表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約から始まる物語を、始めます!  作者: 無乃海
序章 ~悪夢の始まり~
18/65

17話 全ルートクリアの強者

 フェリシアンヌの女子友も転生者、の続きです。乙女ゲームを知っているかが、今回は争点となりそうです。

 「乙女ゲームのハイリッシュ様は、難易度が簡単なのが良い点でしたけれど、現実でもそういう人だとは…思わなかったです。まだ他の攻略対象の方が、余程マシですね…。」


憤慨しながらそう話すジェシカに、フェリシアンヌは、まだ転生者かどうかだけを確認したのだが、ジェシカも他の令嬢達も皆、転生=乙女ゲームの知識、と思っている節があったようだ。後は、ここにいる全員が転生者ということで、安心したというのもあり、すっかりそういう疑念を持ち合わせていなかった。


ジェシカが乙女ゲームの話に触れるも、「その通りですわっ!」と鼻息荒く、アリアーネも同意しており、誰もそのことに疑問に思わずにいた。またクリスティアもミスティーヌも、コクコクと思い切り首を縦に振っていた。そして、「ムチウチ症にでも…ならないかしら?」などと、場違いな心配をするフェリシアンヌも…。


 「…え〜と、皆さまにはやはり、乙女ゲームの記憶がございますのね?…わたくしとハイリッシュ様との婚約破棄は、乙女ゲームと同じ状況であることを、もうご存じですのね?」


そこで漸く、当初の目的を思い出したフェリシアンヌは、この場に居る自分の友人達全員に、そう尋ねたのである。疑念を確信として、更に確実な正解とする為に。誰もが言い逃れの出来ない、真実を暴く為に。そして、この場に居る全員で、()()()()()()()()()のだと…。


乙女ゲームを知っているのかどうかという、フェリシアンヌの質問には、この場にいるご令嬢全員がコクリと頷く。如何(どう)やら前編の乙女ゲームに関しては、皆さんもご存じのようですわね。フェリシアンヌはそう考えつつ、次の質問へと移る。


 「それでは前回の乙女ゲームの続き、つまり続編がございますことを、ご存じですか?…そしてその続編については、どこまでご存じですか?」

 「…ええ、存じておりますわ。わたくしはつい最近前世のことを思い出し、この世界が乙女ゲームに似た世界だと、気付きましたわ。わたくしの婚約者であられるモーリス様は…続編の攻略対象で、わたくしも悪役令嬢だと知りましたのよ。前世のわたくしはモーリス様推しでしたので、他の攻略対象のことは詳しく覚えておりません。悪役令嬢に転生したと知ってから、1人でどうしたらよいのかと不安でしたのよ…。」


真っ先にアリアーネが、フェリシアンヌの疑問に(こた)える。彼女はまだ最近になってから思い出したばかりで、まだ何の対策も考えておらず、どうしたら良いのかと、毎日オドオドとしていた。彼女は前世でも今世でも、特別に頭が良いというほどではなく、乙女ゲームという呪縛に囚われており、()()()()()辿()()()()()()()()()()()()、恐怖を抱いていたからである。


 「わたくしはどちらかと申しますと、大分以前に思い出していましたが…。まさか、続編があるとは…思いも寄りませんでしたわ。ですが、学年が上がる前に、不意に続編のことを…思い出しましたのよ。前世のわたくしは、ハウエルルートとアルバルトルートにしか興味が無く、その他の攻略対象のルートは…未開拓ですわ。乙女ゲームが再び始まると知り、ここ数日は…何も手に付きませんでしたわ。」


次にクリスティアが発言した。第一弾のゲームのことは、早くに思い出していた様子なのに、続編に関しては数か月前に思い出したようだった。彼女も乙女ゲームがまた始まると知り、あたふたと動揺していたのが目に見えて分かった。


 「わたくしも前作の乙女ゲームにつきましては、幼い頃に前世の記憶と共に、思い出しましたの。しかしながら続編に関しましては、お姉様がアレンシア様とお会いするとお伺いしてから、唐突に思い出しまして…。わたくしは前作では、色々と対策等も練りまして頑張りましたわ。今回はまだあまり、具体的な対策の準備が出来ておりません。()()()()()()()()()()()()かしら…。」


今度はミスティーヌが、自分の記憶に関する現状を語る。彼女はゲームの悪役令嬢らしく(?)、しっかりと作戦を練るタイプのようだった。彼女ならば、例え他に誰も転生者が居なくとも、1人でも着々と自分の思う通りに、ゲームの世界でも回避して行くことだろう。


 「私は前作でも、タリムがヒロインと出逢ったことで思い出し、アレンシアさんとフェリシーヌ様が会われたとお聞きした後に、続編のことを急に思い出したんです。皆さんとは唯一違う点は、私が攻略対象を全ルート攻略した、という全クリアに成功したゲーマーだったことですね。前世の私はタリムード推しでしたが、他の攻略対象も割と好きだったので…。実は前作も、全ルート制覇したんですよ。」






     ****************************






 一番最後に発言したのは、ジェシカだった。ジェシカは、ハッキリした物言いをするし、実は…婚約前の告白も、ジェシカからタリムードにしたぐらいだ。勿論その後にタリムードから、正式な婚約の申し込みをしてもらったのだが。


