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婚約から始まる物語を、始めます!  作者: 無乃海
序章 ~悪夢の始まり~
22/66

21話 王太子妃からの招待

 漸く前回までの続きは終わり、後日への話と変わります。


副タイトル通り、王太子妃からの招待される…という流れになりました。

 ハミルトン家での女子会も終了し、フェリシアンヌは早速ユーリエルン宛に手紙を書くことにした。アレンシアとの話し合いについて、真っ先に報告をしていたので、その内容はユーリエルンも知っている。しかし、今回は彼女の女子友が転生者であることを、知らせる必要が出たからだ。


流石に王太子妃のユーリエルンに、ハミルトン侯爵家のご令嬢であろうと突然訪問することは、急用でない限り失礼となる。そこで先ず、王太子妃に面会を願い出る手紙を、出すこととなる。肝心の手紙には、フェリシアンヌの女子友と会ってほしいという内容を、書き記して。序でにアレンシアも招待してほしいと、追記しておく。転生者との話し合いだけではなく、乙女ゲームの設定も話すならば、()()()()()()()()()()()と考えて。


アレンシアは王太子妃にまだ危害を加える前だったが、乙女ゲームの通りになると信じ込んだ彼女は、王太子に近づく算段で王宮の中に潜り込もうとしていた。その上、以前はユーリエルンを排除したいと熱望しており、王太子・ライトバルからも危険視されたのだ。そういう理由から、王宮にアレンシアを許可なく連れて行くことは、不可能だ。


その事実を知るフェリシアンヌは、彼女自身もライトバルから敵視される おそれ も出て来る。連れて行く理由が理由だけに、転生者ではない王太子や王宮の人々に、上手く説明出来る訳もなく…。


だから、ユーリエルンに許可を出してもらおうと、一計を巡らせた。自分に危害を加える可能性のあった人物を、王太子妃が具体的にどう思っているのか、ハッキリ聞いたことはないので、王太子と同じく許せないならば、許可は出ないことだろうが…。その時はその時だわ…と、フェリシアンヌも半分ぐらいは諦めていた。


ところが、ユーリエルンからの許可が呆気なく出され、フェリシアンヌの悩みは簡単に吹き飛んだ。王太子妃は()()()()()()()()()()()()のだと、そういう素振りが手紙の内容から見て取れた。「元ヒロインを、一度くらいは拝見したかったわ。」と、今思えば…前回乙女ゲーム終了時のあの頃から、宣っておられましたわね…。


今の世界には今のところ、写真を撮る術がなく、絵画として書く方法だけだ。前世のように誰もが写生する訳もなく、そういう技術は専門的な人物がするものだと、考えられている。写生する為の鉛筆なども発展しておらず、絵の具で写生するしかない。一応は鉛筆の代理となる石が存在し、鉛筆の芯のように加工されているが、それは絵師しか持てない貴重なものなのだ。


では貴族達が、普段は何で文字を書いているのかと言えば、万年筆に似た文具を使用していた。流石にまだ開発されてから、そう何十年も経っておらず、高価な文具ということで貴族にしか持てない文具だ。庶民は、未だに羽ペンを使用している。羽ペンは安価なものである為、誰でも手に入れることが出来るので。


万年筆に似た文具は、フェリシアンヌ達が住む国・カルテン国では、アーロンペンと呼ばれている。他の国では、クロムペンとも呼ばれていたり、ペンの原材料となる金属がその国により異なる為、呼び方も各々の国で違っている。


それは兎も角、写真がない上に専門家以外で人物画を描く者もおらず、元ヒロインの姿を見る為には、宮殿に呼び寄せるかまたは、下町に下りるしか方法がなくて。王太子妃は王太子により、どちらの願いも叶えてもらえそうになく、あの時には飽く迄冗談で話しただけだった。今回は漸くその願いが叶えられそうで、ある一文が加えられていた。「()()()()()()()()()()だわ。」と…。


フェリシアンヌは苦笑しつつ、ユーリエルンの手紙に目を通す。ユーリエルンからの快い返答を得た彼女は、翌日には学園で女子友と相談することにした。王立学園の生徒ではないジェシカには、昨日のうちに手紙で知らせた。本人からの返答はまだなのだが、多分了承がもらえることだろう。そして、他の女子友からの了承も得られることにも、成功して。


クリスティアとミスティーヌは王太子妃と面識はあっても、夜会で挨拶程度の会話だけなので、今回は初めて個人的に話をすることになる…と思えば、今から緊張気味であったりする。


フェリシアンヌはユーリエルンの願いを叶えようと、また別の人物へと手紙を書いていた。その手紙は翌日には届けられ、彼女は王太子妃に謁見する準備の為、ほぼ毎日忙しく明け暮れることとなる。


そしてその当日、フェリシアンヌ達は王城へと各家の馬車で、向かうのであった。






    ****************************






 王城の外門を馬車で潜り抜け、王城のただっ広い敷地を走り抜け、そうして暫く馬車が走るうちに城の入口の外階段が見えて来る。階段真下で馬車が止まると、馬に乗り馬車の周りを守るように走らせていた、護衛のうちの1人が真っ先に馬から降り、フェリシアンヌが馬車から降りる手助けをしてくれる。そして()()()()()()()()()()()手を差し伸べ、馬車から降ろすのを手伝った。


