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婚約から始まる物語を、始めます!  作者: 無乃海
序章 ~悪夢の始まり~
29/68

28話 帰り道での反省会は…

 無事にお茶会も終わり、帰り道でのやり取りです。


タイトル通り、性格には反省会ではないですが……

 王城でのユーリエルン王太子妃開催のお茶会ならぬ女子会は、何とか無事に終了したようである。王城に訪問した時と同様に、仮侍女のアレンシアを従えて、王城から立ち去ることになるフェリシアンヌは、王太子・ライトバルに偶然出くわさないようにと祈りながら、王城を歩いていた。ピリピリした雰囲気を纏いつつ、急ぎ足で馬車に向かう。


漸く馬車に到着したフェリシアンヌとアレンシアが乗り込めば、王城の警備の者が馬車の扉を閉めてくれる。馬車が無事走り出したのを確認し、フェリシアンヌは安堵したように溜息を()いて。


 「フェリシアンヌ様、どうされたのですか?…ご気分でも悪くなられました?」


フェリシアンヌが問題視するアレンシアは、王城に到着した際も初めて見る王城の内部に目を奪われ、キョロキョロと外観や豪華な置物を眺めては、楽しそうにしていたが、王城から去る際も外の風景を見ようと覗き込み、1ミリも心配していない様子が見られた。


 「…()()()()()()()()なくてよ、シアさん。ライトバル殿下は今も、貴方を警戒されておられますのよ。偶然にでもお会い致しましたら、貴方が困りますのよ…。殿下にお会いしなくて、本当に良かったわ。」


フェリシアンヌはやれやれという風に溜息を吐き、そう呟く。殿下から実妹のように可愛がられている彼女でさえも、詳しい事情を話せばお咎めはなし…などとは、この場合は言えなくて。


殿下とアレンシアは互いに、まだ直接の面識はない。アレンシアが学園に通っていた時、殿下との出逢いイベントを起こそうと、彼女は王城や王宮の周りをウロウロしていた。ユーリエルンから警備を強化するようにと、一足先に指示が出された所為で、またライトバル自身も警戒したことで、結果的にアレンシアはイベントを起こせなかったのだ。


アレンシアがイベントを起こして攻略したのは、公爵令息ハイリッシュ、伯爵令息ハウエリート、男爵令息タムリードの3人のみ。攻略対象は7人存在したけれど、上手く攻略出来たのは半分以下となった。その中の何人かが、王太子との橋渡しをする役割を持つものの、アレンシアはその人物の攻略も失敗している。


そういう役割を持ちそうな身分のハイリッシュだが、浮気性で女性好きな面がある上に、フェリシアンヌに対しての冷たい対応には、殿下の気分を害していた。因みに…殿下からのハイリッシュへの心象は、虫ケラ以下である。ハイリッシュが紹介しようとしても、殿下は完全な無視をするに違いない。


他に殿下に紹介が出来る一番有力な人物は、侯爵令息アルバルトだ。ナイル公爵家には何代か前に王女が嫁いでおり、王家との繋がりもある。王太子と特別仲が良い訳ではないものの、特に悪いと言うことでもなく。年齢も離れている所為で、そこまで親しくする機会がなかっただけだ。


他にもう1人有力な人物なのが、前回の隠しキャラの王立学園理事長ロベールストである。実は…彼は王弟という立場の身分で、現国王の弟だ。要するに、王太子の叔父に当たる人物だ。乙女ゲームの設定では、理事長を攻略しない限りは、王太子を攻略不可となっている。アレンシアはこれを無視し、先に王太子を攻略しようとした為、王太子に出逢うことが叶わなかった。但し、ゲームと異なり現実の世界では、王太子が王太子妃を溺愛していたことが、一番の理由だけれど…。


 「私の前世での推しは王太子だったし、一度で良いから王太子に会ってみたかったのになあ…。ゲーム同様に、かっこ良い人なのかな?…気になっちゃう~。」

 「…………」


アレンシアは呑気な口調で、王太子に会ってみたいと呟くが、フェリシアンヌはとんでもないことだと思った。アレンシアはキラキラと目を輝かせ、自分の想像にうっとりしている様子だ。


 (……()()()()()()()()()()()()けれど、怒った彼は其れなりに恐ろしい人物ですのよ。)


フェリシアンヌは心の中で、そう思う。殿下に恋するお相手も、百年の恋も冷めてしまうほどに、彼が認めない人間には冷淡な部分を見せる、そういうライトバルを知っているだけに…。


 「…シアさん。本気で会いたいと思っておられる訳では、ありませんわよね?」

 「…あっ、それは……。会えたらいいなあぐらいには、思ったけれど…。」

 「ダメですっ!…絶対に駄目ですよ、ご自分から会いに行かれては…。現実の殿下は、ゲーム通りのお人では、ありませんからねっ!」

 「…いやだなあ。流石に私も、今は自分から会いに行きません。あの時の私ならば兎も角、それぐらい分かってます。正直に言うならば、チラッと見かけたいなあと思うぐらいですよ。ゲームとは…色々、違っているんですね…。迂闊に会えばガッカリする可能性もあるので、()()()()()()()()()()()()()()()ですね。」

 「……コホン…。兎に角、絶対にバレないようにしてくださいね。もしわたくしと離れている間に、殿下に出会われてしまった場合は、全力で逃げてくださいね。その後でわたくしやユーリ様が、何とか致しますからね。」






