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婚約から始まる物語を、始めます!  作者: 無乃海
序章 ~悪夢の始まり~
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16話 女子友の本音と告白

 フェリシアンヌの女子会で、漸く…女子友の本音が明らかにとなりそうです。


さて、その内容は如何に……?

 あれだけ賑やかだった温室では、不気味なほどに…シ~ンと静まり返り、その場の全員が身動き1つせず、暫くの間…固まったままであった。()()()()()()()()()()()()のはフェリシアンヌだったが、彼女は動揺を見せず、ただ…他の人物の返事を待っていた。漸く、1人の人物が観念したように、フェリシアンヌに返答したのである。


 「…確かに私は、前世の記憶を持つ転生者です。前世でこの乙女ゲームに嵌っていました。タリムが攻略対象だと気付いたのは、ヒロインに出逢ったとタリムから報告された時…でした。それが、去年のことですね…。」


そう告白したのは、商家の娘ジェシカだ。前世の記憶を思い出したのは、最近のことらしい。フェリシアンヌの場合は、転んで怪我をしたのを切っ掛けに思い出し、2~3日寝込んだことで頭の中の情報を処理できたのか、気付けば…今と過去の自分を融合していた。ジェシカのような例もあるのだと、彼女は冷静に分析する。


 「ジェシー、貴方は…自分が悪役令嬢キャラだと、思い出されたの?」

 「ええ、まあ…。別に、特には何もしていません。既にタリムはヒロインに夢中でしたし、彼が振られる可能性が高く、私は…その時に備えていただけですよ。」


フェリシアンヌの問いにも、ジェシカは淡々と語っていた。商家の家の身分では、貴族には逆らうことが出来ない。彼女の身分では何も出来なくて、さぞかし辛かったことだろうな…。長年片思いしていたジェシカを、不憫に思うフェリシアンヌである。


 「わたくしは幼い時分に、前世の記憶を思い出しました。婚約者としてナイル侯爵家を訪問時、アルに初めてお会いしまして、その時に…。次々と思い出す前世の記憶にショックを受け、3〜4日ほど…寝込みましたわ。当初はアルと婚約をしないようにしようと、彼に嫌われる行動も取りましたら、逆に…婚約が早まりましたのよ。それからは、彼がヒロインに振り向かないように、対策を練ることに致しましたわ。」


次に告白したのは、フェンデン侯爵家令嬢ミスティーヌだ。フェリシアンヌ同様、ミスティーヌも幼い時に婚約者に出逢って、思い出したようだった。その後に取ったミスティーヌの行動は、転生者に()()()()()()()()()()でもあり、結果として彼女は婚約者に、気に入られたようである。


 「ミスティ、貴方も…ご苦労されましたのね。貴方のお気持ちに、長年気付いてあげられずに、申し訳ございませんわ。」

 「いいえ、フェリーヌ様。わたくしこそ、何のお力にも…なれませんでしたわ。お詫び致しますのは、わたくしの方ですわ。」


フェリシアンヌは、自分同様に苦労していたミスティーヌに、もっと早くに気付いて上げれば、と後悔の念に駆られていると、ミスティーヌは自分の無力さに、後悔しているようであった。


今迄はご自分の運命にしか、目を向けられないほど精一杯だったのですね、わたくしのように…。染み染みと…過去を振り返り、そう考えていたフェリシアンヌに、今度はまた別の人物が彼女に声を掛けて。


 「わたくしも、幼馴染のハウエルと初めてお会いした時、違和感を感じましたのに直ぐには思い出せませんでしたわ。ですが、流行病(はやりやまい)を罹り1週間程寝込みましたら、意識が戻った時には…前世を思い出しておりました。この世界が乙女ゲームだと気付いてからは、とても恐ろしくて…。ハウエルを異性として好きだったわたくしは、彼がヒロインに盗られるのも、わたくしの家が没落するのも…どちらも選べず、良き幼馴染としてアドバイスしておりました。」


クリスティアの幼馴染は、レンドレフ伯爵家三男ハウエリートだ。ハウエリートはフェリシアンヌの前世の旦那様に似た、雰囲気がある人物でもあると、以前は思ったこともある。しかし、クリスティアから聞いていた彼と、実際に王立学園で見た彼とでは、似た雰囲気は表向きだけであり、実際には全く違っている、と今の彼女は思っている。


あの状態のヒロインに惹かれるとか、有り得ないですわね…。ハウエリート様も相当に、異性を見る目がございませんこと…。わたくしの前世の旦那様は、人を見る目をしっかり持たれたお人でしたし、浮気は絶対にされないお人です。…そうですわね、どちらかと申しましたら、彼よりもカイ様の方が似ていらっしゃるのではないかしら……。ん?…何となく…違和感が……。


しかし、フェリシアンヌは()()()()()()()()に、まだ気付く事が出来なかった…。






     ****************************






 「…クリス。貴方とは随分と長いお付き合いですけれど、貴方のお気持ちに気付かずに申し訳ないことを致しました。以前のわたくしは、自分のこと以外には余裕が持てませんでしたのよ。それでも…水臭いと思いましてよ。わたくしは何時も、貴方の味方でおりますのに…。」

 「ごめんなさい、フェリーヌ。わたくしもどうして良いのか、全く分かりませんでしたの。フェリーヌがお辛い時に、わたくしごとで貴方にご負担をお掛けしたくは、ありませんでしたのよ。」


