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婚約から始まる物語を、始めます!  作者: 無乃海
開幕 ~続編が始まる~
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49話 新たな仲間が現れたの?

 やっとアレンシアの一件も、今回で片付きそうかな…


後半からは愈々、新キャラが登場…?

 「アレンシアさんに言われると、変な気分だわ。乙女ゲー通りの展開を最も望んだのは、他ならぬ貴方なんだから…」


ゲーム通りに行動する王道キャラは、現実にはいない。あまりにもアレンシアが当然の如く語るので、ジェシカは苦笑気味に漏らす。この中で最もゲーム展開を切望した人が、現実を知ったという証拠でもあり、決して皮肉ったわけではない。


元ヒロインであったアレンシアは、ジェシカが大切に想う初恋相手を、当初は単なるゲームの攻略対象キャラとして、利用した。ジェシカも彼と出逢った頃、ゲームを通し見ていた。しかし、攻略対象ではない別の面に気付いた時、不幸になると知っているのに、設定通りの道を()()()()()()()()と思ったのだ。偶に設定に似た部分を見つければ、嬉しくもありつつも…


純粋無垢な王が国を統治者した場合、貴族が悪事を企んでも気付かずに、国を危険に晒す可能性も高いだろう。ゲームでは許されていた事情も、現実では許されない事情となる。


 「私もやっと現実を、受け入れられました。ゲームキャラ全員を否定したくないけど、現実の王太子殿下とゲームの王子とは、性格が逆みたいなんだもの。お陰で恋心は一気に、冷めちゃいましたよ。」

 「アレンシアさん。わたくしも、ジェシーと同じ意見でしてよ。元ヒロインの貴方がそう仰ったことには、遺憾なのでしてよ。ふふふふっ…」

 「そうですわ、アレンシアさん。フェリーヌが許したとは言え、貴方が語る資格はございませんわね。ふふっ…」


アレンシアは淡々と、今の複雑な心境を語る。苦笑気味であったのは、他の令嬢達も同様であったらしく、次々に彼女を非難めいた口調で、揶揄ってきた。表向きは皮肉っぽいが、本音では怒っていないようだ。今だからお巫山戯で言える、そういう状況ではなかろうか?


実際の性格がゲームとは反対だから、王太子への想いが冷めたというニュアンスに取れると、ミスティーヌは遺憾としたようだ。自分は許したと言ってないとばかりに、クリスティアは意趣返しをしたようだ。勿論、そう装うだけだったが。


 「…ご、誤解ですよ!…ゲームとは違ってやり直せない人生だと、やっと気付けたんですよ。モートン家のお祖父さまが私に罰を与えなければ、私は皇族侮辱罪でどういう処罰を受けたかと……」


乙女ゲー通りになりさえすれば、自分は幸せになれる。単にそういう理由で愚かな自分は、周りを不幸にしてきた。自分が選ばれた存在だと信じた過去を、今は本気で恥じているアレンシアである。


モートン前当主が迅速に対応せずに、若しくはフェリシアンヌが正当に抗議していれば、彼女の命もどうなっていたか…。フェリシアンヌの広い心に感謝した上で、嘘はもう()かないと決めている。


 「…皆様方、揶揄いすぎですわ。誰も誤解などしておりませんので、シアさんもご安心なさってね?」


アリアーネは揶揄(やゆ)した状況をやんわり咎めつつ、誤解を招いたとアレンシアを安心させようとした。アリアーネから初めて「シアさん」と呼ばれ、アレンシアもちょっぴり浮かれたものの……


 「王太子殿下が王太子妃殿下を溺愛しておられる話は、国中で有名な噂だと思われますが、ユーリ様を敵に回すことになれば、王太子殿下も敵に回すことになりますわね。ユーリ様のお立場次第では、わたくし達にも()()()()()()()()()やもしれませんのよ。但し、実質的な損害は、実妹同様に溺愛されるフェリーヌを除いた、わたくし達5人ですが……」


浮かれ気味のアレンシアを見ていたクリスティアが、ジェシカをちょいちょいと手招き、物騒な話を耳打ちする。決して笑えない、恐ろしい内容を…。思わずブルっと身体を震わせ、血の気も引いたが。


ゲーム設定には本来、乙女ゲーヒロインが死刑となるバットエンドは、1つもなかった。悪役令嬢は処刑となるルートはあれど、ヒロインは国外追放止まりである。王族侮辱罪で牢屋に入れられたとしても、処刑ルートはないはず。現実で有り得たかもしれないと、言われたも同然の状況に、ジェシカは恐怖が込み上げた。


…えっ?!…想像以上に真逆なの?…王太子殿下がそれほどに、怖いお人だとは知らなかった…。あの王子さまキャラは、何処に行ってしまったの?…王太子殿下は設定通りだと、()()()()()()()()()ということなのね……






    ****************************






 この後は大して進展せぬまま、フェリシアンヌ達は解散となった。現王太子妃であるユーリエルンが下した命に、王立学園の理事長も黙認するだろうと、現状維持が良いという結論に。


ユーリエルンと悪役令嬢達は接点も少なく、この件に関してフェリシアンヌが一任されることとなる。王太子もフェリシアンヌには、気を許しているらしい。王太子が彼女を実妹同様に可愛がるには、実は幾つかの理由があった。遠い親戚関係とはいえ、大国2つの王族の血を引く子孫であり、年の離れた彼女が王太子を、兄のように慕っていたことなども、要因となっているようだ。


前世の記憶を思い出す以前より、未来の王妃候補になり得る、利発で敏いという素質を持った反面、純粋無垢という性格も持ち合わせていた。彼は自分の妃候補ではなく妹として扱い、彼女をあらゆる者達から護ることにした。


