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婚約から始まる物語を、始めます!  作者: 無乃海
序章 ~悪夢の始まり~
26/66

25話 ヒロインは幻滅される?

 今回も、『王太子妃とご令嬢達のお茶会』編です。


今回は、新ヒロインのフルネームが出てきます。

 「……ゆ、許してくださって、…あ、ありがとうございますっ!…私、今回は皆さんと共に、ゲームの強制力に抗います。これからよろしくお願いしますっ!」


心を入れ替えたアレンシアの誠意が通じ、悪役令嬢達に一応認められ、彼女は泣きそうな顔つきだ。今泣ればまた同情されるかもしれないと、ぐっと涙を堪えてお礼を伝えることにした。


結果的に、フェリシアンヌが自分の侍女として、アレンシアを宮殿に連れて来たことで、他の令嬢達もアレンシアを許すという気持ちに変化した。()()()()()()()()()()()()()()()宮殿に登城し、何か事件が起きた時には、侍女に主人を守らせる。宮殿という場所では、大勢の人間が宮殿を出入りする所でもあり、多くの貴族達の中には味方のふりをして、平気で裏切る貴族も偶に存在する。貴族が手引きした賊を宮殿内に侵入させたりと、案外と宮殿内も不安要素の多い場所だった。


そういう大事な役割を持つ侍女を、敵であった元ヒロインに任せるとは、通常は絶対に考えられないことだった。特にフェリシアンヌは前回の一番の被害者であるにも拘らず、元ヒロインを受け入れた。それなのに、他の令嬢が受け入れなければ、心の狭い人間だと思われそうで。


王太子妃ユーリエルンも許したからこそ、予め計画を聞かされて計画に乗ったに違いない。ユーリエルンに相談もなく呼ぶことは、いくらフェリシアンヌが侯爵令嬢と言えども、リスクがある。ユーリエルンは実害を受けておらず、アレンシアの態度次第で許そう…と思っていた。もしアレンシアがまだ嘘を()くとしても、宮殿で彼女が何か問題を起こせば、本当の意味で困るのはアレンシア自身であると…。


他の令嬢達も許さないと言えない状況に、心は未だモヤモヤしていても、表面上は許すことになった。自分達よりも上の身分の2人が、実質的に許したような状態である以上、彼女達が許さない雰囲気ではなくなって。


以前のアレンシアならばこれらの状況に、自分はヒロインだから何でも許されて当然だと、開き直っていただろう。今の彼女は別人のようで、令嬢達本心から許されないのは、彼女自身もよく理解していたし、表面上だけでもホッとする。


何だかんだ言っても、皆さんは貴族のお嬢さま達よね…。反対に私が彼女達の立場だったら、こうも簡単に許せただろうか。…いや、絶対に無理だわ。私もヒロインじゃなく()()()()()()()()()()()()()、彼女達と最初から友達になれたのかもしれない。いいえ、無理だったよね、私のこういう性格では…。


さて、フェリシアンヌから語られた内容を、再びアレンシアの口から語られる…訳ではなく、アレンシアから齎されたのは、新ヒロインの新たな情報だ。アレンシアは養父と共に、新ヒロインの自宅であるルノブール公爵家に、何度か訪れていた。養父が公爵家の人間と遣り取りしている間に、迷ったふりをして公爵家の庭に忍び込んで、ヒロインであるテレサを観察していた。


それにあれから、カイルベルトが新ヒロイン・テレサのフルネームを、調査してくれていた。彼女の正式な現在の名前は、『テレンシス・ルノブール』と言い、年齢はこの春で14歳なったばかりだ。容姿はアレンシアが言っていた通り、燃え上がるような赤毛に赤い瞳の珍しい色素のを持つ美少女、で間違いはないそうだ。


商家の家に生まれた彼女は、病気がちの所為で田舎暮らしをしていた。彼女の元々の名前は『テレンシス・スチン』と言い、何とスチン家の養女であった。では、彼女の本当の両親はどこの誰なのかは、アレンシアも覚えていないらしい。いや、正確には思い出せないというのが、正解なのだろう。ゲームの設定通りならば、本来の生まれは高貴な家の出で、何処かの大貴族の娘だったらしい。生まれては不味い相手との間の子供で、赤ちゃんの時に殺害されそうになるのを、テレサと関係のあったまだ未婚だった母親が、助けてくれたという流れであるようだ。


…ということは、彼女の前の養母はテレサの実母が誰かを、知っているのかもしれない。もしかすると…父親が誰なのかも、知っているかもしれない。そう考えたカイルベルトによって徹底的に調べられたが、それ以上の詳しい事情は彼の家の力を以てしても、何故か出て来なかったのである。


ルノブール公爵はテレサを利用しようと目論み、養女にしたという経緯があり、彼女自身に何か重大な秘密があるに違いない。カイルベルトも前世では、乙女ゲーを()()()()()()()()()()()()()。恋人(※前世のフェリシアンヌが妻になる以前)の為に、攻略のルートを見つけてあげたくて、彼の頭脳を注ぎ込んでいたが…。


前世では…運動神経は良くない方だったけど、高校までの成績は常にトップだったからね。大学も一応、国公立に通っていたんだよなあ…。今は貴族の令息として其れなりに剣も使え、頭脳は前世分を足して…ほぼ2倍だよな。イケメン容姿だけの優男に見えるかもしれないが、今はこれでも自らの身ぐらいは、十分に守れる剣の腕はあるからね。





