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婚約から始まる物語を、始めます!  作者: 無乃海
開幕 ~続編が始まる~
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42話 妹も婚約者も大切な…

 馬車の中の会話、続きです。今回は、兄がメインの話となりました。

 「アリアが…悩んでいる?…やはり、そうだったのだな。噂の令嬢が王立学園に入学した直後から、アリアの全体的な雰囲気が変わったように、私も感じてはいたのだが…。以前のアリアは、殆ど自己主張もできなくて、相手にただ従う言動が多く見られたが、最近の彼女は令嬢を頻りに気にして、私があの令嬢とお近づきになると信じたのか、警戒する様子を見せていたよ…。」

 「…噂の令嬢とは、アレンシアさんのこと…ですか?」

 「…う〜ん、そういう名だったかな。婚約者以外の女性に興味がなく、名前までは覚えていないんだよ。」


兄モーリスは、フェリシアンヌとよく似た容姿で、乙女ゲー攻略対象というだけあって、カイルベルトにも劣らないイケメンである。金に近い銀髪の髪と青い瞳という、ハミルトン家当主と同じ色を纏う彼は、特定の婚約者がいるにも拘らず、異性からは非常にモテる。例え彼が婚約者以外に、興味を示さないとしても…。


兄は婚約者の悩みに対し、思い当たる節がある様子を見せた。そう言えば…あの頃からだろう、彼女の様子が変わったのは…。彼はふと、過去の思いへと巡らせる。彼の読みは、ある意味では当たっているようだ。


実はアレンシアの言動が切っ掛けで、アリアーネは前世の記憶を薄らと、思い出しかけたらしい。但し、この世界と激似の乙女ゲーの記憶が、唐突に頭の中に蘇ってきたのは、第一弾乙女ゲーと似た状況が終了した、その後である。前世の記憶を思い出す前に、彼女はヒロインの存在に危機感を持ったようだ。彼女は元々大人しい令嬢であり、記憶が鮮明に思い出せない中、1人恐怖を抱えていたのだろう。


 「流石、お兄様ですわね。ご自分の婚約者のことを、よくご理解しておいでですのね。わたくし、お兄様のことをご尊敬申し上げます。」

 「…ハハッ。アンヌは非常に賢い子だ。()()()()()()()()()、上手い。それを理解しつつも、アンヌのような優しい妹を持てたことには、私にとって一番の誇りだと言えるな。」

 「……もう、お兄様ったら、ふふふっ……」


もし、前世の彼女がこの会話を聞けば、目を点にして呆然と眺めるか、あまりにも臭いセリフだと目を逸らすか、呆れてものも言えない状態か。正直フェリシアンヌも、この世界のやり取りに慣れただけで、心の中では無の状態である。


 「今後はアリアのことに、十分気にかけるよう努力をしよう。彼女の相談事に関しても、婚約者として何時(いつ)でも力になると、約束をしよう。アンヌもこれで、安心出来るかな?」

 「はい、お兄様っ!…勿論、安心致しましたわ。お約束いただき、本当にありがとうございます!」

 「アンヌが礼を言うのは、おかしな話だよ。()()()()()()()()、私が当たり前のことをするだけだと言うのに。」

 「確かに…わたくしがお礼を申し上げるのは、筋違いですわね。それでもお兄様がアリア様を、大切になさっておいでなのだと、改めて感じましたのよ。当たり前のことだとしても、わたくしは嬉しいのです。」


モーリスとアリアの関係は、親同士が決めた婚約者同士ではあったが、単なる婚約者という名目以上に、モーリスがアリアを溺愛していると、社交界でも専らの噂となっている。妹に頼まれるまでもなく、何時でも婚約者を守るつもりだが、妹が気遣うことに重きを置き、妹の願いを叶えたいと思う。()()()()()()()()()、大切な存在なのだと言えた。


自分の約束を叶えてもらえるかの如く、満面の笑顔で喜びつつも、まるで婚約者の代わりというように、お礼を伝えてきた妹に、婚約者として当たり前のことだと、兄が苦笑気味で伝えれば…。


兄が婚約者を大切にしていると知り、妹は感激した様子を見せた。不意にあの令嬢の姿が思い浮かべば、令嬢に唆された者達が自らの婚約者を蔑ろにした、それには我が妹も含まれていたと思い出し、不機嫌になったモーリス。貴族として政略結婚は当たり前で、その当たり前の事情を軽んじた彼らに、今も彼には理解出来ないことだと、眉を顰める。


 「…あの令嬢が最近になって、手紙でアンヌに謝罪してきたと、父上からお伺いしたよ。それは…本当なのか?…今更になって態とらしく謝罪をするなど、一体何の目的があるのかと、疑うな…。()の令嬢の謝罪を、無理して受け入れることはない。アンヌも十分、用心するのだよ?」



…アレンシアという元子爵令嬢が、またアンヌに近寄っているなど、絶対に許せない事実だ。父上から話を伺った時の私は、内心では怒りで激しく罵りたいと思ったほどだよ。勿論貴族令息として、そのような素振りは一切表に出さないが…。妹達やアリアにまた危害を加える気なら、今度は徹底的に容赦しないつもりだ。優しいアンヌや怖がりなアリアを、絶対に守る為にもね……