そういうハキハキタイプの彼女には、フェリシアンヌも実は期待していなかっただけに、意外であった。彼女の性格から言えば、タリムード一筋であろう…と思っていた。他の攻略対象には興味など一切持たない、と思われた。しかし彼女も、前世とは環境の違いなどから、若干異なる部分もあるのだということだろうか。まさかのゲーマーとは……。目が点になる一同だった…。


フェリシアンヌは同じ女性として、友人達の前世の気持ちは理解出来る、と思っている。しかし、彼女自身は元々別の国の人間なので、日本人とは考え方や風習が異なる。今もその影響は多大に受けており、友人達の前世の気持ちとは、若干異なる考えも抱いている。


前世の時から、日本人の考え方にはついていけない部分も、多々あった。だけど、彼女は自ら日本に興味を持ち、自ら告白して日本人の男性を振り向かせただけあって、日本人の考え方についていけないと思っても、放棄せず理解しようと努力した経緯がある。


「好きな人の生まれた国を、好きな人の住んでいる国を、もっと好きになりたい。そのためには、私もその国の風習や考え方に、もっともっと染まらなければいけないわ。」


常日頃から、彼女の旦那様や周りの友人達、それから新しく出来た家族にも伝えていた、前世の彼女の口癖でもあった。だから、本心では考え方が異なっても、理解を示して同調することは出来る。そうやって前世では、()()()()()()()()()()()生涯を終えたのだった。


前世のフェリシアンヌは、日本に留学してわりと直ぐ、旦那様となる彼と知り合った為、乙女ゲームの二次元男性には興味を持てなかった。攻略対象には好感を持てなくて、どちらかと言えば彼女の推しだったのは、悪役令嬢やヒロインという女性であった。この世界と舞台を同じくする乙女ゲームでは、今現在は自分が転生した本人・フェリシアンヌに、あの頃は夢中となっていた。悪役令嬢ではあるものの、毅然とした態度と思いやりのある忠告に、前世の彼女は惹かれていたのだった。


乙女ゲームの中のフェリシアンヌも、ヒロイン・アレンシアを決して虐めてはいなかった。何かとヒロインに苦言を言っていただけで、それもヒロインの為を思って注意を促していただけだ。それにも拘らずゲームの中では、悪役令嬢としての彼女は決して報われることはなくて、国外追放やお家断絶は勿論、修道院に入るなど…()()()()()()()()()()は、全く用意されておらず…。


だからこそ前世の彼女は、日本人同様の綺麗な黒髪の容姿を持つフェリシアンヌが大好きで、金髪グレーの瞳の西洋人らしい容姿だった彼女は、大好きな旦那様と同じ外見が好みだった訳で、今はその本人になれて嬉しかった。


だからと言って、悪役令嬢として断罪等の罪を受けるのは、嬉しくない。これまで悪役令嬢と勘違いされる言動には、ミスティーヌほどではなくとも、今迄は1人で対策し気を付けて来た。これからは一緒に闘える友人が居て、自分を守ると誓ってくれる婚約者も居て。これからの出来事に不安を感じたとしても、1人で闘っていた時よりもずっと晴れやかな気持ちとなる、フェリシアンヌだった。


しかし、ジェシカの告げた内容には、皆が目を大きく見張らせて驚く。全ルート攻略した強者(つわもの)に初めて会った、と…。漸く運命が味方してくれたとさえ思え、他のご令嬢達も同じ気持ちを持っていた。乙女ゲームと似た世界では、ある程度の強制力も働いている節が見られ、そのことに対して悪役令嬢側としては、少しでも情報が欲しいのだ。()()()()()()()()()()、是非とも……。


 「ジェシー、貴方は本当に…全ルートを攻略されましたの?…でしたら、わたくし達全員の結末を、全て知っておられますのね?」

 「……ええ、フェリーヌ様。実は…フェリーヌ様も、続編に出て来られるのですが、どうお話したらいいのか……。」

 「大丈夫よ。わたくしのことは、アレンシア様から伺いましたもの。()ず、これからわたくしが、アレンシア様からお聞きした内容を、先にお話致します。その後にジェシーのご存じのお話も、お話願えますかしら?」


フェリシアンヌが改めてジェシカに問い質すと、彼女はコクンと強く頷き肯定し、言いにくそうに口籠りながらも、フェリシアンヌが続編ゲームに登場することを、示唆して来たのであった。本人に向けて「亡霊で登場しますよ。」とは、お伝えしかねますよね…。まあ、わたくしはアレンシア様から既に伺いましたので、知っておりますが…。わたくしから先にご説明した方が、良いですわね。ジェシーのお話は、後でお聞かせ願いましょう。フェリシアンヌはそう考慮して。



 「…ええ!…勿論、私もお話しします。私の話す内容が、皆さんの為にもなるのならば、喜んで話しますよっ!」

更に踏み込んで、乙女ゲームの続編を知っているかどうか、告白しています。中でも…何と、全クリアしていた強者つわものが女子友にいましたね。


さて次回は、続編の乙女ゲームの全容が判明するのかな…?!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