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婚約から始まる物語を、始めます!  作者: 無乃海
開幕 ~続編が始まる~
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51話 攻略対象は誰でも救える?

 悪役令嬢の中で唯一、前世の記憶がないよ彼女は、仲間になれるのか…?

 「わたくし達の婚約は、互いの家を結び付ける政略的なもので、当時のわたくしはまだ幼くて、婚約の意味を理解できませんでした。婚約者としてわたくしを大切にしてくださる、スラリー様に出逢えたのは、幸いのことでしたわ…」

 「サイス先生は生徒達からも、慕われるお人柄ですものね…」


ハーモニアは昔を懐かしむ如く、目を細めて語るので、フェリシアンヌは恋バナを聞く友人の如く、相槌を打つ。ゲームでは険悪の彼らも、現実では仲の良い婚約者同士であるようだ。


 「彼は一度、教師となる道を諦めておられます。彼のご両親が大反対なされていることは、わたくしも存じ上げておりましたが、あれほどまでに…とは、存じ上げませんでしたのよ…」

 「…まあ、サイス伯爵夫妻がご反対を…?」

 「…ええ。彼は幼い頃から、教師を目指しておられたのですが、伯爵夫妻は高圧的な態度で、大反対なさっておられたようです。偶然拝見したわたくしは、わたくしの父にご相談申し上げますと、父は彼らの間を上手く取り持つ形で、伯爵夫妻をご説得なさいましたのよ。どのなさったかは具体的に、存じ上げませんが…」


…サイス先生が教師を志し、サイス伯爵夫妻が大反対なさるのは、全てゲーム設定の通りです。但し、婚約者の父親が彼らの仲立ちをする、そういう設定はなかったはずですわ。抑々、ゲーム開始となる以前の状況は、ゲームには出て参りません。設定集も簡易な説明のみで、詳細は載っておりませんもの。


(のち)に王立学園でヒロインと出逢い、攻略対象がヒロインに惹かれていく、その過程で打ち明けるという形式で、彼らの状況が()()()()()()()程度だ。サイス先生が教師になれば、両親とは絶縁状態になったはず…。


…サイス先生は教師となる夢を反対され、他の攻略対象達と同じく、ゲーム通りに悩みを抱えておられたことでしょう。先生の夢が叶ったならば、彼の悩みは解決されたはずですが…。婚約者の父親が解決されたとは、前代未聞では…?!


 「……ケイブル伯爵様が?」

 「わたくしがお父様に、お頼み致しましたの。彼を息子同然に可愛がっておられたお父様は、『娘が将来嫁ぐ家を、このままにしておけない』と仰って…」

 「…………」


…う~ん。ハーモニ様がケイブル伯爵様に、ご相談なさったようね。伯爵様が仲立ちされたなら、伯爵様のお手柄と言えますかしら?…それとも、ハーモニ様の作戦勝ち(?)だと、申し上げましょうか?


 「その後、スラリー様と伯爵夫妻は互いを理解するべく、歩み寄ろうと努力なされたのです。父とわたくしに生涯感謝すると、仰られるほどですのよ…」


…ケイブル伯爵様のお力あっての、功績と申し上げられますわね。そしてハーモニ様の影響も、()()()()()()()()と思われます。お2人の間に確固たる信頼関係があるならば、それで十分ですわね。


ゲームではヒロインが彼らの間に入り、説得する。ヒロインより一足先に、婚約者である悪役令嬢が…いいや、その婚約者の父親が解決してしまった。父親が表立って動いたとしても、常に彼の味方で傍に居たのは、婚約者である。その結果、攻略対象が悪役令嬢を選んでも、決しておかしくはない。


 「それは、結果オーライですわね。」

 「えっ?…けっか……オーライ?」


フェリシアンヌは彼女に、悪役令嬢仲間の認識を持ったことから、つい油断したようだ。この世界に存在しない言葉を、口に出すとは…。ハーモニアは目を丸くし、キョトンとする。


……あっ!…『結果オーライ』は和製英語で、前世の言葉でしたわ。近所の世話好きおばさま達…コホン、お姉さま達が「結果オーライよ、〇〇ちゃん」と、頻繁に使われていたので、日本人より日本人らしく生きていた、わたくしもついつい…。わたくしまで、()()()()()()()()のね……


どう誤魔化そうかと思いつつ、懐かしい思い出も浮かんだ。日本語と英語の2か国語が、混じり合うこの国の言語には、ゲームの影響も大いにありそうだが、和製英語だけは存在していない。


 「…全てが上手く纏まり、『結果的に良かった』という意味ですわ。」

 「なるほど、『結果オーライ』ですわね!」


聞いたことのない怪しい言語にも拘わらず、フェリシアンヌの説明に、ハーモニアは瞳をキラキラ輝かせ、頷いている。気に入って何よりと、上手く誤魔化せて良かったと、胸を撫で下ろすフェリシアンヌであった。






    ****************************






 懐かしい思い出が蘇り、楽しかった過去へ無意識に意識が飛ぶのは、実は…これが初めてではない。一度こうなると、理性を取り戻すのに時間が掛かる。流石に今回はフェリシアンヌも、気を付けたようだ。


 「わたくしの父は人徳者だと、領民から慕われておられます。勿論のことわたくしも彼も、お父様をお慕い申し上げておりますわ。」

 「…まあ、そうなのですね。」


にこにこにこ…と、満面の笑みで応じるハーモニアに、フェリシアンヌも笑顔で相槌を打つ。一見して身内自慢のようにも聞こえるが、親しい貴族令嬢が素直に打ち明けた、邪気のない様子にも見える。


彼女の場合は後者であろうと、フェリシアンヌは受け取った。乙女ゲーとは性格が違えど、彼女は貴族令嬢らしい令嬢である。ゲームに登場するような悪役令嬢も、中には居るだろう。高貴な存在として振舞うにしても、権力を使って威張り見下すのではなく、下の者を思いやるような高潔さを持つ。それが、()()()()()()()()()である。要するに悪役令嬢は、貴族の恥と言える見本であろうか?


