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婚約から始まる物語を、始めます!  作者: 無乃海
序章 ~悪夢の始まり~
31/66

30話 ゲーム開始前、秒読み

 漸く、序章が終わります。


今回のタイトルは、もうすぐゲー本番が始まることを、意味しています。

 カイルベルトはたった今、ファーレスから受け取った書類を、1人ジッと眺めていた。その書類にはマル秘情報が記載されており、思った以上の難解な事情に、彼はこの自らの執務室で頭を抱え込んでいた。


…はあ~。18歳というこの年齢で、これほど苦労することになるとは、前世の日本の世界の方が気が楽だなあ…。それでも、もう18歳か…。前世でも、高校卒業となる最後の学年だよな…。そうか…。日本でも成人はまだだけれど、結婚が出来る年齢でもあったなあ…。


そう考えれば、此処で今の年齢でこういう仕事をするのも、決して早過ぎる事情でもない。日本人でも大学に進学しなければ、後1年で就職するのだから、そう変わらないかもしれない。前世の彼は大学生として4年間、勉強していた。この世界には前世のような学校はなく、それは仕方がないと諦める。


しかし、この世界の勉学のレベルは、()()()()()()()()()()()。前世の世界と比べればまだまだでも、生活基準のレベルが抑々異なる以上、この2つの世界を比べるべきではない、と思われる。


実際に、この世界に転生者が度々現れており、生活基準が急激に上がってきたことには、一部の人間達の間での秘密である。この国では元々、転生というものが理解出来なくて、今のところはバレても大丈夫そうなものの、転生者の記憶を悪用しようという輩がいないとは限らず、カイルベルトも慎重に動くことにした。


僕の中での一番の問題は、フェリシアンヌだよね…。彼女は昔から、好奇心旺盛で何にでも興味を持ち、首を突っ込もうとする人だ。それに一度仲良くなると、その人物との友情を大事にしようと、自分のこと以上に頑張ろうとするんだよ。そういうところは全く、変わっていないよなあ…。まさか、今世でも(外見は別人だけれど)出逢って恋をするとは、思わなかったなあ…。


記憶が戻った瞬間から、前世の最愛の妻を思い出した彼は、また彼女と巡り会えたことに対し、必然だったと考えている。2人揃って、ゲームに激似した世界に転生したのは、絶対に偶然ではないのだと…。


彼はこれが必然だとしても、ラッキーな現象だとも思う。前世の彼女は彼と結婚した後、その後に何人かの子供を産み、漸く帰化することを認められていた。彼女の元の国籍は日本以外の国で、彼女自身に日本人の血が一滴も流れていない。そういう彼女と共に転生し、彼と同じ国の人間となり、年齢も前世と変わらない差であることは、運がついていたとしか言えない、と。


…彼女は、日本人の容姿に憧れていたからな…。常日頃から、僕の黒髪と黒目が大好きだと、褒めていたな…。今は少しでも日本人に近い容姿の彼女は、憧れの容姿になれて嬉しいことだろう。逆に俺が西欧風容姿になってしまったが、中身が僕だと知った時の彼女は、どういう態度に出るだろうか。


前世のフェリシアンヌは、唯単に日本人になりたい訳ではない。愛しの彼が日本人なので、自らもそういう容姿に憧れていた。要するに、彼女にとってはペアルックみたいにしたくて、同じ国籍の人間になれても容姿は変わらず、時には髪を染めたり目には黒くするコンタクトを入れたりと、()()()()()()()()()()()()彼女だが、抑々外見が外国人風でがっかりした経緯がある。


ゲームのフェリシアンヌに憧れたのは、その当時のフェリシアンヌには、自分よりも日本人らしく見えたからだ。ゲームでは日本風の国はなく、和の国の人間が登場していたら、フェリシアンヌに成りたいと思わない可能性もある。しかし彼女は、ゲームのフェリシアンヌの堂々とした疚しさの無い、自分に自信を持った人格も好きだったので、何方にしても憧れたかもしれないが…。


前世では自分から告白したりするほど、白黒ハッキリしたフェリシアンヌだったけれど、旦那さんが日本人だから、自分も同じ容姿に成りたいとは、恥ずかしくて告げていない。そこは、乙女心の七不思議と言われるところで、西欧人の彼女も日本人と変わらない。…否、既に日本に染まっていたのかも、しれない。


カイルベルトは前世の妻が、()()()()()()()()()()()持ち合わせていたと、未だに知る由もなく。これらの調査の秘密事項を、自分の手中に隠していた。彼女が知れば、また彼女は自分の身分を顧みず、突っ走る可能性もあると思ったからだ。


前世は別に途中で退場した訳ではなくとも、今世はその可能性もある世界だ。だから彼女には出来るだけ、安全な場所に居てほしい…と願う。前世のような平和な世界でも、事故死や巻き込まれて殺害されたりと、不安要素が多々あるというのに、今世の世界では危険に巻き込まれる可能性が、当たり前の世界でもある。一瞬でも油断をすれば、寝首を掻かれる可能性も高いので…。




 

   ****************************






 結局、ファーレスが探って来た爆弾のようなマル秘情報は、カイルベルトの元で止まっていた。フェリシアンヌを心配するカイルベルトの想いから、それらは彼の実家であるアーマイル公爵家で、吟味及び対策をされることとなっている。


