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婚約から始まる物語を、始めます!  作者: 無乃海
開幕 ~続編が始まる~
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32話 ヒロインは挙動不審?!

 第2部では、主に2人の視点に近い角度で、書いていこうと思います。


勿論、その限りではありませんが……

 新ヒロインと思われている人物が、王立学園の生徒として途中入学し、学園に通い出してから早2週間程が経った。まるでクラスメイトとの交流を避けるように、授業の直前まで教室には来ず、また授業が終われば直ぐ教室から出て行く。その間はずっと、そういう謎の行動を毎日繰り返した、テレンシスに…。


クラスメイト達も不思議に思うものの、今ではすっかり彼女の行動にも慣れ始めていた。寧ろ彼らは、ホッとした部分もあったりする。流石に2週間も経ると、彼らも自分からテレンシスと関りたいとは、思わないようである。


何故これほどに、彼女の方から避けられているのか、クラスメイト達にも理解ができない。彼女とどう向き合えば良いのか、彼らも試行錯誤の状態であった。何方(どちら)にしろ彼女の行動次第であったと、言えるかもしれない。こうして彼女から避けてくれることで、有り難いと言えばそうなのかもしれないと。


公爵令嬢らしい振る舞いであれども、彼女の元の身分は商家の娘である以上、彼女が庶民だったという事実は、如何(どう)あっても変わらない。今はこうして公爵家の養女になれたものの、公爵令嬢に相応しくなろうと、彼女が()()()()()()()()()()()、何処までも最初の身分が付き纏うことだろう。


このカルテン国ではなくとも、この世界の殆どの国々で、商家の扱いは庶民という扱いである。カルテン国南側に当たる隣国ハーバー国も、西側に当たる隣国エイバル国も、東側に当たる隣国ゴードル国も、海を挟んだ離れた北側の国・北周国も、商家の人間は商人と呼ばれる国もあれど、結果的に民間人扱いとされる。要するにどの国でも、貴族に(くみ)する扱いではなかった。


この世界では貴族と庶民の生活は、決定的に異なる部分も多い。商家は庶民の生活と同じく、若しくは似た待遇であり、少しぐらい暮らしが裕福になれど、生活習慣はほぼその状態から変わることがない。


例え彼女のように、公爵家の養女になったとしても、公爵令嬢や公爵令息の礼儀を教えられても、元の庶民の生活基準を直ぐに変えるのは、容易ではない筈だ。立派な貴族になりたいという、当人の意識が高くなければ、アレンシアのように何の礼儀も覚えられないことだろう。


本来の貴族令嬢達も幼少期から、何年も時間を掛け礼儀を身に着けていく。表面的に気付かれないようには振る舞えど、以前の生活で得た素振りや言葉が、咄嗟の時に無意識に出る場合もあるだろう。実際に前世の記憶を持つフェリシアンヌ達も、日本にしかない言葉が出たりするのだから。


カルテン国でも身分が最も大切とされ、()()()()()()()()()()()()、親しく付き合わないという気持ちを持つ、貴族令息や令嬢が多い。王立学園ではそういう事情を酌んだ上で、大人の社交の場とは異なると定義した。身分だけに囚われず、ある程度の自由を与え、また身分とは関係なしに友情を育む、などというように…。こうして王立学園で育む友情は、大人となり社交の場に出てからも、友情から人脈という形式に変化し、横への付き合いがより一層強固になっていく。


今後、仲良く出来るかどうかを見極める。今の時期は新入生達にとって、そういう大切な期間でもある。王立学園の生徒達はそれを踏まえた上で、身分に従い上位貴族を持ち上げる者達も居れば、逆に上位貴族が身分の上下を問わず、下位の貴族生徒達とも親しくする者達も居る。


但し、テレンシスが入学した時期は、既にそういう期間は終わっている。彼女は途中入学という扱いなので、クラスメイト達の友人関係はほぼ出来上がった状態だ。上下関係も含め、皆が把握した後と言うべきか…。


今世のテレンシスの扱いは、前世の日本で言うところの転校生である。転校生という役柄は、クラス中の生徒が興味を持つという有利な面もあり、逆にもう既に友人関係が出来ていることで、不利な面もあった。彼女もその状況になっており、全員が興味津々となりつつ、見定めているという感じで。


彼女の場合は当初、見掛けだけの貴族令嬢として見られており、不利な面が強かっただろうか。例え…新学期に入学したとしても、ケースバイケースという状況であったかも知れぬが……


肝心のテレンシスから避けるのならば、彼らもまた彼女から距離を取れば良いだろうと、納得した。自分から無理に親しくする必要もなく、また自らが無理をして彼女に媚びる必要もない。そう判断したのであった。


こうして月日は経っていき、テレンシスが入学してほぼ1か月が経つ頃に、その後の人生が()()()()()()()()()、迎えることとなる。






    ****************************






 最近のフェリシアンヌには共通の仲間が増え、乙女ゲーの悪役令嬢としての運命を変えようと、仲間と共に充実した毎日を過ごしている。抑々、彼女達は悪役令嬢に転生したのに、充実した毎日を送るというのも、おかしな話であろう。


前回の乙女ゲー時では、前世の記憶を取り戻すのが遅すぎて、前世で嫌いだった相手と既に婚約していた。然もゲーム通り、自ら望んだ結果だ。嫌いだから婚約破棄したいとは、今更言えない立場だ。相手の婚約者を好きになれそうもないが、彼女の家柄より上位貴族の子息である以上、相手の子息から望まれなくとも、子息の親からは喜ばれているのだから。どの面を下げて、断ることなど出来ようか?


