表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約から始まる物語を、始めます!  作者: 無乃海
序章 ~悪夢の始まり~
25/66

24話 悪役令嬢達の思惑

 王太子妃とご令嬢達のお茶会が、まだ続いています。


今回は、ヒロイン VS ご令嬢達(フェリシアンヌは除く)です。

 「アレンシアさん。以前の貴方でしたら兎も角、今の貴方ならばそれなりにご覚悟をされ、此処に来られたことでしょう。わたくしはカルテン国のお王太子妃であり、未来の王妃でもございます。わたくしの立場ではアンヌのように、貴方のお言葉だけでは信じることが出来ません。」

 「はい…。私も、御尤もだと思ってます。私は本来、王城には来るつもりでは…なかったので。正直に言いますと、王太子妃様から直接に正式なご招待をもらった訳ではないですし、私の気持ちを優先してくださるとフェリシアンヌ様が仰られ、私も随分迷いました…。しかし、侍女の特訓をしている間に、考えを変えました。私が、()()()()()()()()()()()のだと…。」


王太子妃の口調は優し気で、一見してアレンシアを責めていない口調に聞こえるものの、その言葉を向けられたアレンシア本人には、アレンシアの気持ちを試したように感じられた。罪を犯したアレンシアには何方(どちら)にしてもそう違いはなく、自らが嘘を()くことのないよう気を付けていた。


アレンシアが本心をハッキリと告げれば、「そのお気持ちは、わたくしもよく理解出来ましてよ。」と、王太子妃も頷いてくれるが、他のご令嬢達も同様に頷くものの、彼女が反省したことを認めてくれた訳では、ないようだ。


 「本日、ご招待させていただいたのは、わたくし自身がアレンシアさんと向き合いたい、と思いましたのよ。貴方からのアンヌへの印象ではなく、わたくしが貴方自身を見定めたく思いましてよ。その為にも一度、お会いしたかったのですわ。」


ユーリエルンは、アレンシアに会いたかった理由を、明確にする。唯会って見たいとか、文句を言いたいとか、何かを伝えたかったとか…では、ないということだ。ただ単に彼女を、()()()()()()()()()()()()()()()のだと…。世間の噂や他人の評価は、関係ないと言われたような気がして、アレンシアは逆に王太子妃に好意を持てる人だと、フェリシアンヌのように信じられる人だと、感じていた。


王太子妃にはカルテン国に嫁入りする際に、『王家の盾』と呼ばれる護衛を連れて来た。『王家の盾』とは、王族の為だけに働く密偵であり、王族を自らの命をかけて守り、王族の命令でスパイ活動もする。王族に危害を加えれば、主人の命令次第で秘密裏に相手を消すこともある。


王太子妃の盾である護衛は5人、その内の2人は必ず彼女の傍に居る。無論、彼女の寝室や衣装部屋には、王太子妃の許可がない限りは、入ったり覗いたりはしないが、主に屋根裏などで常に待機している。残り3人は休憩中及びスパイ活動で、交替で彼女を護衛する。


そういう存在が今も話を聞いていると、ユーリエルンはアレンシアと令嬢達に、簡潔に語った。ただ自分には密偵が居ると、護衛達に聞かれては困る話はするな、という忠告をする。護衛達には、王太子妃が転生者であることは教えてあるし、乙女ゲームの話も詳しく説明してなくとも、知られているそうだ。彼らもこの2点に関しては、ユーリエルンの話に納得しているようだった。


では、何が問題なのか…と言えば、ユーリエルンに対しての無礼や敵意など、彼女に対しての害意を持つ言動に気を付けろ、という話だ。特にアレンシアにその言葉は向けられており、ユーリエルンはこの場の全員に話すことで、アレンシアだけを敵視している訳ではない、と表明していた。


アレンシアは王太子妃のこの言葉には、少々戸惑う。簡単には信じられないと言いながらも、此処で語ったアレンシアの決意を認めてくれている。自分のことを王太子妃が見極めたいと言ったり、密偵が聞いているからと注意したりするのは、自分のような者にも気遣ってくれていると、アレンシアも理解して…。


もっと早くに、王太子妃殿下にお会いたかったな…。そうしたら、私もあんな馬鹿げたことをしなかったのかも。…ううん。それでもあの時の私は、王太子妃殿下のさり気ない思いやりにも、きっと気付かなかったに違いない…。あの時の私には、ある程度乙女ゲームの通りになっていると、()()()()()()()()()()()()()と感じていて、全く誰の意見も耳に入らなかったし…。あの時王太子妃殿下にお会いしていても、私は我が道を突っ走って行くだろう…と。


今のアレンシアは、フェリシアンヌの優しさも王太子妃の気遣いも、気付くことが出来る。あの時に気付きたかったと思っても、それは過去のことであり、そう思うだけで…。誰も過去には戻ることが出来ないと、アレンシアは染み染みとそういう想いを噛み締める。王太子妃の気遣いを無駄にしないように、自らの心に誓って。






    ****************************






 「では…改めまして。アレンシア・モートンを改め、アレンシア・ノイズと申します。此処におられる皆さんには、色々と申し訳ない事をしたと思っています。皆さんに簡単に許してもらえるとは思ってませんが、兎に角謝らせてください。今の私はもう子爵家の令嬢ではなく、商人の娘として誇りを持ってます。今日は皆さんのお役に立ちたいと、私の持つ記憶が少しでも役立てば…と、そう思って此処に来ました。」