一方でフェリシアンヌ達女性陣は、アレンシアが知り得る範囲での対策などを行っていた。新ヒロイン・テレンシアが学園に入学するのは、もう目の前まで迫って来ていたからだ。頻繁に王立学園でも集まっては話し合い、王宮の方ではなるべく全員が集まっては、対策会議を行う。但し王立学園には、通っていないメンバーが3名存在しており、そのうちの1名は悪役令嬢という重要ポストなので、王宮では全員揃うようにと対策していた。


アレンシアはフェリシアンヌ達ご令嬢全員に、味方になると誓っており、あれから本格的に侍女の勉強を始めていた。王太子妃と初めて対面した時は、まだ一時的な侍女の特訓を受けただけだが、将来は侍女の面接を受けるのかというほど、本格的にハミルトン家で授業を受けている。


前世の習い事のような感じで、気軽に侍女の授業を受けている、アレンシアだったけれども、それでも授業を学ぶ姿勢は真面目だ。一時的に特訓をしていた時期とは異なり、アレンシアも侍女の仕事に興味を持ち始めていた。


教えている立場のラマンダも、ハミルトン家のメイド長として、教える以上は一切の妥協もなく、厳しく教えている。特訓の時には直ぐに音を上げて、愚痴ばかりを言っていたアレンシアだったというのに、今はある程度ついて行ける様子であり、簡単には音を上げなくなっている。


如何やらアレンシアはジッとしているよりも、身体を動かすことには向いているようだ。商家の家業の仕事だけではなく、案外と侍女の仕事も向いていた。侍女の仕事内容はお嬢様の傍に立ち、お嬢様の世話だけをすれば良いと、以前は簡単に捉えていたアレンシアも、実際はこの世界で暫くの間、お嬢様の扱いを受けていたし、またそれ以前の幼い頃には、両親とモートン子爵家に戻るまでは平民で、その頃は自分の支度は自分で行っており、働く厳しさも既に知っている。


但し、侍女の経験だけはない。実際の侍女の仕事は、下手な仕事よりもハードであると、此処に来て初めて知ったアレンシア。お嬢様の為ならば、屋敷の中だけでなく外出もひとっ走りするし、お嬢様の代わりに全ての荷物を持つのは当たり前で、お嬢様の為に…と常に先回りして動き、お嬢様の身の安全を常に警戒し守る、という()()()()()()()()()()()()と…。


前世で例えるならば、お嬢様の為の『戦う家政婦さん』と言えそうだ。しかし実際には、そうではなかったりする。確かにお嬢様専属の使用人ならば、お嬢様のことを真っ先に考え、何でも熟さなければならない場合もある。但し、普通の侍女に護衛要素まで含めるのは、ほんの一部の例に過ぎないと、彼女は気付かず。


実際の侍女の仕事は家事全般と言われ、確かに範囲も広かったが、食事は専門料理人のコック達が働いているし、家の主人には専用の執事も付いているし、家の庭園では専用の庭師が働いている。護衛も勿論、専用で雇用契約及び雇い入れており、其々には専門分野の人間が働いていた。侍女はそれ以外の幅広い分野を、担当することになるが、礼儀作法が出来れば特に問題はない。


侍女の主な仕事は掃除と片付けの他には、主人達へのお茶の用意と身支度に関するお世話である。これらの仕事も普段は分担して行う為、誰か1人でする仕事ではなく、侍女達の同僚仲間と助け合うという面もあり、実はそれほど大変ではないとも言えるが、()()()使()()()()()()()()、天国と地獄に分かれると言うべきか…。


ハミルトン家やアーマイル家のように、高給取りで気軽に働ける職場もあれば、低賃金なのに主人の理不尽な要求もされるという、ブラックな職場もある。モートン子爵家では理不尽な我が儘で、侍女に命令していた覚えのあるアレンシアは、自らが侍女の仕事を学んだことで、自分の態度が如何(いか)に傲慢だったかを、思い知ることになる。流石に彼女も、今は…反省しているが。


…今後はもう一生、モートン家に戻ることが出来なくなったけれど、もしもそういう機会があるとするならば、今度は絶対に間違えたりしないわ…。フェリシアンヌ様のように侍女とは仲良くして、他の使用人達とも友好な関係を築くよ。


本心からそう考えるアレンシアは、前世の小説や漫画で起きるような人生のやり直しを、心から願う訳ではない。記憶を持ったまま何年か前に戻るという、卷戻りの人生を希望する訳ではなく。前世でもそれほど勉強が得意ではない彼女は、やり直しをする為に策略を練るのは、苦手なのである。


…それに、今の方がいい。今の状態がいいのよ、私には…。だって漸く私もこの世界で、フェリシアンヌ様達と()()()()()()()()()()、立てた気がするんだよ。今ならば私らしく、生きて行けそう…。ゲームとは関係なく飽くまでも自分流に、大好きな人達と共に自由を求めて……。

 やっと此処まで来ました。『序章』である第一部は、これにて終了です。


今回は今までと内容がダブりますが、第一部を纏める感じで書きました。前半はほぼ旦那様の話ですし、後半はほぼ元ヒロインの話です。本編主人公が、あまり登場しなかったような…。



※此処まで読んでくださり、ありがとうございます。次回は、第二部に入る前に登場人物一覧を投稿する予定です。飽くまでも筆者のメモも兼ねたものですので、非常にウザい情報量ですが…。宜しければ、ご参考にどうぞ。


※第二部として開始するのは、もう少し先と遅くなりそうです。開始までは、もう暫くお待ちくださいませ。

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