81,お次は〈聖ダークサイドムーン騎士団〉。
本日2度目の《内臓破裂まで抱きしめ》を発動。
俺の友愛とともに、ルルルルさんが逝きました。
アーダと死滅卿がいまさらながらやって来て、
「さすが師匠だ、これほどの強敵を撃破するとは!」
「この僕を倒しただけのことはあるじゃないか!」
「……まぁいいが」
使えん四天王2体を引き連れて、先へと進む。
ようやく〈佐東会〉の会長さんのもとにたどり着いた。会長さんは座って、腹に短刀を刺しているところだった。
「来たな北条尊人ぉぉぉぉ! 貴様に殺されるくらいなら、自ら命を絶ってくれるぞぉぉぉぉぉぉ!」
自分で腹を掻っ捌き出す会長さん。
アーダが感心した様子で言う。
「おお師匠、これが切腹という文化だな」
「現代で切腹する日本人なんて、洋画のとんでもニッポンくらいだと思ってたがなぁ。しかし会長さん。あんたの心意気は買うぜ。最期まで見届けよう!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
気合いの声を上げながら、会長さんが切腹をやってのけた。
最期まで見届けたので、おれは《完全回復》を発動。切腹を全回復させてやる。
「そ、そんなぁぁぁあ! 私の決意と覚悟の切腹がなかったことにぃぃぃぃぃぃぃ!!」
心が折れたらしく、白目を剥いて気絶する会長さん。
おれは会長さんの頭蓋骨を割って、脳味噌に右手を突っ込んだ。かき回して、《記憶採取》を発動。
おれのダイヤの在処を、記憶の中から探る。せめてヒントでもないか──。
そして見えてきたのは、世界各国の犯罪組織からなる互助会の存在。【変転】前では、麻薬運搬ルートなどを維持するため不可欠だったようだが。
そしてこの互助会だが──全組織が対等と言いながらも、実質的に仕切っているのは〈聖ダークサイドムーン騎士団〉とやら。
メキシコの麻薬カルテルらしいよ。
「さて、記憶は読み取った。昔のおれなら、このまま会長さんは放置しただろう。脳をかき回したままな。しかし、いまのおれは違うのだ。平和を重んじるおれは、ちゃんと会長さんの脳味噌も治しておく」
《完全回復》で、会長さんのグチャグチャになった脳を治す。
やがて会長さんが目を覚まし──舌をだらりと垂らして、なんか言い出した。
「ろめろめろぽろぽろぺーだのぱぱっぱかぺーーー!!!」
「………………………よし、元通りだ」
〔いえいえタケト様。現実を見て。会長さんの脳味噌、壊れっぱです〕
細かいことを気にするイチゴは無視して、おれはアーダと死滅卿をつかんで瞬間移動。
地上に出た。
刹那。
上空に巨大な球体が出現。空間転移してきたようだな。
「なんだ、あれは?」
死滅卿が言う。
「おそらく【超人類】の移動船だね。あの球体で、【超人類】は自分たちの世界から次元転移してきたんだ」
〔タケト様がハグで殺したお仲間を、迎えに来たようですね〕
〔殺したんじゃなくて、不幸な事故で死んじゃったが正解〕
〔《内臓破裂まで抱きしめ》とかいう技名つけている時点で、確信犯ですよ〕
アーダがチェーンソーを取り出し、
「師匠! あんな球体は、私が叩き斬ってくる!」
「あ、まてアーダ──」
アーダが上空の球体めがけて跳躍。瞬間的に攻撃力を上げたチェンソーで斬りつける《破転》を発動した。
対する球体からも、やたらと髪の長い女が出てくる。
その女が空中で右手を横に動かす。
瞬間、アーダが斬撃を食らい、落ちてくる。
『右手を横に動かす』が、『斬撃を与えた』結果を生んだのか。また面倒なスキル持ちだな。
落下してきたアーダを、おれは抱きとめた。それから《完全回復》で、致命傷を治癒してやる。
「待てと言ったのに。【超人類】なんかと遊んでいる暇はないぞ。おれたちの目的は、ダイヤだ。ダイヤに始まり、ダイヤに終わる」
「すまない師匠。ルルルルを仕留め損なったことを、ここで挽回せねばと思ったのだが」
「挽回のチャンスはいずれ来るって。来なくても、おれに『役立たずのアーダ』と思われ続けるだけだし」
「うぅ師匠~!」
慰めたのに、なぜか泣かれた。
さて、【超人類】の髪の長い女は球体に戻った。
球体はしばし旋回していたが、また空間転移して消える。お仲間のガギースとルルルルがすでに死んでいることに、気づいたのかな。
「さて。お次は、メキシコに行くぞー」
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