    ****************************






 「…アリア。最近の君は、何か重大な悩みを抱えているらしいね?…アンヌからそう聞いたんだよ。君が()()()()()()()()何も相談しないのは、私はそれほど…君にとっては、頼りないのかな?…それとも…君の婚約者として、私は受け入れてもらえていないのかな?」

 「…………」


2人はいつも通り、学園の食堂で一緒にランチをしていた。貴族は食事中に会話をしないと思われがちだが、実際は食べ物を口に入れている間の会話が、タブーとされているだけだ。要するに、口に入れなければOKだ。学園では多少のマナー違反も許されるが、貴族の彼らには既にそれが習慣となっており、そう簡単に習慣が変わることはない。


マナーを重視する貴族は、食事の時間を十分に取っている。一口食べてはお喋りを楽しみつつ、ゆっくりと食事をする。但し、授業の時間など時間が決まっている学園では、ゆっくり食事をするのも限界がある。


時間ギリギリまでランチを楽しむ、それが学園での貴族の習慣となった。教師陣もまた貴族出身が多く、ランチ後の授業を各自が自習する時間、とした。自習をする者は早くランチを終え、また逆に自習が必要なければ、長めにランチを取ることができるように、貴族に取って良い条件へ変更されたのである。


アリアーネとモーリスは、婚約者同士で食事をしているが、周りの学生達全員が婚約者同士で、食事をしている訳ではなかった。生徒達の大半が同じ学年の同性同士で、食事をする。フェリシアンヌも然り、クリスティアも然り、またミスティーヌも然りであった。クリスティアは今の学年になって以降、正式に婚約した。今更、婚約者と共にランチをしようとは、思わない。フェリシアンヌもまた、以前の婚約者とは別々だったので、今更…ということらしい。


モーリスと共に食事していたアリアーネは、不意に彼からの意外な問いに、驚きを隠せずにいた。前世の事情を含むデリケートな内容を、フェリシアンヌが前世の記憶を持たない兄に、話したということ自体に驚く。


その上、彼自身に問題があるかのような言葉にも、驚愕した。彼女もモーリスのことは、前世の乙女ゲーの頃から推しではあったが、現世では親が決めた婚約者以上に、彼を愛していたからだ。彼に対しての不満など皆無であり、彼が頼りない存在と思っているとか、彼を婚約者として受け入れていないだとか、彼女にとっては寝耳に水のような内容で…。


…モーリス様、今日は…どうされましたの?…悩みを相談しなくて、彼にご心配をお掛けしたことは、わたくしの落ち度ですのに…。モーリス様を頼りないなどと思ったことなど、一度もありませんわ!…わたくしの婚約者として、モーリス様を前世の推し以上に、お慕い申し上げておりますわ。わたくしの重大な悩みと、モーリス様に関するわたくしの所見が、どう結びついたのかしらね……


前世からアリアーネは、決して頭が良い方ではないが、頑張って上位の成績を取っていた、努力家でもあった。但し、彼女は少々感覚がズレており、フェリシアンヌほど恋愛そのものに鈍くないが、恋愛感情に対する事柄には疎い。


今のところ彼女は、モーリスに対しても婚約者として振舞うだけで、彼に本気で恋をしているかどうかさえ、自分の心が分からない。前世で乙女ゲーに嵌った時は、確かに彼が推しであったけれども、未だに推しとして慕う気持ちからか、彼に本気で恋しているのかは、判別できていなかった。


それでなくとも最近になって、前世の記憶を思い出したばかりである。記憶を戻す前の彼女が、彼をどういう風に見ていたのかは、彼を尊敬する対象で見ていたらしいとしか、はっきりしていない。


…きっとわたくしは、これまでは政略結婚のお相手として、モーリス様を見ていたのでしょうね?…この世界でのわたくしは内向的タイプで、過去の世界よりも更に大人しい性格のようです。モーリス様からのご好意に対しても、彼に嫌われないように考えてばかりで、彼とは()()()()()()()()()()()ようですわね……


要するに彼女は、本気で恋するのを恐れていた、と言うべきか。恋愛感情を持ち始める前に、無意識に自分の心に蓋をした。例えるならば、乙女ゲー通りに婚約破棄となっても、政略結婚なのだからと後悔しないように…。


 「……モーリス様。確かに最近わたくしは、悩みを抱えております。その悩みに関して、貴方に…ご迷惑をお掛けするような、悩みなどではございません。貴方のことを頼りないなどとは、わたくしは一切思ってもおりませんでしたわ。両家のご当主がお認めになられたことですし、貴方を受け入れないなどと有り得ないことですもの。それ以前に、わたくしにはそのような資格もございません。それに…昔からわたくしは、実の兄のように尊敬しておりますから…。」


アリアーネはブンブンと音がしそうなほど、首を振って告げる。モーリスは何故か機嫌よく、自らの顔を彼女の顔に近づけてきて。


 「……アリア。私の想いは、()()()()()()ようだ…。私はもっと、努力しなければならないようだね…?」

 前半は馬車の中の兄妹の会話で、後半はその兄と婚約者のやり取りです。兄も今回の乙女ゲー攻略対象ですが、前ヒロインにも興味はなさそうですが、今回のヒロインにはどうなるのかな……


多分この話は、次回へ続きます。

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