真剣な眼差しでそう言うアレンシアは、数歩後ろ向きに下がって、王太子妃や令嬢達に深々とお辞儀をした。このカルテン国の礼儀ではなく、敢えて日本式の礼儀であるお辞儀で…。この宮殿の部屋に集まる令嬢達には、お馴染みの礼儀だ。先程もつい、王太子妃にしたように、今は()()()()()()()()()()()とそう考えて。


シ~ンと静まり返る宮殿の一室で、アレンシアは頭を下げたままだ。今の彼女の身分は、この中の誰よりも低い。本来ならば罪を背負う身で、このように王族が侍る場所に来ることは、絶対に許されないことだろう。これも、王太子妃からの許可が正式に出たので、訪問が許されていた。


全く知らされていなかった面々は、かなりの複雑な心境である。先ず、許す・許さない以前の段階であった。クリスティアは久しぶりに当人を目にし、憎いという気持ち以前に、アレンシアの変わりようには呆気に取られた。フェリシアンヌのいつもの侍女と別人だと気付いても、元ヒロイン本人だとは思いもしなくて。あまりの変わりようには、クリスティアもどう対応すべきか分からず、只管困惑中だった。


ミスティーヌは今回が、アレンシアとは初顔合わせである為、フェリシアンヌの侍女が元ヒロインと知った途端に、怒りの表情で彼女を見つめた。心の奥底ではメラメラと闘志を燃やし、絶対に許してやるものか…という気持ちで、沸々と湧いて来る感情を抑え込む。しかし、アレンシアに謝罪する態度を見せられ、内心ではその抑え込んだ感情が冷めていくように感じ、ミスティーヌも複雑な心境でいた。


ジェシカもまた、フェリシアンヌの侍女が元ヒロインだと知り、ミスティーヌほどの怒りの感情はなくて。ただ単に、冷静にヒロインを観察していた。どういう人物なのかを、本当に噂通りなのかを、自分の目で見て見たいという願望がそうさせていた。アレンシアを冷静に観察していたジェシカは、アレンシアに懺悔する機会を与えたのは、フェリシアンヌの()()()()()()()()()()()()()()切っ掛けなのだと、そう理解する。ジェシカ自身もフェリシアンヌに助けられたと思っており、不思議と許してもいいかな…と感じており。


アリアーネは、王立学園で遠巻きに彼女を眺めていた。彼女自身は前回の被害者ではないが、アレンシアのような人間は苦手だ。アリアーネは乙女ゲームと気付いた途端に自信を無くし、どうしたらいいかとオドオドするタイプだ。しかし、人を見る目は持っており、人となりがどういう性質(たち)なのかを見極める力がある。以前の元ヒロインを一目見て、どういう人物か理解すると、自分から関わる勇気はなくて。


姉妹のように仲良くするフェリシアンヌとは、お互いの侍女の殆どが顔見知りにも拘らず、新しい侍女だと聞いてそう信じる程に、今回再び再会したアレンシアの人となりが、激的に変化していた。全く気にならないほどの変化には、もう驚くしかないだろう。自分がどうするのかは、他の令嬢達の様子を窺うことにしよう…と。


 「…初めまして、アレンシアさん。わたくしはミスティーヌ・フェンデン、アルバルト様の婚約者ですわ。貴方とは、今回お初にお目に掛かりますが、アルバルト様はわたくしを大切にしてくださいますから、特に貴方には()()()()()()()()()()()わ。ですから、今回は許して差し上げたいと思いますのよ。…ほほほっ。」

 「…お久しぶりですわね、アレンシアさん。幼馴染だったハウエルが、大変お世話になりましたわね…。わたくしは…正直に申せば、貴方のことを良く思っておりません。ですが、アンヌに比べれば大したことでもありませんし、今は…ハウエルとも正式な婚約者になりましたし、今回は許すことに致しますわ…。」

 「初めまして、アレンシアさん。わたしは商家の娘ジェシカ・リンドです。今の身分は同じですよね?…ですから、ハッキリと言わせていただきます。貴方のことは個人的には、大嫌いです。タリムの心を弄んだのですから…。でもね、貴方のことがなければ、タリムとの婚約は有り得ないでしょう。そのことでは貴方には、感謝もしているんです。だから、今は恨んではいませんし、私も許します。」

 「…わたくしも、初めまして…ですわね、アレンシアさん。アリアーネ・スイセントと申します。貴方はご存じないかと思いますが、わたくしは学園で貴方をお見掛けしておりました。わたくしは、フェリシアンヌ様のお兄様モーリスバーグ様の婚約者ですのよ。以後、よろしくお願い致しますわね…。」


ミスティーヌを始め、クリスティアとジェシカがアレンシアを許し、アリアーネも元ヒロインを受け入れて。アレンシアは感極まったように、涙を浮かべていた。

 宮殿でのお茶会では、王太子妃とアレンシアの攻防(?)の続きで、後半部分からは、他の令嬢達がアレンシアを許すか許さないか…が、焦点となりました。


フェリシアンヌや王太子妃の手前、渋々許すことにしたご令嬢も…。しかし、これで元ヒロインも漸く、悪役令嬢側の味方となりました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