     ****************************






 「……嫌だなあ。殿下に出くわしたら、全力で逃げろだなんて…。冗談がキツイですよ?……もう、フェリシアンヌ様ったら。」

 「いえ、少しも…冗談ではございませんことよ。殿下に摑まってしまわれてからでは、()()()()()()()()()()もの。絶対に、逃げ切ってくださいませ。」


王城からの帰り道の馬車の中では、フェリシアンヌとアレンシアの会話が未だ続くものの、その会話の内容が噛み合わない。アレンシアは目の保養として、一目殿下を見たいと思うだけでも、フェリシアンヌは其れさえ危険だと思っており…。殿下と恋仲になりたいという様子は見られないアレンシアだが、彼に対する危機感を持っていない様子でもあり。


フェリシアンヌとしては冗談ではなく、100%本気で伝えている。彼女は殿下の裏の顔を、知っていた。彼が腹黒いタイプだということを、王太子妃ユーリエルンよりもよく知っているのだ、彼女は…。


ライトバルは自らの妻に言い辛くても、長年の付き合いでもあるフェリシアンヌに対しては、其れなりに詳しく彼の心情を話していた。その際に色々と、彼が行う対策も聞かされていたので、彼女も彼の腹黒い部分には、嫌でも気付くことになる。実際にアレンシアに対しての対策の諸々も、後から詳しく聞かされていた。彼自身がアレンシアに向ける心情も、知っていた彼女からすれば、今のアレンシアの態度には笑っていられない状況なのである。


アレンシア本人に、中々伝わらない。全力で逃げろと忠告されても、悪い冗談にしか聞こえないようで、大袈裟だとゲラゲラ笑っていた。フェリシアンヌは冗談事ではないと、真顔でアレンシアを強く見つめ返す。絶対に摑まらないようにと、言い含めながら。


漸くフェリシアンヌの真意が通じたのか、アレンシアの表情が固まる。ピクピクと口元を痙攣させたように動かせ、口を開いては…閉じて、再び口を開いては閉じてを繰り返しつつも、声が出さなくなった様子で……。


 「……ま、まさか…それほど怖い人なのでは、ないですよね?…今回、私は…何もしていませんよ。今更、断罪されるとかでは…ないですよね?」

 「……大丈夫ですよ…と、()()()()()()()()()()()ですが…。もしかしたら全く大丈夫では、ないですね…。殿下はまだ貴方を、完全に許しておられない節が見られます。貴方が完全に、わたくし達の味方だと言い切れるようになるまでは、もう暫く大人しくしていてくださいませ。」


漸く現実が理解出来たのか、アレンシアはアワアワとし始めた。前回の乙女ゲームの際にやらかした彼女は、思い当たることが多過ぎて急激に不安になる。本来は大丈夫だと、慰めなければならない立場のフェリシアンヌも、ライトバルの性格を知り過ぎていて、下手に大丈夫だとは言えなかったのだ。アレンシアにトドメを刺すことで、彼女の言動を抑制する目的もあり…。


馬車の中ですっかり静かになるアレンシアを見て、脅し過ぎたかもしれないと心配するフェリシアンヌだったが、先程とは打って変わり静かになったアレンシアに、唐突に笑いが込み上げてきて。


この場で噴き出してしまえば、アレンシアを揶揄っただけだと勘違いされてしまいそうで、フェリシアンヌは吹き出しそうな一歩手前で、自らの表情を何とか引き締め、懸命に笑いを堪えたのだった。


前世のアレンシアは、乙女ゲームの中では一番優しい王太子に、憧れていた。ところが、現実とゲームとでは彼の性格が異なるようで、彼女はその事実にガッカリするというよりも、ちょっぴりショックを受けていた。


乙女ゲームの中でのライトバル殿下は、ヒロインと出会う当初から、とても優しくてかっこ良い人だったのになあ…。隣国の王女だった王太子妃を、殿下がとても溺愛している事実は、転生者だと思われた王太子妃が攻略したのが理由だと、それだけが原因だと思っていたのになあ…。


転生した私とヒロインの性格が違うのは、前世の記憶を持つ自分と、プログラムされたキャラとの違いだと信じていたので、攻略対象達は()()()()()()()()()()()()()()のに。彼らの元々の性格は、ゲームのプログラムとは抑々違うのかも…。そう気が付いた途端に、自らが過去にしてきた言動は、どれほどに愚かな行為であったのかと、改めて気付いたのよね…。


この世界の人々も、私達と同様に今を生きているのだから、当然なんだよね。あの時の私はそういう事実にも気付かず、唯々暴走していたんだね…。今は私も、この世界で普通に生きている。これ以上のやり直しは、もう二度と出来ないかもしれない…。これからは私も、後悔しない生き方をして行くわ。


アレンシアは殿下の性格を知ったのを切っ掛けに、誰からも認められる人間になろうと、前だけを向いていくことにして………

 帰り道、アレンシアの王城への興味津々な様子に、問題人物なのに緊張感がないと思ったフェリシアンヌが、溜息を吐いています。要するに、殿下に見つかったら大変だったよ…という内容ですね。本当に見つかったら、どうなるのかな…。


タイトルは反省会にしましたが、内容はちょっと違ったかも…。アレンシアが反省するという意味で、こうなりました。

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