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婚約から始まる物語を、始めます!  作者: 無乃海
開幕 ~続編が始まる~
57/66

54話 設定が…有り得ない?!

 引き続き、婚約者との会話のやり取りです。


今回、乙女ゲーの核心も…ある?

 「…フェリは優しすぎるよ。私のことは、気にしなくて良いんだ。彼女達が怒るのは、無理のない話だから。それより…君はつい最近、スラリートン・サイス先生の婚約者、ハーモニア・ケイブル嬢に声を掛けられているね?…彼女と何の話をしたか、聞いても?」

 「……っ!?………」


満面の笑顔のカイルベルトの後ろに、どす黒い影が()()()()()()()。黒い霧状の影が広がっていく様子に、見る人が見ればそう見えただろう。フェリシアンヌはそれ以前に、温和な人が怒ったら怖いと、何となく犇々と肌で感じつつ。


一瞬にしてフェリシアンヌの顔から、さあ~と血の気が抜けていき、頭の中は真っ白になる。前世の彼女であれば間違いなく、「何で知ってるの!?」と叫んだはずだ。現在の彼女は淑女の中の淑女であり、叫ぶことははしたないことだと、寸前で留まれたけれども。既に真っ青を通り越し、動揺した時点で認めたも同然で。


……しまった。フェリに、誤解させたようだ…


まるで怯えた子ウサギの如く、フェリシアンヌの顔は蒼白で、カイルベルトの問い掛けにも、固まったまま動かない。問い詰めたつもりはないが、結果として彼女を追い詰めてしまった。


 「君を責めるつもりは、決してないんだ。今まで何の接点もなかったケイブル伯爵令嬢が、君に声を掛けたその思惑がはっきりせず、私も…困惑しているんだよ。君達が使用した学園の個室は、護衛も入室できない場所だからね。ご令嬢が君に、どういう目的で近づいたのかが、どうしても気になってしまって…」

 「…………」


カイルベルトが必死に誤解を解けば、彼女は漸く落ち着きを取り戻し、徐々に血の気も戻ってきたみたいだ。パチパチと何度か瞬いた後、ジッと見つめてくる彼女。何かを確認するように。


 「同じ学年のケイブル伯爵令嬢とは、同じクラスでもあるけど、今まで特に接点もなかったし、日常会話もほぼ話していないほどで、彼女がどういう人物なのか、私も未だよく把握できずにいる。私が知る限りでは、身分問わず誰にでも優しく、年齢以上に落ち着いた上、微笑みを常に絶やさない、非の打ち所のないと思わせる令嬢だ。そんな令嬢が君に話し掛けたと知り、一体何が目的かと()()()()()()()、考えてしまうんだよ…」

 「…カイ様が仰りたいことは、わたくしも理解できますわ。わたくしもお尋ねしたいことが、ございます。何方(どなた)もご存じ上げない秘密を、カイ様は…どうしてご存じですの?」


フェリシアンヌに告げた通り、彼自身もハーモニアの人物像を、十分に把握できていないらしい。人付き合いの多い彼でさえも、表向きのハーモニアの人柄ぐらいしか、知らない。一見して何の非の打ち所のない令嬢も、何の悪意はないと判断するには、確証が足りないのだろう。


カイルベルトの説明に納得し、フェリシアンヌも理解を示すものの、どうにも府に落ちないと戸惑いつつ、疑問をぶつけてくる。何人も知らぬ秘密が、ハーモニアに関するかどうか判断できないが、彼に対して疑問を感じているのは、間違いない。彼には()()()()()()、だったけれど……


 「…ん?…どういう意味?…誰かに、知られてはいけないこと…?」

 「…ハーモニ様とサイス先生が、ご婚約なさっていること…ですわ。カイ様はどうして、ご存じですの?…わたくしは前世の乙女ゲーで、既に見知った内容でしたし、ご令嬢からも真相をお伺い致しましたので…。一部の者以外には婚約を、内密にされたようでしたけれど…」


彼女が疑問にするまで、彼自身は失言にも気付かずにいた。彼も前世の記憶を持つ者であり、ゲームで知ったとしてもおかしくはない。彼女も彼に前世の記憶があると、知っていた。だから、同じく前世の記憶を持つ彼女に、知っていると踏んで漏らしたようにも、思えたが。


その推測は違っているようだと、彼女にも分かった。サイス先生とハーモニアの関係が、内密であることはハーモニア本人に、聞かされている。フェリシアンヌが疑問に思うのは、当然で。カイルベルトも漸く、彼女の疑問に気付いた。


 「ああ、そうか。フェリは知らないのだな。王族と親戚関係にあり、王族の血を引く公爵令息という立場の私は、何れ王家を補佐する立場に立つ前提で、国の重要事項を含め知らされている。フェリは王族の血を引くものの、公爵令嬢ではないからね。教えられないのだろう。既に先生本人から、私は聞かされていたが。」

 「公爵家はそれほど大きな重責を、担う立場なのですね。カイ様はサイス先生から直接、聞かされていらしたんですの?…それは、どういうことですの?…サイス先生とは、どういうご関係で…いらっしゃるのかしら?」


如何やら彼の一言は、彼女を再び混乱させたらしい。






    ****************************






 王族の血を引いた遠い親戚の者と、国王の甥である者との立場では、明確に異なるだろう。例え、隣国王族の血を受け継ぎ、高潔な血筋だと証明されたとしても、公爵家以上の身の上にはならない。他の家柄の貴族達よりは、優位に扱われることはあれど、王族と同じ待遇を受ける権利は、ないだろう。それに関しては、どの国も同じ対応であろう。