 

   ****************************






 カイルベルトからの情報は、直ぐにフェリシアンヌの元に知らされた。領地経営の勉強で忙しい彼とは、あの後も中々会うことが出来ず、今回も急ぎの手紙として届けられた。フェリシアンヌは直ぐに手紙の内容を確認し、彼の情報を元にアレンシアにも手紙を出す。厳重に手紙に封蝋をして、手紙の内容で重要な部分は日本語で書くようにして。例え、誰かに開けられて読まれても、日本語ならば転生者でもない限りは読めないだろう、と踏まえて。


その後、アレンシアからも日本語での手紙が返って来たが、彼女も色々と考えてくれていて、こうして2人は日本語での手紙を出し合い、その時に出来るだけ他の転生者を探そう、という話に纏まった。そこで先ずは、フェリシアンヌの友人から探ることとなり、今に至る。


 「新ヒロインは相変わらず、我が儘ぶりを発揮していて、乙女ゲーのように大人しく、公爵の言いなりになる人物には、到底見えませんでした。乙女ゲー()()()()()()()()()()()()()()()、幻滅しちゃいましたよ。…って、ああっ!…私も、そうですよね?…皆さん、私を見て…当然、幻滅しましたよね…。がっかりさせて、すみませんでした……」

「「「「「「………」」」」」」


最近のヒロイン・テレサの様子を語っていたアレンシアは、乙女ゲームの設定との違いを語っていた所為か、ゲームに夢中になっている頃の気持ちも思い出したようで、ヒロインに憧れていたと告白する。前回の乙女ゲーでは念願のヒロインに生まれた所為で、驕り高ぶってしまったのではなかろうか。何もかも全て、ヒロインに生まれた自分の思い通りになるのだと…。


話の途中で何かに気付いたアレンシアは、やや大きな声を発した後、今度は自信がなさそうな声でボソボソと告げた内容は、目糞が鼻糞を笑うという状態なのだと、彼女自身も漸く自らの行いに、気付いたようだった。アレンシアは明らかにしょんぼりとなり、肩を落としている。この彼女の姿がフェリシアンヌには、叱られた子犬の耳と尻尾がヘタリとした様子と、重なった途端に…。


 「…ぷっ……ふふふふっ………」


今のアレンシアは、人の振り見て我が振り直せ…という状態になっていた。()()()()()()()()()()()()()、今更新ヒロインの態度が過去の自分と重なったと、凹む彼女の姿に、真っ先に気付いたフェリシアンヌは、思わず吹き出してしまった。


 「…えっ……フェリシアンヌ様。どうして…笑うんですか…。」

 「…だって貴方に、子犬の耳と尻尾の幻影が、見えたのですもの…。一度見えてしまうと、もう可笑しくて…。くふふふふっ……」


フェリシアンヌが堪え切れずに思わず吹き出すと、この場の全員も驚いて目を丸くする。彼女が人前でこれほど大笑いをするのは、これが初めてだったからだ。笑い出したら止まらない…という様子の彼女に、全員がポカンとしていて。


 「子犬の耳と尻尾…。私には、冗談ごとではないんですよ……」


それでも逸早くハッと我に返ったアレンシアは、涙目になりつつも情け無い顔と声で訴える。そして他のご令嬢達までも、アレンシアにない筈の子犬の耳と尻尾が、見えたような気がして…。フェリシアンヌの言う通りだと思った途端、何だか可笑しく思えて来た。


クスクスと笑い出す者もいれば、「…ふふふふっ」と笑う者もいて、無言でニヤリと声を出さずに笑う者もいたりして、ジェシカは「アハハハハハ…」と大爆笑していたが。これにはアレンシアも、目を点にして呆然としていた。自分を除くこの場の全員が笑い出し、自分に耳と尻尾が生えているような気もしてきて、思わず頭やお尻の辺りを触って確認したアレンシア。


 「…確かにあの頃は、幻滅致していたかもしれませんわ。間違いなく、お花畑ヒロインだとは思っておりましたもの。」

 「そうね…。王宮を何度も、彷徨(うろつ)いておられたそうですものね。ライト様からはあの行動の所為で、()()()()()()()()()()()()()のよ。あれ以上の行動は、非常に危ない状態でしたわ、アレンシアさんが…。」

 「わたくしも幻滅以前に、ハウエルを奪おうとしたあの時の貴方は、大嫌いでしたわね。」

 「わたくしは元々、幻滅はしておりませんわ。貴方とお会い出来ない環境でしたので、その前にアルとの関係を十分に、対策させていただきましたもの。」

 「確かに幻滅は…したけど。貴方には、それ以上に感謝もしているわ。タリムとすんなり婚約が出来たから。」


フェリシアンヌが冗談っぽく吐露したのを皮切りに、アリアーネ以外の被害者である(?)彼女達が次々と、同じく冗談っぽく吐露したのである。アレンシアも漸く彼女達の本心を理解し、「もう二度としません…。」と約束して。


そして、今後もこうして宮殿に定期的に、報告することとなったのである。

 新ヒロインの正体が、徐々に明らかになってきました。今回のヒロインも我が儘ということで、タイトルのような話になっています。アレンシアはすっかり毒気が抜けて、良い子になりました。



※『王太子妃とご令嬢達のお茶会』編ですが、今回で終わったみたいな書き方になってしまいましたが、実はまだもう少し続きそうです。

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