…今日初めてお話できましたが、ハーモニア様は実に貴族令嬢らしい、真っ直ぐなお人ですこと。ちょっとだけ、ズレておられますが…。もしこれが演技でしたら、逆に怖いですわ。もしかしたらシアさんと、波長が合ったりして…?


フェリシアンヌも人のことは言えず、自分が如何に貴族令嬢らしいか、気付いていない。そして自分がどれほど、他人を惹きつけるかなどとは、本人は夢にも思わないことだろう。


 「ハーモニ様はアレンシアさんに、恨んだり憎んだりという感情を、お持ちではないのですよね?…では今後は、彼女を受け入れ仲良くなさることも、可能なことでしょうか?」

 「わたくしは何も、被害を受けておりません。例え、スラリー様が彼女に好意を持たれても、わたくしが口を挟むことはできませんわ。彼女には好意も憎しみもなければ、わたくしも特には彼女を、何とも思っておりませんでしたが…」


フェリシアンヌはハーモニアに、もう一度訪ねた。ハーモニアも見た目はキツく見えるものの、直接彼女と会話をしてみれば、見た目とは真逆なタイプだと分かる。何方かと言えばふんわりした印象で、優しく思いやりのある人物だ。普段は令嬢らしく毅然としていても、こうして笑うと年相応の少女にしか、見えない。


思うことをはっきり発言しても、やんわりした口調の所為もあり、きっぱり否定しているというのに、決してキツイ口調には聞こえない。それに彼女自身にも、悪意を全く感じない。


…こういうタイプを本気で怒らせたら、一番厄介なのでしょう。普段は他人に興味のない人物が、一度何かに強烈に興味を持つことで、興味が尽きるまで追求する、そういう危ういタイプでも、ありそうですわね……


一見して穏やかで優しい人物に思えるが、現実のハーモニアは全く掴みどころがないと、フェリシアンヌは感じた。アレンシアは単純明確な性格だが、ハーモニアは癖の強い人物だと見抜く。フェリシアンヌは人を見る目はあれども、自らを含んだ恋愛事情には疎かった。さて、どうやって懐柔しようかと思っていたら…


 「…ですがそれも、()()()()()()()ですわ。退学されたアレンシア様が、まさか再び学園に舞い戻られるとは、わたくしも想像だにしておりませんでした。その上食堂で、使用人として働いておられるとは、実に興味深い行動力ですこと。態々危険を伴う行動を取られてまで、一体どのような目的で学園に戻って来られたのか、興味がつきませんことよっ!」

 「……それに関しては、わたくしにも分かり兼ねますわ…」


フェリシアンヌの嫌な予感は、的中した。偶然にもアレンシアを目撃したのを切っ掛けに、興味が湧いたらしい。彼女が何故、危険を冒してまで学園に舞い戻ったのか、理由を知りたくてウズウズわくわく、と言わんばかりに。


 「…フェリーヌ様は何も、ご存じではありませんの?…昨日彼女から、何か言われたのでは…」


ハーモニアは独り言のように呟くが、フェリシアンヌの一言を聞いた途端、彼女の方を見つめてきた。まるでフェリシアンヌは知っていると、確信するかのように問うてくる。彼女が否定したことに対し、ハーモニアは疑ったわけではないようだ。食堂でアレンシアと交わした会話を、誤解したらしい。


…シアさんに気付かれた状況は、非常に不味いことではありますが、ハーモニ様をわたくし達に引き入れるという意味では、逆に絶好のチャンスですわね。わたくし達とは異なりハーモニ様は、前世の記憶がないご様子ですので、わたくし達のこういう事情を、()()()()()()()()しなくては……


アレンシアに嫌味を言われたと、勘違いしたようだ。フェリシアンヌ達と仲良くなっているとは、気付いていないらしい。だから、フェリシアンヌはこれを逆さにとり、利用しようと画策する。


 「ハーモニ様。食堂で働くアレンシアさんのことは、できましたら内密にしていただけませんか?…彼女は如何やら、二度と学園に入れない事情を、よくご理解しておられないようですのよ。それにこれには、他に複雑な事情がございまして…。わたくし達の立場も、危うくなるのですわ…」

 「…っ、勿論ですわ!…わたくしも是非、協力させていただきます。フェリーヌ様のお力になりたいと、以前から思っておりましたもの。」

 「…光栄ですわ。ふふふっ…」


こうして悪役令嬢達は、力を合わせることになった。

 フェリシアンヌとハーモニアのやり取り、続きとなります。新キャラの彼女の性格が今一定まらず、苦戦しました。登場人物が多いと、性格が被る部分も…


ハーモニアのを何とか口止めをできたので、暫くはアレンシアの存在もバレないはずですが、今後どうなることやら……

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