…国王の甥に当たり、将来は王太子の側近になると約束され、私には当然の権利だと言える。彼女は王族の血を引くけれど、実際は…単なる親族の1人でしかない。当たり前のこと過ぎて、うっかりしていたようだな…。


フェリシアンヌは抑々、王位継承権を持っていなかった。例え、持つ権利を与えられたとしても、公爵家より下だ。但し、婚約や婚姻ではこの上なく上等な血筋と、持て囃されることだろう。またカルテン国とハーバー国、両国の王族傍系であり、類稀な存在でもある。彼女は、()()()()()()()で……


 「サイス先生の母君は、幼少期の私の家庭教師だ。当時から私と彼は親しい間柄であり、兄のような存在であったよ。母君の影響を強く受けた彼は、教師になりたいとよく語っていたっけ…。ケイブル伯爵令嬢との婚約も、その頃に聞いたんだ。彼が教師を目指さなければ、若しくは…彼の父親が反対しなければ、婚約自体を内密にする必要も、ないからね。」

 「…えっ?…サイス伯爵夫人が、カイ様の家庭教師?」


スラリートンの母親が、カイルベルトの家庭教師という以前に、彼ら2人が知り合いという事情は、抑々乙女ゲーの設定にはない。カイルベルトは前作に未登場で、今作でも隠しキャラという微妙な立場で、詳細な設定もないはずだが。


…そんな真相は、乙女ゲーにはないはずよ。元々、お2人が学園外で知り合う要素など、有り得ない。サイス先生の事情を語るほど、親しいなんて…。彼にとっての先生は、兄のように慕う人…?


フェリシアンヌはゲームにない現状に驚くも、軽々しく口を挟んではいけないと察して。ゲームでもサイス伯爵夫妻は、教師という職業を見下したが、現実は父親だけが反対しているらしく。


 「表向きは2人共に、正式な婚約者はいない。教師となる彼と、生徒となる令嬢が婚約していれば、色々問題視されるだろうと彼のためを思い、令嬢は身を引こうとした。その後、両家で話し合いを経て、婚約は公表しなかった。そうでなくとも一時期は、彼とお父君とは()()()()()()()…」

 「ハーモニ様も仰られていましたが、サイス先生も大変でしたのね…」


ゲームの設定で既に見知った内容を、現実で知れば知るほどに、フェリシアンヌも気が重くなる。ゲームでは彼ら親子は長年絶縁状態で、ヒロインが双方の話に耳を傾け相談に乗り、互いに歩み寄らせた。その結果、親子の関係は修復されていく。攻略対象の中で難易度が一番難しかったと、ふと思い出し遠い目をした。


 「…ああ。お父君からすれば、スラーが苦労するだけだと思い、堅実的な職務に就かせたかったのだろう。母君の家庭教師の職務とは異なり、王立学園の教師は地位が低過ぎるから…。彼らの間に入っていたケイブル伯爵は、見るに見かねて教師の地位向上を、王家に申し出たようだ。それに同意した王家も学園側に働き掛け、貴族出身の教師も含めて、長年に渡り教師を務めた者、教師として研究に貢献し、何らかの結果を残す者などに対し、条件付きではあるが身分を問わず、一時的な爵位を与えるとしたようだね。」

 「…教師にも、爵位を…?」

 「誰か1人だけを、特別扱いはできない。彼も望まないだろうが、教師は平民の方が圧倒的に多いからね。流石に今直ぐ実現するのは無理だが、数年後には正式な導入となる。サイス伯爵も漸く、納得してくれたよ。」

 「それは、良い兆候ですわね。爵位はどういう風に、決定致しますの?」

 「元々貴族であるスラーの場合では、伯爵までが上限となる。元々平民の教師達には、長年勤めたベテラン教師は男爵に、何か結果を残し貢献をした者は、子爵の爵位までが可能となる。これには王家も、()()()()()()()をしたと思うよ…」


王家の決断には、フェリシアンヌも目を丸くした。前世で例えるとしたら、社長令息が平社員で入社した後、先輩社員より先に重役に出世する中、ごく普通の一般家庭で育った平社員が、それより早く課長に出世したと、置き換えて。


前世日本には身分差がないと思っていたが、こうして見比べてみれば、貴族の如く明確な身分差がないだけで、金持ちと貧乏の格差はしっかりとあった。それでも、異世界と決定的な違いは、誰もが努力次第で上に上がっていける。そんな自由な社会は、前世の強みでもあるだろう。


カイルベルトが語る話の中でも、身分制度が絶対的な世界で、教師が爵位を授かるのは、容易くない。貴族を安易に増やせば、貴族と平民の間のバランスを崩すと、考えられている。貴族が没落することで、新たに任命して補充するのが、本来はそれが最善策である。


 「…但し、平民が授かる爵位は本人のみとし、子孫は継承できない。一度っきりの爵位として、授けるそうだ。」

フェリシアンヌ同様、カイルベルトも前世の記憶がありますが、秘密に関してはそれ以外の事情もあって。乙女ゲーの攻略対象キャラの1人、スラリー先生の事情に関連する形で、ゲーム設定では説明されない『教師の職務事情』も、ある程度設定した次第ですが…。


あまりにも中途半端に終わったので、次回へ続くことになりそう…。

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