方を責める気など、毛頭なかったのに…。ルノブール公爵令嬢が我々の味方となるか、それとも…我々の敵に回るのか、私にもはっきりとした確信が持てない。明確な確信が持てるまでは、君にも油断しないでほしかったが、既に出会ってしまったのならば、手遅れだな…」


しょんぼり肩を落としたフェリシアンヌに、カイルベルトも我に返りつつ、慌てて彼女に謝った。此処に来る以前に、ファーレスにも忠告されたというのに、自分は彼女を怖がらせてばかりだと、今度は彼がしょんぼりと肩を落とす。


 「最近、わたくしはカイ様を困らせてばかりで、カイ様を無意識に頼ってしまいます…。わたくしも…何故か貴方には、甘えてしまいますのよ……」

 「……っ!?……フェリは本当に、『俺』を扱うのが上手いな……」


彼を困らせたとばかりに、フェリシアンヌの眉は下がり、何とも申し訳なさそうに落ち込んだ。無意識に頼っては、甘えている。彼女の言葉が()()()()()()()など、彼女当人は全く理解していなかったけれども。


彼女の言葉を一言一言正確に、カイルベルトは正しく理解したようだ。それはそれで自分にとっては殺し文句だと、彼は照れながらもボソッと、辛うじて小声で呟いた。前世も現世でも、彼女には敵わないのだと。彼女はハッキリ聞こえず、彼の本音を理解できずにいる。


 「……えっ?…カイ様?…今、何と仰いましたの?…それとも、わたしくに対してまだ、怒っていらっしゃいまして?…でしたらわたくし……」

 「…いいや、違うんだ!…元々それほど怒っていないし、決して大したことを言ったわけじゃない。私の婚約者はあまりに可愛すぎるから、私の息の根を止めようとしたのか、と…」

 「……っ?!……カイ様は何を、仰っておられますの…!?」


彼女の疑問に、彼は誤魔化そうとした。真実とフェイクを織り交ぜつつ、彼女の心を存分に揺れ動かせながら。

 フェリシアンヌとカイルベルトのやり取りは、これで終了となります。甘々までいきませんでしたが、元旦那さまからお惚気が出たので、これで良しとしようかなと思います。


第2章『開幕 ~続編が始まる~』は、残すは番外編のみとなりそうです。あと数話で、第2章を終了させたいと思います。


その後、『婚約から始まる物語を、始めます!』は、暫しの間休載とさせていただきます。誠に勝手ながら、作品の構想を練り直したいと思いまして、切りの良いところで休むことに致しました。


休載した後は第3章として、新章が開始する予定としています。

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