表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約から始まる物語を、始めます!  作者: 無乃海
開幕 ~続編が始まる~
50/69

47話 罪に問うべきか否か?

 アレンシアに協力した(?)人物は、誰なのか?…今回、分かるのか…?

 ジェシカの疑問に対して、フェリシアンヌが説明をする。時にはクリスティアが代わりに説明をし、またアリアーネも補足をして、ミスティーヌも引き継ぐように説明に加わった。当初はジェシカもふんふんと相槌を打ちながら、真剣に話を聞いていたのだが、段々と顔色を青くしていき、今では頬まで引き攣らせている。前作ヒロインと同じ庶民出身でありながらも、片やジェシカは常識を持ち合わせているようだと、皆が感じることだろう。当のアレンシアを除いては……


 「今お聞きした話を纏めれば、アレンシアさんは学園から退学処分を受けたにも拘らず、学園の許可もなく食堂で働いていた…と、()()()()()()いますか?」

 「そうですわ。何が起ころうとも、二度と学園に来る資格がないと、学園側から厳しく言い渡されたはず、なのですが……」


ジェシカはくらくらする頭を抑えつつ、今聞かされたばかりの話を真剣に受け止めるべく、話の要点を纏めた。それに応えたクリスティアは苦笑気味で、アレンシアの方をチラリと見れば。


 「…うっ……。私、すっかりと忘れていました……」


今思い出したとばかりにハッとし、目を見開いたアレンシアはその後、しょんぼりと顔を俯く。まさか本当に忘れていたとは…と、クリスティアは呆れ顔で見つめ、ジェシカもジトっとした目で見やり、他の者達も苦笑するしかなく。


 「本当に、愚かな行為ですわ。学園を追い出された立場で、再び学園に潜り込もうなどと、普通の人間の神経では有り得ませんことよ。お姉さま方も、そう思いませんこと?」


クリスティアに同意したようでいて、露骨に馬鹿にしたような口ぶりで、実に悪役令嬢らしくミスティーヌが発言した。アレンシアが如何(いか)に普通の神経ではないと、自分達を含めた普通の人間が、絶対に考えも及ばないことをするという、貴族特有の言葉で()()()()()()()()思えるが、その言葉に反し口調は優しげで。


 「……ううっ、そうですよね。私は退学したんじゃなく、退学させられた側ですよね…。普通だったら、絶対にやらないことですよね…。だったら私、普通じゃないのかな……」


ミスティーヌの言葉通りに受け取ったアレンシアは、益々しょんぼりと肩を落としたようだ。ミスティーヌも言い過ぎたと思うのか、直視できぬかの如くアレンシアから視線を外し、彼方此方(あちらこちら)に目を泳がせた。


 「…まあまあ、宜しいではございませんの。アレンシアさんも悪気のないご様子ですし、今回の一件を通し反省してくださることでしょう。」

 「…ア、アリアーネさま………」


ミスティーヌとアレンシアの間に漂う暗い空気に、見るに見かねたアリアーネが割り込んできた。悄気たアレンシアを庇う素振りを見せ、また動揺するミスティーヌに助け舟を出し、空気を和ませようとする。アリアーネの優しさに、アレンシアが感激した様子でうるうると瞳を潤ませ、上目遣いでアリアーネを見上げる。


まるで「一生ついて行きます」と言い出すレベルだと、フェリシアンヌ達は生温い視線で見守った。あまりにも単純な様子のアレンシアに、ミスティーヌだけは毒気を抜かれたようだったが。


 「……わたくしも少々、言い過ぎたようですわ。ですが、もう既にアレンシアさんだけの問題では、ございませんのよ。フェリーヌお姉様は、どうお考えでいらっしゃいますの?」

 「そうですわね…。これは、深刻な問題でしたよ。今日のシアさんの一件が何方(どなた)かにバレますと、シアさんはどうやって学園に潜り込んだのか、それが一番の問題となりますわ。さすれば先ず、学園に導いた者の正体を探られますわね?」

 「…なるほど、漸く理解出来ましたわ。()()()()()()()()のは、わたくし達だということですね…」

 「…ええ、そうですわ。アリアお姉様やミスティが疑われる可能性は、非常に低いと思われますけれども…。一応は事前に耳にお入れしなければ…と思いまして、こうしてお呼びだて致した次第ですのよ。」


ミスティーヌは気まずそうに、またどっと疲れた様子を見せつつ、話題を切れ変えてはフェリシアンヌに、意見を求めてくる。具体的な問題を提示することで、疑問に応える形を取ったフェリシアンヌに、ミスティーヌもまた理解を示した。例え、疑いが向く可能性が低いと言えども、ゼロではない。関わる者は皆、全てを知る権利があるという、フェリシアンヌの配慮でもあった。






    ****************************






 「ジェシー。貴方は元々、王立学園とは部外者ですし、疑われる可能性もほぼございませんでしょう。男爵家子息の婚約者だと言えど、今はまだ庶民の身分ですから、貴方自身が学園に顔が()きませんし…」

 「…あれっ?…そうですね。それなら何故…私も、呼ばれたのでしょう?」


アレンシアの向こう見ずな行動で、自分達の立場が悪化する状況に、自分も疑われることになるかもしれないと、ジェシカはどんどん不安が膨れ上がった。王立学園のことを何も知らないから、余計に。