クリスティアは、フェリシアンヌにとって無二の親友だ。侯爵家と伯爵家という身分差はあるものの、2人はその身分を超え永遠の友人関係となった。だから、2人共がお互いの気持ちを、常に大切に思い合っていたりする。


フェリシアンヌが親愛の情として、何でも気軽に話してほしい…という意味を込めれば、クリスティアは親しき仲にも礼儀あり、という意味を含む遠慮だったと伝えて来た。フェリシアンヌより身分が下のクリスティアは、こういう時だからこそ、自分の立場を弁えたようなのだ。


 「わたくしはつい最近、思い出しましたのよ。貴方がアレンシア様とお会いすると伺い、それを機に…わたくしは前世に関する夢を見たのです。乙女ゲームの悪役令嬢となったわたくしが、ヒロインに婚約者を奪われた後、国外追放となる夢でしたわ。現在のわたくしのポジションだと、漸く気付きましたのよ。皆さんも転生者であることには驚きましたけれど、正直申しましてホッとしておりますわ…。」


最後に、アリアーネが声を上げた。彼女は、今回始まる予定の乙女ゲームの悪役令嬢であると、自分でも理解しているようだった。続編の乙女ゲームのことを詳しくご存知ならば、アレンシア様の情報だけではなく、アリア様から是非とも教えていただきたいですわ。フェリシアンヌはそう期待したからではないが、不安げな顔のアリアーネを安心させるように、彼女の手に自分の手を重ねたのであった。


 「皆さま、本当のことをお話してくださり、ありがとうございます。皆さまもご承知されておられます通り、わたくしも転生者の1人です。幼少期、ハイリッシュ様に一目惚れをしたわたくしは、家族の反対を押し切ってまで婚約を望みました。そして婚約をした直後に、キャスパー家で転んで軽い怪我をした際に、漸く…前世の記憶を取り戻しましたのよ。その当時のハイリッシュ様の冷たい態度に、今のわたくしは彼との結婚を望まない、と決意したのです。この後は、皆さまがご存知の通り、婚約破棄をされる日を…只管待ち続けておりましたわ。」

 「まあ…。フェリーヌは、態と婚約破棄をされましたのね…。下手を致しましたら、貴方の名誉が傷付きましたのよ。修道院に入ることになる恐れも、ございましたのに…。」


今度は自分の番だとばかりに、フェリシアンヌ自身も転生者だと明かし、思い出した時とその後の状況を、令嬢達に語りかけた。すると、アリアーネが戸惑いながらも、婚約破棄を態と相手側からされるように持って行ったことに対し、フェリシアンヌが如何(いか)()()()()()()()()()()ということを、珍しく彼女なりの苦言を伝えて来た。苦言といっても決して厳しいものではなく、アリアーネが本心からフェリシアンヌを心配しているのは、誰から見ても一目瞭然であった。


自分のことを本気で心配してくれているアリアーネに、フェリシアンヌは苦笑しながらも、真実をはっきりと告げたのである。彼女にとっては、()()()()()()()()()()()()に、過ぎないのであり…。


 「アリア様、わたくしも危険な賭けだとは、重々承知しておりましたけれども、ハイリッシュ様は決してご自分から、婚約破棄を申し出されませんでした。キャスパー家が婚約を望まれた上、ハイリッシュ様も…わたくしを都合の良い女として、キープされておられたのです。」

 「まあっ!…ハイリッシュ様は思ったよりも、お馬鹿でしたのね…。フェリーヌお姉様に、そのような失礼なマネをされていらっしゃるなんて…。」

 「…本当に、そこまでとは…。(ひど)過ぎますわ…。フェリーヌが早めに目を覚まされて、本当に良かったですわ。」


フェリシアンヌの口から以前の婚約者の実態を語られ、彼女を崇拝して憧れていたミスティーヌは、アレンシアの話が出た時以上に黒い笑顔となり…。その他の3人の令嬢達も顔を思い切り顰め、令嬢とは思えぬ表情を浮かべていたりと、人を悪く言うことが少ないアリアーネさえも、浮かない表情である。


ミスティーヌは、ハイリッシュに対しての嫌悪感を丸出しにし、クリスティアもまた…それとなく、ミスティーヌに援護射撃を送っていた。アリアーネとジェシカの2人も、うんうんと首を縦に振って頷いている。


基本的にはミスティーヌは、他の人達が居る前ではフェリーヌ様と呼び、2人っきりの時に、若しくは親しい者の前であれば、「フェリーヌお姉様」と呼んでいる。実姉のいるミスティーヌの心の中では、自分の血の繋がった姉以外にそう呼びたいのは、フェリシアンヌだけなのだから。


こうして、フェリシアンヌが他の令嬢達から、如何(いか)に多大な信頼や好感を持たれている事実を、実は…()()()()()()()()()()()()()()()()のだが、それも彼女の魅力の1つだと誰もが思っていたとは、知らぬは…本人のみである。

 今回、フェリシアンヌの女子友の全員が転生者であると、確定しました。今回のタイトルについては、転生者である事実と乙女ゲームの役柄への気持ち、ということに対してのものです。


フェリシアンヌの告白に、元婚約者への憎悪が…集中したようですが…。さて、今のところ最低評価のハイリッシュですが、今後は更生して再登場するのか、それとも更生しないまま登場しないのか……。

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