表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約から始まる物語を、始めます!  作者: 無乃海
開幕 ~続編が始まる~
43/69

40話 現実と相違ある理由

 次の場面に移る前に、フェリシアンヌの思考が長くなりました……

 「…はあ~~」


昨日のことを思い出しては、つい溜息を()くフェリシアンヌ。眠れぬ夜を迎えずぐっすり眠れたのは良いが、何の対策もしないまま朝を迎えたお陰で、彼女は朝からどんよりした空気を纏いつつ……


 「今日もクリスは、お休みなのかしら?…わたくしもお休み出来たら、良かったのですけれど……」


クリスティアが欠席するならば、自分もズル休みしたいという気分に、一瞬陥りそうになる。基本的に真面目な性格で勉強も嫌いではないし、出来ればズル休みはしたくない。この乙女ゲー世界は魔法世界と共に、前世で憧れた異世界のうちの1つでもある。こういう世界に転生し、その世界の()()()()()()()()()()が、彼女にとって最も楽しみな時間であり。


…乙女ゲーの世界事情は簡単な設定だけで、裏事情となる詳細な話は、殆ど語られておりませんでしたわ。こうした詳細を得られることは、乙女ゲー世界に転生したお陰ですものね。乙女ゲーで見えなかった世界観を、こうして身近に感じられることは、本当に楽しいですわね!


前世での勉強も嫌いではなかったが、こうも楽しく感じられるのは、前世で日本人留学生から日本語を習い、そして自分も日本に留学することになり、日本で様々な独特の文化に触れたことが、結果として自らを向上させたのだと考える。


彼女の家に日本人留学生を受け入れなければ、フェリシアンヌが日本語を教えてもらうこともなく、日本という国に興味を持つことはなかった。そして、日本に留学することを望まなければ、乙女ゲーというものを知ることもなく、また乙女ゲーに嵌ることもなかったであろう。故に、乙女ゲーを攻略しようとせず、前世の旦那様となる彼とも、知り合うことがなかったかもしれない。こうして偶然乙女ゲー世界に転生しても、平凡に過ごしていたかもしれない。


 「…はああ~~。ズル休みは(もっ)ての(ほか)ね。()()()()()()()()を失うなど、何とも勿体ないことだわ。クリスが登校されることを、お祈り申し上げましょう。」


フェリシアンヌは長く溜息を吐きつつも、独り言を漏らす。エルやマリルダを筆頭とする、侍女達に身支度をしてもらった後、半分諦めの境地で学園へと登校しようと、馬車に乗り込んだのであった。


ハミルトン侯爵家の家紋入り馬車で、王立学園へと向かう中、他にもう1人同乗者が一緒に乗っていた。フェリシアンヌの3歳年上の実兄、モーリスバーグである。乙女ゲーム通りの展開であるならば、彼は妹のことを大層嫌っていた筈だ。ところが現実では、同じ馬車に乗り合わせて通学するほどに仲も良く、ゲームの設定ではあり得ない展開となっている。


モーリスもフェリシアンヌと同じく、性格は真逆なようだ。乙女ゲーでは見た目同様の爽やかな青年で、全く裏表のない明るい人柄である。しかし、現実の彼は見た目とは逆で、策略が得意なタイプで腹黒くもあったりする。


フェリシアンヌから見た限り、彼には転生の記憶はなさそうで、乙女ゲーと似た世界だとは、知りもしないことだろう。別の言葉で言い換えるならば、前世の記憶保持者でもないのに、乙女ゲーの彼と現実の彼では、何故か別人のようだと言える。この世界が乙女ゲーとどう関わるのか、乙女ゲーとして作られた経緯が判明しない限りは、何も分からないかもしれない。唯の偶然で全く関わりがないのか、現時点では何とも解釈できなかったから……


現実社会で乙女ゲーと異なる行動を取るのは、乙女ゲーという記憶を持つ転生者ならば、それは寧ろ当たり前のことだ。モーリスのような転生者以外の者が、ゲーム設定と現実で性格が異なる訳には、幾つかの理由が考えられるだろう。


フェリシアンヌのような転生者と関わったことで、転生者以外の者も影響された可能性は、あるだろう。実際に彼の妹の他に、彼の婚約者も転生者であることから、この2人の影響を受けたとも考えられることだ。しかし彼の立場から見れば、兄を慕う愛らしい妹を嫌う要素もなく、また優しくて清楚な婚約者を気に入った、ただそれだけのこととも言えそうだ。


乙女ゲーの世界設定は飽くまでも、現代人の想像上から生まれ、現代人によって作られた世界である。その上で敢えて理由を問うならば、ゲームの設定とよく似た同じ世界が、偶々存在したとも考えられるが、この所見には重大な欠点がある。


設定の一部が同じだとするならば、偶然とも言えた。全ての設定が現実と全く同じになるのは、異世界と言えど無理がある。()()()()()()()()()でもない限り、それは不可能に近いことだ。キャラ設定に関しては同じとは言えないとしても、それでも全てを偶然の産物とするには、おかしな現象なのである。






    ****************************






 他の登場キャラに関しても、性格が異なっているようで、彼らの言動もゲームとの相違が見られた。しかし、何故かキャラを巡る他の要素は、ゲーム設定とほぼピタリと重なる部分も多く、尚更違和感が拭えない。


