82,北条乃愛、参上。
〇〇そのころメキシコでは〇〇
──主人公以外の視点──
メキシコでは2つの巨大麻薬組織が、絶賛抗争中だった。
その片方の組織名が、ロギロ・カルテル。
対するは〈聖ダークサイドムーン騎士団〉。
そして最近、どうもロギロ・カルテルの旗色が悪い。
そこでロギロの首領アレハンドロは、ある指令を出した。
〈聖ダークサイドムーン騎士団〉首領の屋敷にむかって、ミサイル攻撃を行う指令を。
アレハンドロが所有する潜水艦から、艦対地ミサイルを撃ち込んでやるのだ。
「俺さまに敵対する間抜けは吹っ飛ぶがいい! はっはっはっ!」
翌日。
アレハンドロが広大な庭を散歩していると、上空から潜水艦の残骸が投下された。
アレハンドロは潜水艦に押しつぶされ、死亡。
同じころロギロ・カルテルの幹部たちが各地で殺されだした。生きたまま喉を掻っ切られ、舌を引きずり出される形で。
かくして、わずか半日でロギロ・カルテルは壊滅。
〈聖ダークサイドムーン騎士団〉に併呑されることに。
そして各地の襲撃を指揮し、アレハンドロに潜水艦を投下した男。
それこそが、ホセルイスという男である。冒険者だったならば、Sランクの実力者。
〈聖ダークサイドムーン騎士団〉最強の実力者ホセルイス。
その夜。
ホセルイスは仲間とともに、酒場で祝杯をあげていた。
すると唐突に、虚空から女児が出現。
12歳くらいで、容姿からアジア人と西洋人のハーフと分かる。
ホセルイスは唖然としながら言った。
「ガキ、いま空間転移してきやがったのか?」
女児は肩をくるくる回して、
「空間転移ではなく、時空間を移動してきたのです。しかし、ちょっと出る『時間』を間違えたのですね。まだパパは到着していないようです。
ふむ。ちょうどいいところに、『メモ用紙』があったのです」
『メモ用紙』というとき、女児の視線はホセルイスに向けられていた。
そしてホセルイスは地獄を見ることとなった。
夜が明ける。
酒場には、ホセルイスの仲間たちの死体が散乱していた。
店の前の電柱には、吊り下げられた首なし死体。ホセルイスの残骸である。
この死体の腹部には、ナイフでこう刻まれていた。
『北条乃愛、参上です!』
★★★
──主人公の視点──
メキシコは首都メキシコ・シティに瞬間移動。
とたんイチゴが俺の脳内から出てきて、はしゃぐ。
「タケト様、本場のタコスを食べましょう!」
するとアーダも賛成の様子。
「頭のネジが外れた案内係にしては、悪くない提案だな。師匠、せっかくなので本場のメキシコ料理を食べるのはどうだろうか?」
アーダよ、すました顔をしているが、お前の腹が鳴っているぞ。
うちの女子2人、食べるのが好きだね。
「まぁいいか。飯にしよう」
時差からして、ちょうど昼時のようだし。
手近のレストランに入り、注文。俺は羊肉料理を頼んだ。
観光客気分で舌鼓を打っていると、いきなり店の外が騒がしい。
ちらっと様子をうかがったアーダが、魚介料理をムシャムシャしながら言った。
「師匠。アサルトライフルなどで武装した男たちが、こちらに向かってくる」
「やっぱり【変転】以後、どこも荒れているんだろ。まぁ、おれたちには関係のないことだ。いまは観光客だし」
武装した男たちが店内に入ってきて、「北条はどこだ! 北条はどこだ!」と喚き出す。
「師匠を呼んでいるようだが?」
「知らん知らん。ところでイチゴ、お前なに飲んでるんだ?」
白い液体を美味しそうに飲んでいるイチゴ。
「これはオチャタというメキシコの飲み物ですね。甘くて美味ですよ。タケト様も飲みます?」
「たしかに辛いものを食べたら、甘いものが飲みたくなるよな。じゃ、いただこう」
男たちはといえば、天井に向かってアサルトライフルを乱射中。いまだに「北条はどこだ! 北条はどこだ!」と騒いでいる。
おかしいなぁ。なんでおれは人気者なんだろう。
というか、なぜおれの居場所が分かった?
「アーダ。店の人に迷惑だからとめて来なさい」
「承知した」
アーダはチェーンソー片手に、男たちに歩み寄る。
「食事中だ。静かにしろ」
まばたきする間に、男たちを切り刻む。
手足を切断し、腹を裂き、首を刎ねる。店内に血のシャワーを降らせ、お客も店員も真っ赤に染まった。
最後にアーダは、男たちのリーダー格を唐竹割りにした。
「だから食事中だと言っているだろ」
眼球が飛んできて、おれのコップのオチャタに入った。白い液体の中に、ぷか~と眼球が浮かび上がる。
うーむ。
「店員さん、お勘定~」
気に入って頂けましたら、ブクマと、この下にある[★★★★★]で応援して頂けると嬉しいです。励みになります。