そういう状態のジェシカに、フェリシアンヌは優しく微笑みかける。疑われる可能性は限りなく低いとしながらも、王立学園の生徒でない彼女を呼んだのは、彼女は歴とした自分達の仲間だから、という理由に他ならない。学園の生徒ではないからと言って、知る権利まで奪うのは違う、と。いざという時に備え、悪役令嬢全員が情報を共有して置くことも、大切なのだから……


 「例え、貴族に伝手がございましても、貴方本人が侵入不可能な限り、罪を問われることはないでしょう。ですが念には念を入れ、ジェシーも情報を共有した方が良いですわ。わたくし達は一蓮托生を誓う仲であり、貴方にも真実を知る権利がございますもの。」

 「フェリーヌ様は…私のことを、そこまで心配してくださるのですね…」


ジェシーを呼んだ理由に、フェリシアンヌは別の意味も含ませているが、ジェシーは言葉の意味そのままに受け取ったらしい。彼女はまだ、貴族特有の表現に慣れておらず、関わったと後から勘繰られるより、先に知らせて情報を共有するという、隠された意味に気付かないようだ。


ジェシーは嬉しそうに微笑み、はにかんだ笑顔を見せる。ここまで自分を心配してくれたフェリシアンヌに、心底感謝したようだ。それに気付いて苦笑気味になれども、フェリシアンヌはジェシーの勘違いを正そうとしない。


…心配を致しましたのは、嘘ではございませんもの。彼女も何れは、貴族が使う言葉の本当の意味を存じられることでしょう。今は大した問題ではないですし、寧ろ今はまだ本当の意味を、ご存じない方が良いでしょうね…。


ジェシーとアレンシア以外の者は、フェリシアンヌの真意に気付くも、誰1人として何も言わない。ジェシー本人が気付いても気付かなくとも、大事には至らないと思ったからだ。貴族に嫁ぐということは、そういう状況に常に晒され続けることになる。最小限と言えども、悪意には慣れねばならないが。


 「…フェリーヌとクリスは、真っ先に疑われるのでは?…アレンシアさんとの仲の良さが、(あだ)にならないと宜しいのですが……」

 「寧ろ、仲が()()()()()()()()、疑われてしまうかもしれません。関係が悪化すれば尚更、疑いが掛かることでしょう。特にわたくしは…」

 「それは…今も貴方が、アレンシアさんを恨んでおり、復習しようとアレンシアさんを罠に嵌めたと、疑いが掛かるという意味ですね?」


アリアーネはコホンと咳払いをし、核心をつく疑問を口にする。まさかアレンシアとの仲の良さが、彼女達を危機に陥れるとは…。一度和やかになった空気が再び、緊張感を漂わせる空気へ変わる。誰もが息を呑みフェリシアンヌを見つめ、彼女の答えを待てば…


フェリシアンヌの答えは、予期せぬ内容だ。仲の良さがどうだろうと、彼女1人だけがそれほど疑われるなど、思いもせずにいた。自分のことなのに淡々と語る彼女に、誰もが返す言葉を失くし、ただただ呆然となる。


『シ〜ン』と、擬音が聞こえそうな静けさだ。フェリシアンヌばかりが何故…というのが、この場に居る者たちの()()()()()()である。例え、自らの疑いは晴れたとしても、彼女だけが疑われるのは辛く、手放しでは喜べなくて。どう声を掛ければいいのかと、皆が戸惑っている間に、フェリシアンヌが動く。


  「…シアさん。これから大事なことを、お伺いしたく存じます。貴方にご協力をなさったお方は、一体何処の何方でして?」


ふいにフェリシアンヌがアレンシアに向き直り、彼女の謎の協力者について問い掛けた。内容が内容だけに再び緊張感が漂い始めるが、この場の誰もが息をするのを忘れるほど、アレンシアの反応に注目した。誰もが息を殺しすぎて、唾を飲み込む音さえ聞こえそうだ。


数秒の間の経過後、アレンシアは恐る恐るという様子で、口を開いて閉じてを何度か繰り返した。その後、漸く意を決したように顔を上げ、フェリシアンヌを真っ直ぐ射貫く。


 「…実は、私が食堂で働く少し前、王太子妃様から手紙をいただいて…。手紙には『わたくしが貴方に、力をお貸し致します。貴方がわたくしの協力者となるならば、王立学園の学食で働けるよう、お取り計らい致しましょう。』と、書いてあったんです。そういう訳で王太子妃様のお陰で、正式に採用されたんですよ。」

 「「「「「……………」」」」」


アレンシアが語る内容は、フェリシアンヌ達の予想外すぎた所為で、頭の中が真っ白だ。よもやこの国の王太子妃ユーリエルンが、裏から()()()()()()()とは、想像だにしていない。


…あれれ?…これってもしかして王太子妃様と言えど、不味かったのかな…?


ジェシカは単に驚いただけのようだが、令嬢達は微動だにしなくなる。アレンシアは不思議に思い、小首を傾げた。貴族令嬢より平民意識の強い彼女には、彼らが固まる理由が分からずに。


 「え〜と、もしかしなくとも王太子妃様も、何らかの罪に…問われます?」

 アレンシアの謎の協力者は、この国の王太子妃さまでした。アレンシアが心配するように、王太子妃も何らかの罪に問われるのか……


フェリシアンヌの乙女ゲーでの立場は最悪なので、現実でも彼女が最悪な状況を想定するのも、無理はないですよね…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