88,「乃愛の得意な遊びなのです!」。
母艦内に侵入したはいいが、さてMAPはないものかね。
現在位置が分からん。
そこで《探索》を使ってみたところ、ちゃんと機能した。《神の盾》の内側に入ったから、スキル妨害機能の邪魔もないようだな。
〔しかしなぁ。いくら《神の盾》が優れものだからって、おれの瞬間移動が弾かれるとは。納得いかん〕
〔では、《改造》すればいいんじゃないですか? スキルを改造することで、進化させられますよ〕
〔なるほど。そんな手があったのか〕
瞬間移動スキルを改造しつつ、母艦内を進む。
ふむ。《探知》のMAPによると、この巨大母艦、中央に動力源があるようだ。この動力源を破壊すれば、母艦も落ちるだろう。
試しに脳内シミュレーションしたところ、動力源を破壊したら──なんか太陽系が吹っ飛んだ。
〔おお。ろくでもないことになった〕
こっちも《宇宙破壊》というスキルを持ってはいるが、あれは実際のところ地球を粉みじんにする程度。
しかし今回は本当に、太陽系が丸ごと吹っ飛ぶ。まぁそれでも銀河系の規模からしてみたら、たいした損失でもないのだろうが。
〔イチゴ。いまのシミュレーション、どう思う?〕
〔ははぁ。この巨大母艦、動力源にアネモア・エネルギーを使っていますね。多元宇宙の中でも、取り扱いの難易度MAXな代物ですよ〕
〔そんなものを動力源にするなよ、バカなのか〕
〔自分たちで自分たちのことを【超人類】と名乗っている種属ですからね。賢くはないと思いますよ。だいたい【超人類】よりも、【神臣人】のほうが種属の位は上ですからねー〕
〔【神臣人】って、なんだ?〕
〔かつて栄えた種属ですが、いまは《無神》しか残っていませんね〕
〔……お前、イチゴであってイチゴではないな〕
〔見抜きましたか! さすがタケト様!!〕
《予備蟲》を使って、この母艦内に侵入した。そのさい肉体をいったん破壊してから再統合したわけだが──
そのさい、未来イチゴのほうが脳内に入ってきたらしい。
〔おれのイチゴは、《無神》も【神臣人】も知らなかったからな〕
〔当時は《無神》に記憶を封じられていましたからね~。あ、話は後ですよ。誰かいますね〕
前方では、仁王立ちしている【超人類】の男がいた。
「《神の盾》を騙して侵入してくるとはな。貴様が北条尊人か」
「で、あんたは?」
「我の名は、オギルニアスだ。地球征服を任された指揮官でもある」
「すると、地球に来やがった【超人類】の代表か。あんたに愛と平和の《内臓破裂まで抱きしめ》をすれば、他の【超人類】も撤退してくれそうだな」
するとオギルニアスが、小ばかにしたように笑いだす。
「我を倒す気か? 愚か者が。我の戦闘力ランクは《緑》、ガギースやルルルルのようにはいかんぞ」
ふいに母艦内壁から一体の死体が、グチャグチャと押し出されてきた。その死体が分解し出す──そして再統合されると、ルナーサとなった。
「北条さ~ん。わたしの頭を引っこ抜くとか、失礼じゃない?」
コイツ、想像以上にしぶといなぁ。
「ルナーサ。あんたの《予備蟲》スキルは奪ったはずなんだが。どうして奪われたはずの《予備蟲》で、復活できた?」
ここでルナーサが高笑い。オギルニアスもまた高笑いを始めた。コイツら高笑いが好きだね~。
さらに内壁から、2体の死体が出てきた。
その死体が再統合されると──おやおや、ガギースとルルルルになる
≪新宿ダンジョン≫で、このおれが《内臓破裂まで抱きしめ》した2体だが。こんなところで復活してきましたね
ルナーサは器用なことに、高笑いをしながら説明してきた。
「《予備蟲》はねぇ、私のスキルではないのよ。私は借りていただけ。ガギースやルルルルもそう。
《予備蟲》とは、この殲滅母艦〈アギト〉の固有スキルなのよ」
このバカでかい母艦、〈アギト〉というのか。
とにかくだ。
ガギースとルルルルまで高笑いを始めやがった。【超人類】4体による、高笑いの大合唱である。
マジで、ウザい。
「まてよ。どうせなら、マルギバナも復活させてやれよ」
「バカねぇ。マルギバナは【超人類】は【超人類】でも、『死体要員』に過ぎないのよ」
なるほどな。
復活するためには【超人類】の死体が必要なのだから、自然と『復活できる【超人類】』と『死体要員の【超人類】』に分けられるわけか。
こんどはオギルニアスが言う。
「貴様の負けだ、北条尊人!」
瞬間。
殲滅母艦〈アギト〉の壁を貫いて、乃愛が転がり込んできた。
仰天するオギルニアス。
「バ、バカな! 〈アギト〉の《神の盾》が突破されただとぉぉお!?」
乃愛は周囲を見回してから、おれを見つけた。
「パパ! 先に来ていたのですね! ところで、いまはどんな状況なのです?」
「父と娘の絆を深めるときだ」
乃愛は大喜びで拳を突き上げる。
「一緒に遊んでくれるのですね! それで、どんな遊びをするのです?」
「愛と平和の皆殺し遊び」
ウインクする我が娘。
「乃愛の得意な遊びなのです!」
だと思った。
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