2人が降り立つのを確認すると、馬車と護衛達の馬は別の場所へと去って行き、此処から歩いて行ける程の距離に、護衛達の馬を預かる客人専用の厩と、馬車寄せの場所が其々あるので、其方に向かうのであろう。


馬車を操っていた使用人は身分上、王城に入ることが出来ない。自分達が待機する為の場所へと移動し、護衛達は基本的には自分の主人・フェリシアンヌに付き従う為、馬を置くと直ぐに先程の外階段を上り、主人を追い掛けることとなる。


先に階段を上ったフェリシアンヌと侍女は、階段上の場所に待機していた王城の騎士達に案内され、王城の中にある宮殿の方の庭園に、案内されていた。彼女自身も王家の血を引いており、普段は王族達が住まう王宮にも出入りしているが、今日は身分の様々な者達も招待されているので、騎士達が()()()()()()()()()()()()()宮殿へと、招待されていたのだ。


本日は王太子妃に招待された形式のお茶会で、参加出来るのは正式に招待された者だけだ。主人を追い掛けた護衛達も、用意された一室で待機となっている。待機している間、護衛達も馬車の使用人達も、暫し休憩することが許される。此処は王の住まう場所でもあるので、その間は王家に雇われている大勢の専属騎士達が、令嬢達も序でに守ってくれることとなるのだ。


お茶会会場の庭園にはまだ誰もおらず、如何やらフェリシアンヌが最初の訪問者のようだった。フェリシアンヌが座る椅子を、王宮の騎士が引いてくれるが、侍女は主人に従うように彼女の真後ろに立つ。残念なことに侍女は参加が許されていないので、特別に主人から待機するよう命令されない限り、主人の傍に立っていなければならなかった。


そう待たずして、他の4人の令嬢達も侍女を従え遣って来た。裕福な家柄である商家の娘ジェシカも、貴族ではなくても彼女専用のメイドがおり、侍女ではなく使用人を連れて来ていたのだ。正式に言うならば、使用人の中でも下働きではない一部の使用人達は、メイド扱いもされている。


貴族の家でのメイドと言われる人物は、侍女も含めた幅広い意味がある。厳密に言うならば、侍女になれるのは貴族出身の娘が、圧倒的に多いと言う事情だ。男爵家や子爵家などの身分では貧乏な家庭も多く、そういう家の子息達は他の高位貴族の家で、奉公することとなる。


伯爵家の令嬢でさえ家が裕福でなく、また姉妹が多い場合などは、少しでも良い結婚をする為にと、稀に奉公する場合もあったりする。貴族の地位を保つのは容易ではなく、維持には莫大な資金が掛かるのだ。礼儀作法や領地経営の勉強にと他家で奉公する者、王城の騎士になれなくて他家で護衛となる者も、令嬢に限らず令息も高位貴族に奉公することを、近年は多くが望んでいる。


フェリシアンヌの護衛も、実は低位貴族の出身だ。例え家が没落していても、当人が貴族だと証明可能であれば、後は当人の能力がどうか…にも依るが、護衛も侍女も即採用されるのだ。


それに比べ使用人や従者は身分が低く、庶民出の者が圧倒的に多い。使用人というものは代々、その家に仕えている場合も多く、執事などはその一例だ。このように貴族の家で働く人間は、明確に身分で職業が分けられている。この世界に生まれた以上、仕方のない事情だったりする。


令嬢達は椅子に座り、侍女達は主人の後ろで待機する。王城では、彼女達侍女がする仕事はない。普段はお茶を用意したり雑用が沢山あるが、王城では此処で働く侍女やメイドが、自分達の主人を持て成してくれるので、ただ後ろで立ったまま待機するだけだ。お茶会が始まれば後ろで待機するか、若しくは別室で待機するようにと、主人から言われることが多く、それまでは待つこととなる。


王城では別室での待機を、侍女達に命じることとなる。今回は王太子妃が参加するお茶会なので、会話が聞こえない程度の位置で、何人もの騎士達が待機することになるだろう。その上、彼女専任の侍女も何人も離れた場所で待機する為、令嬢達の侍女は完全に出番がない。侍女達も暫し休憩することとなり、彼女達もお茶会のように優雅に過ごすことだろう。


招待された時間ぴったりに、王太子妃が最後に登場する。招待された側の客は、招待した側の人物を待たせないように、時間より早めに訪問することとなる。そして招待した側は遅れて現れるのが、()()()()()()()()()()()()()()だ。招待客に恥をかかせないように…と。


フェリシアンヌ達の前に現れた女性は、侍女に手を引かれながらも優雅にゆっくりと歩み寄って来る。彼女を初めて見るジェシカや侍女達は、想像以上に優美な美女だと見とれて。


「本日はわたくしのお茶会に、ようこそお出でいだきました。皆さま、どうかお気軽になさってくださいませ。」

 厳密にはフェリシアンヌの方から手紙で、「わたくし達をご招待ください。」と、王太子妃にお願いした状態に近いです。勿論、手紙に直接的な表現は書きませんけれど…。貴族なので遠回しにそういう意味を込め、書いていることでしょう。


さて、アレンシアは…無事に、お茶会に招待されたのでしょうか?

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