…婚約自体は、わたくしが望んだことですわ。今のわたくしの記憶がなく、過去のわたくしの本心だと致しましても、わたくしからまたお断り致しましたら、我が家の名誉を貶めることになりそうですわね…。


実は…記憶を思い出す前の彼女も、それほど我が儘だった訳ではなく。我が家の名誉という以前に、彼女の名誉を貶めたことだろう。とんでもなく我が儘なご令嬢なのだと、相手からは大袈裟に罵られていただけで…。ハイリッシュは彼女に好意を持とうとせず、彼女が自分に夢中だと胡坐を搔き、高飛車に振舞っていた。相当に頭が緩いわりに、自尊心だけは途轍もなく高く。


ハイリッシュがどれだけ悪い噂を立てようと、フェリシアンヌを良く知る人々は信じない。それでも貴族社会では、()()()()()()()()()()傾向がある。庶民もまたそういう噂の方が、好む。多くの者が楽し気に、黒い噂を言い触らすだろうが。


何故か…あの頃の彼女は、自分以外の悪役令嬢を探そうとは思わず…。自分の婚約破棄にしか、目がいかなかったのだろう。前世では西欧人だった彼女には、日本人のような助け合うという精神は元々薄く、自国では独り立ちすることに大きな意味を持っていた。前世でほぼ自分1人の実力で、何でも勝ち取って来た彼女は、自分1人で解決する努力をする、それが当たり前の環境で育った。


親友クリスティアも悪役令嬢だと知りつつ、彼女がそういう素振りを見せず、前世の記憶がないと思ってしまう。実際のところでは、クリスティアも同様の立場であったのだが…。あまりにもフェリシアンヌが平然と過ごしており、転生者ではないのだと思い込んでしまう。


クリスティアとしては友人を助けたくとも、フェリシアンヌが自らの足で毅然と進むので、乙女ゲーのような展開にはなりそうもないと、クリスティアは安心していた。但し、断罪が起きる頃には、クリスティアも自らの断罪を避けようと、友人に気を配れない状態になっていたのだが…。


…フェリシアンヌはよもや、日本人でさえなかったとは…。だけど…日本人ではなかったからこそ、今の彼女の魅力へと繋がったのでは、ないのかしらね…。日本人よりも日本人らしい、西欧人よね。前世の彼女にも…会ってみたいなあ。


最近になってから互いに転生者同士だと知り、クリスティアはちょっぴり後悔しつつも、そう思う。もっと早くに打ち明ければ良かったと…。但し、フェリシアンヌを助ける出番はないだろうと思えば、がっくし…と気も抜ける。


前世のフェリシアンヌは日本に永住すると決めてから、日本人よりも日本に溶け込んでいた。彼女の意識全てが日本流にはならず、心の奥底では自国の習慣や思考に左右され、日本人と()()()()()()()()()()()()ようで…。実際に彼女のこうした行動は、外国人らしい思考からきたものであろうか。本当に困ることになれば助けてもらう、助けを乞うことに勇気がない、そう思う以前の問題だ。自分でできることは自分で…という、単にそういう考えからだった。


これらは、長年の習慣のようなものである。前世を思い出した途端に、前世の記憶に無意識に引き摺られるのは、仕方がないだろう。前世の方が生きていた時間が、長いのだから……


こういう協力体制になればなったで、彼女も楽しいことだと感じている。前世の転生者仲間として記憶を共有することも、本心から嬉しく感じていたことだ。今は王太子妃であるユーリエルンとは、彼女を見極める際に偶々そういう流れとなれど、相手の身分の方が上位である所為で、どうしても対等では居られない。前世の彼女の自国での身分が、よりそうさせた部分もある。彼女の自国では身分の差が大きく関係しており、そうした身分のない日本を、不思議に感じたものである。


しかし現在は、彼女の前世での自国の身分制度が、役に立ったようだ。今の身分を受け入れられたのは、そういうことだろう。同じ思いを理解してくれる、西欧人の仲間も欲しかった…。ちょっぴりそう思いつつ、自国への想いはそう強くはなく、日本への憧れが未だ強く。


日本人の転生仲間が出来て、嬉しかった。堅苦しい身分制度の中で、この世界の他の人々と協力できるというのは、元日本人だからではないのかと…。


…彼らの懐に一度入れば、家族のように他人を思いやり、親切に他人の面倒を見てくれる。自国のように自分が…という強い主張もせず、()()()()()()()()()()()()努力をするところが、私は…好ましいと思ったのよね。…そうなのよ、前世の旦那さまのように……

 前半は新ヒロインの立場から、後半は主人公の立場からのものに、クリスティアをプラスしたという感じになりました。


今回は心の声だけで、会話は…ゼロですね。未だ新ヒロインとは、誰とも接点のない状況です。主人公は相変わらず、前世の旦那さまラブです…。

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