また、他にも考えられる理由がある。異世界の詳細な事情を何らかの経緯で知った現代人が、前世の日本に存在したという仮説だ。これならば誰もが、最も納得できる理由でもあろうか。この世界の出来事がゲームの設定と同じであることも、登場キャラと同じ人物が実在することも、人物の性格だけは異なる現象も、案外と簡単に説明出来ることだろう。


この世界に実在した誰かが現代日本に転生し、何らかの目的で乙女ゲームを作ろうとして、異世界事情を全てそのまま取り込んだ。但し、人物像は何かしらの理由で変更し、性格は敢えて真逆に設定したのかもしれない。


乙女ゲーを作る上で最も重要なのは、ヒロインが何人かの攻略相手から、恋する相手を選べることだ。その為に、一部の設定の変更を()()()()()()()()()()、ないだろうか?…以上、これらに関しての仮説は、転生者側からの推測でしかない。本来はそれらには当て嵌まらない、そういう可能性もあるのだが……


フェリシアンヌより先に生まれた兄を、転生者という立場の彼女が、ゲームとは違う関係性に変えたとしても、兄の性格までは変えられないことだろう。兄の婚約に関しても、彼女が物心ついたすぐ後の頃である。まだ当時の彼女は、元婚約者とすら出会ってもおらず、彼女がハイリッシュと婚約する前の話だ。当然ながら当時の彼女は、前世を思い出していない頃だ。


もう少し詳細に説明するならば、フェリシアンヌの婚約が決まる前に、また自らの婚約が決まる前に、兄モーリスは既に何かにつけて、妹を溺愛していたのである。彼の性格を変えたとする人物はおらず、妹でもなければ婚約者のアリアーネでもなかったと、断言できるかもしれない。


現実のこの世界では、ハミルトン家の末っ子として、もう1人の妹カールユーラの存在がある。但し、末妹は乙女ゲーに一切登場しない人物で、他にもう1人妹が存在する描写も見られない。ゲーム上では妹を毛嫌いする兄の心情として、兄本人の口から語られるという場面が唯一見られ、妹との不仲を指摘したぐらいであるが、その相手を誰とは指摘せず、我が儘な妹を好きになれないという、軽い描写だけに留まっていた。もしかしたら妹2人を嫌っていたとも、考えられるけれど。


カールユーラこと通称カールラは、我が儘かどうかと言うならば、末っ子の特権を使う甘え上手とは言えても、悪役令嬢とは呼ぶほどではなかった。ハミルトン家の3人兄姉妹(きょうだい)は非常に仲も良く、滅多に口喧嘩もしないほど仲良しである。フェリシアンヌもカールラを溺愛し、カールラもフェリシアンヌを溺愛し、2人の兄であるモーリスは、妹2人の何方のこともこよなく溺愛している。


カールラの兄への想いと姉への想いは、若干異なるものだ。兄を尊敬してはいるものの、姉への想いは兄同様危ういもので、姉の妹を溺愛する想いとは、また別の溺愛だと言えよう。何方かと言えば、()()()()()()()()()()……


まさか…それほどまでに、兄と妹から大切に想われていようとは、フェリシアンヌは全く気付かない。カールラも兄姉と年齢差がそれほどなければ、()もそれが当然のようにして、姉と共に登校しようと同じ馬車に同乗し、姉の隣の席を兄と奪い合ってでも獲得しただろうと、思われる。兄が自分にも弱いと、知りつつも。


カールラの立場から見れば、兄は自分と同類の人種だと感じている。実兄だからこそ其れなりに尊敬もしており、嫌悪する対象にならずに済んだと言えよう。これが赤の他人ならば、嫌悪し敵対したことだろう。要するに彼女も、見た目の愛らしさとは真逆で、腹黒いタイプである。彼ら2人から見たフェリシアンヌは、途轍もなく純粋無垢な人物であり、彼らが守って遣りたいと庇護すべき人物なのである。


彼ら2人の性格が腹黒いという真相を、フェリシアンヌも全く気付かなかった訳ではなく、大切な家族や愛する人達を守る為、この国の貴族として必要不可欠であると、自らもそういう思いはあるとして、結論付けた。それは彼女の考える腹黒タイプと、彼らの腹黒さとは別物だとは、露知らず……


…兄の性格が違うことや、妹が乙女ゲーに登場するかどうかは、今更どうでも良いことですわ。乙女ゲー通りになれば、悪役令嬢だけではなくその家族をも、不幸に致しますもの。わたくしはどうしても、愛する家族を…兄と妹を守りたい!


兄と妹の他に、現在の婚約者である彼もまた、頼もしい存在だ。その一方、兄の婚約者アリアーネは一人っ子で、兄弟姉妹はいない。フェリシアンヌはアリアーネが転生者仲間だと知り、アリア様のお力になりたい…と、とある策略を巡らせようとしていたが。


…アリア様は誰にもご相談できず、怯えておいでだったとは、申し訳ないことを致しました。今こそ、()()()()()()()()()()よ。現実のお兄様ならば必ずやアリア様を、悪夢からお救いになられますわ、きっと………

 テレンシスと出逢った、翌日の話です。今回はフェリシアンヌが1人で思考する場面で、終わってしまいました。次回は漸く、兄が登場…?


兄も攻略対象なのに、今まで名前のみしか登場していないような…。全体的に男性陣の影が、薄いかも。恋愛メインよりも、女子友との友情メインになってる?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