他国の王族の血も引く彼女を、カルテン国以外の国も政治的に利用する、そういう可能性が考えられたからだ。将来的に彼女を()()()()()()()()()、護るべき異性が現れるまでは…。但し、彼女の最初の婚約者に問題があった所為で、彼女を手放す機会も失っていたけれど。


現在の彼女の婚約者であれば、十分に彼女を任せられると思うものの、一度手放す機会を失った後なので、そう簡単に手放せなくなってしまった。実妹同様に愛する存在を今更、単なる王族の親族の1人として扱うなど、できそうにない。


幸いにも王太子は、彼女を1人の女性として見ることもなく、彼女もまた彼を1人の異性として、見たことはなかった。設定通りの王太子だったならば、ヒロインではなく妹以上に彼女を愛する、()()()()()()()()()()かもしれない。優し過ぎる彼女を王妃にしたくないという、王太子の意見に国王も賛成らしく、他国の王女と婚約することになる。


結果的に彼は、悪役令嬢となるはずだった婚約者を愛し、ゲーム設定とは別の道を自ら選んだ。王太子と一緒に勉強をする為、幼少期から王宮に通うフェリシアンヌも、王妃たる重みを十分に知っており、王妃になりたいとは思わない。


彼が時折見せる姿を垣間見て、彼の腹黒さに何となく気付く。兄(=王太子)のような人が理想としながらも、彼を1人の男性として愛することもない。その結果、あの愚かな婚約者を選んだとは、皮肉な運命とも言える。


 「ごきげんよう、ハミルトン侯爵ご令嬢。突然、わたくしのような者がお声を掛けてしまい、申し訳ございません。」


翌日、フェリシアンヌが1人になった時、誰かが声を掛けてきた。うら若き女性の声であるものの、聞き覚えのない声だと思う。彼女が警戒しつつ振り返った先に、今まで何の接点もない上級生らしき女生徒が、凛とした様子で立っていた。


上品な笑顔を浮かべた女生徒は、遠目に何度か見掛けたことはあれども、一度も話す機会はなかった。それにも拘らず、目の前の女生徒はそれ以上に、どこか懐かしいと感じるような、見覚えのあると言える人物で……


 「……ごきげんよう、ケイブル伯爵ご令嬢。お声を掛けていただき、光栄に存じましてよ。何かございましたでしょうか?」


女生徒は彼女達と同じ乙女ゲーキャラで、最後の1人となる悪役令嬢、ケイブル伯爵令嬢だ。前作から登場するキャラであるものの、彼女達とは何故か一切関わることもなく、フェリシアンヌも今日初めて、真面に話した次第である。


本来ならば既に彼女達と、共に行動していてもおかしくはない状況だが、悪役令嬢達の誰1人として、接点のないまま過ごしてきた。その為、ケイブル伯爵令嬢に前世の記憶があるかどうか、全く知る機会もなかった。フェリシアンヌは丁度良いとばかりに、快く受け入れることにした。


 「…実は昨日、食堂で例の女性を()()()()()()()()、ハミルトンご令嬢に絡まれたように、お見受けしたのですわ。それでわたくし、気に掛かりましたのよ…」

 「……っ!!………」


ケイブル伯爵令嬢も明言は濁すものの、しっかり見られてしまったらしい。伯爵令嬢に嘘を吐いた様子はなく、本当にあれを目撃されたようだ。アレンシアが絡んだと誤解したようで、フェリシアンヌを本気で心配する様子が、見られた。自分達に優位な勘違いで良かったが、アレンシアの正体を知られるのは、非常に不味い。


…不味いですわ。沢山の生徒達に目撃されておりますので、隠しようのない事実ですけれど。会話の内容は聞かれてないものの、ケイブル伯爵ご令嬢はシアさんの顔を、しっかり覚えていらしたようね…。どう誤魔化そうかしら?


身分の下の者から先に話し掛けると、先ず最初に詫びを入れてまで、声を掛けてきたケーブル伯爵令嬢には、悪意は全くない様子だ。誰もが通るこの場所で、これ以上話すのは危険だと判断したフェリシアンヌは、上位貴族専用個室に伯爵令嬢を招いた。この個室に入室したことがないのか、伯爵令嬢は上品な態度を崩さず、部屋の中を見回す。侯爵令嬢と見間違うほど、品のある所作である。


2人が席に着くと、個室専属の使用人が、紅茶とお菓子を用意した。使用人が退席した後、互いにお菓子を摘まみお茶を数口飲み、漸くフェリシアンヌは話を切り出す。本題に入るべく……


 「早速ではございますが、わたくしもケイブルご令嬢には、お伺いしとうことがございますのよ。ケイブルご令嬢はアレンシアさんのことを、どのように思っていらっしゃいますの?…もし、彼女が許しを願い出た場合は、許して差し上げることは叶いますでしょうか?」

 前半で終わる予定が、後半にちょっと状況説明が食い込んだ為、新キャラとの遣り取りが少なくなってしまいました。当然ながら、次回に続きます。


やっと最後の悪役令嬢を、登場させられた…。前作の頃から、ゲーム設定という中には居たのですが、50話を前にして漸く登場とは。次回はもう少し、新キャラの性格にも焦点を当てたいですね。



※小説更新する際に、Twitter以外でも下記サイトの方で、自作小説に関する情報として、執筆上での裏話など呟いています。毎回必ずではありませんし、数時間遅れてという場合もあり、気ままに書いています。興味のある方は、お気軽にお越しくださいませ。スマホも、閲覧可能です。


   無乃海の小部屋   https://mizunyan.com/nanomi/

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