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婚約から始まる物語を、始めます!  作者: 無乃海
開幕 ~続編が始まる~
48/66

45話 悪役令嬢達の一大事!?

 元ヒロインの騒ぎの所為で、主人公たちも巻き込まれることに…?

 「えっ?…そこまで考える必要が、ありまして?」

 「…最悪の場合は反逆と捉えられても、致し方ございませんわ。わたくし達が毅然とした態度で無実だと、シアさんのなされたことを単独で行ったと立証すれば、良いことでしょう。ですが…それはそれで、無責任なことでもありますもの。それならば最初から、避けるべきでしてよ。」


あまりにも飛躍する話に、目を丸くしたクリスティア。アレンシア1人に責任を負わせるのは、実に簡単なことだが、フェリシアンヌ達悪役令嬢が関われば、問題が大きくなるという一大事であり、由々しき事態なのである。


これほど問題視をされる理由に、クリスティアも心当たりがある。アレンシアは王立学園に在学中、フェリシアンヌという高貴な者を貶めようと、大問題を起こしていたからだ。本来ならば、アレンシアに下される処分は、王立学園を退学となるだけでは済まないほど、重いものである。


彼女の実家となるモートン子爵家が、アレンシアを追放するという処分を、迅速に独自で行わなければ、国からの処罰を受けた筈だ。その結果、王家は彼女を見逃すしかなくて……


 「ア……シアさんは、其れなりに更生されたのでは?…勿論、勝手に学園に入った今回の件は、罰せられるかもしれませんが…。敵であったわたくし達が許せば、彼女の罰も少しは軽くなるのでは?…わたくし達も罰せられるとは、具体的にどういうことですの?」


クリスティアは今一、納得がいかないようだ。敵対していたあの頃のアレンシアを知っている所為で、彼女を許したとは言えど、()()()()()()()見えない壁が、彼女達の前に立ち(はだ)かるようだ。どれだけ彼女を許そうと、まだ完全に信用したとは言えない、と…。


 「クリスが疑問を感じられるのは、致し方ございません。クリスは、どうご説明なさるおつもりかしら?…乙女ゲームや前世の世界の事情を、どのように納得させるおつもりでして?」


前世や乙女ゲーという事情を、身内どころか誰にも話していない。ヒロインや悪役令嬢という言葉も、この世界には存在しない言葉だ。これまでも、アレンシアが無知だという認識で、この世界の人々にはそう捉えられている。彼女を許し仲良くすれば、心の広いご令嬢たちだと認識されるはず、なのに…。


 「…前世やゲームのことは、話す必要はないのでは…?」


フェリシアンヌの説明は、クリスティアにどうしても伝わらない。前世やゲームのことなど、話す必要もないと思っていた。前世の記憶のない者に、話したところで理解してもらえるかどうか、分からないのだから。


 「あの規律の厳しい学園に、シアがどのようにして入り込んだのか、それが最大の問題となりましてよ。その王立学園に、彼女が現在出入りなさっている、その事実は変わりませんわ。では、彼女はどのようにして、学園に出入りできますの?…学園は時には王族も学ぶ場所だと、クリスもご存じでしょう。学園への出入りが許された者の中には、学園の教師と生徒以外には、食堂で働く者や教室の掃除する者など、庶民の者達も少数働いておりますわ。ですから、非常に厳しく検問されるそうですのよ。本来はシアさんが()()()()()()()()、絶対に有り得ないのです。」

 「……っ!!…………」


フェリシアンヌはクリスティアにも、分かりやすく説明をした。学園の警備は厳しくて、部外者は簡単に出入りできないという。前世の日本でも、社員以外の者が会社に紛れ込まないよう、入社の度に社員カードを提示させ、受付で確認したりと、各企業で対策を取っていた。この異世界でも、それは同様らしい。


前世の学校では、生徒達には学校から学生証が配布され、登校時は常に持参する義務が生じた。学生証は、その学校に通う生徒たる証だ。しかし、この異世界には学園の()()()()()()()は、何もない。


王族や貴族令息令嬢たちに、本気で害をなそうとする者が、学園に入り込む可能性はあると、生徒は授業途中で帰宅できない仕組みだ。貴族の生徒以外は毎回必ず、検問も行われるそうだ。学園側としては、大切な貴族子息を預かっているのだと、何か遭ってからでは遅いとして、厳重な警護で周りを固めているようだ。


外部の者が出入りするのは、容易ではないだろう。その上でアレンシアが難なく出入りできたのは、手を貸した協力者が居るのだと、そう判断されてもおかしくない状況なのである。


 「…ま…まさか、わたくし達がシアさんに、力を貸したことに…?」


漸くその可能性に気付いたクリスティアは、呆然とするのであった。






    ****************************






 「ええ、その可能性がございます。何しろわたくし達は、最近はシアさんと仲良く接しておりますし、特にわたくしとクリスは、疑われそうですわ…」

 「……へっ!?……わ、わたくしも?…何故ですの?」

 「…特にシアさんと仲の良いのは、わたくしです。クリスはわたくしの大親友ですので、わたくしと共に疑われるかもしれません。」

 「…………」


クリスティアも漸く、察しが付く。自分達が疑われる理由が、アレンシアと打ち解けたことだとは、皮肉なものだ。然も、アレンシアと親しいフェリシアンヌが疑われると、彼女の親友であるクリスティアも、疑われることになるとは。


自分達を蹴落としたい貴族は、そのようにこじつけてでも、この機会を逃さないことだろう。改めてこの異世界では、そういう事情が()()()()()()()なのだと知り、前世の方が何倍も暮らしやすいと、クリスティアは過去に思いを馳せる。平凡なのが一番だなあ、と…。


 「…そんな風に、こじつけられるなんて…。折角、乙女ゲーの設定に強制されないのだと、安堵しておりましたのに…。証拠がなくとも犯罪者にされる可能性もあるとは、異世界ではひと時も安心できないのね……」

 「…クリスが仰る通り、厳しい世界でしてよ。特に、前世の世界の日本が平和過ぎた所為で、余計にそう思えるのでしょうね?」


クリスティアは殊更に「はあ~」と溜息を吐き、自らの顎下に両手を添え、頬杖をした(てい)を取る。当然ながらこれは、現世でも行儀が悪い類だ。フェリシアンヌは呆れながらも、クスっと笑いを漏らすだけで、特に注意はしなかった。前世は外国人であった彼女だが、飽くまで日本人として生きた彼女にとって、クリスティア以上に状況が理解できているようだ。


王立学園に置いては、学園に申請することで自由に使用可能な部屋、即ち個室が幾つか存在する。たった今2人が居る場所も、そうだった。王立学園にはそういう目的で用意された個室が、貴族の上下(ランク)により使用可能な部屋のランクも、決められている。また王族専用の部屋もあり、王族のみ使用可能だ。例え王族が許そうとも、掃除などの勤務者以外では、王族以外の者は何人(なんぴと)も入室できない。


個室の部屋数は少ないが、上位貴族専用の個室もある。今現在、フェリシアンヌ達が利用するのも、上位貴族用の個室だ。公爵家・辺境伯家の子息まで利用可能で、その中でも王族の血を引くフェリシアンヌは、特例だと言える。


最も多い利用可能な個室は、侯爵家子息と伯爵家子息までとする。こうして貴族の高位順に、個室ランクも変化する。当然ながら個室内部の装飾や待遇も、異なる待遇とされた。子爵・男爵の子息達には元から、用意されていない。他の上位貴族にくっついて、一緒に個室を利用するしかなく…。


これらのことからも、上位貴族には必ずというほど、下位の者達が取り巻きを作り派閥を作っていく。取り巻きとなるのは大抵、伯爵家以下となる者達だ。この国でも伯爵家は上位貴族扱いだが、身分上一番多い貴族でもあり、上位貴族以上に裕福な家庭や、下位貴族のような貧しい家庭もあり、()()()()()()()身分だ。


アレンシアの元実家モートン子爵家が、稀に見る裕福な家庭であったのも、現在の当主の夫でアレンシアの実父に、其れなりの商才がみられたからであろうか。領地とは無関係の商売で儲けたという、稀なケースのようだ。


モートン家は現在、アレンシアの実母でモートン家長女が、漸く先日になって家督を継いだばかりだ。まだまだ家長としては頼りなく、当分は勉強する身分でもあるようだが、前代モートン当主の健康上の問題から、傍で彼が補佐を務めながらも、実母が実権を握っているらしい。夫の方は子爵家経営に関わらず、これまで通り商売に全力を注いでおり、夫人が家督を継ぐこれまた珍しいケースであった。


アレンシア同様、実家から罰を受けたハイリッシュ。その彼の実家キャスパー公爵家でも、モートン家同様の事態が起きていた。彼の実父で前当主は、妻の公爵夫人と結託した彼の兄弟や親戚達から、キャスパー家の最奥となる領地の中の僻地に、追い払われていた。其処では、庶民同然の生活を送っているとかいないとか、そういう噂が出回っているものの、真相は()()()()()()()()()いない。


その後正式に、ハイリッシュの実母の公爵夫人が、現キャスパー家当主を受け継いだのである。但し、これは飽くまでハイリッシュの実弟ラングルフが、正式に家督を継ぐまでの間の代理として、就いただけと言われているのだが……


実際に夫人は穏やかな人であり、母子も仲睦まじい。普段から気の弱い母と思われていた夫人だが、今はその面影が嘘だったと言わんばかりに、当主らしい気丈な振る舞いであるようだ。元来の夫人は頭の良い女性とされ、男性として生まれてこなかったのが惜しいと、言われていた時期もあるようで、公爵家当主代行として十分な力を発揮していると、噂されていた。


 「何時の日にか、身分差も男女差もない時代へと移り変わる日が、訪れることでしょう。学生のわたくし達に耳を傾ける者は、今はまだ…ですわ。わたくし達は己の進む道を信じ、共に邁進を致しましょう。例えその道がどれほど遠くとも、共に歩めば辛いことなどございませんものね?」

 フェリシアンヌとクリスティアのやり取りです。何故巻き込まれるのか、それに関して語っています。フェリシアンヌの実家ハミルトン家は、母親が他国の皇族の血を引いており、また父親も王族の遠い親戚と言える家柄で、彼女自身も何かにつけ特別待遇となっています。但し、両親も現国王の兄弟姉妹ではなく、それ以下の親族である為、王族専用の個室は使用できません。


アレンシアが学園の掟を無視したことが、どれほどの騒ぎとなるのかが、今回明らかになりました。

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